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向かう先は

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確かに食事は美味しかったです。
スープはじっくり煮込まれていて優しい味で、お肉も美味しかった!
クラースが言うには、香辛料を奮発してくれたみたいだけど。
どうも香辛料とかはお高いらしい。
ありがとう、女将さん……!
感謝を込めて笑顔で女将さんに行ってきます、と手を振って街へと出る。

「じゃあ行こうか」
「はーい」

街並みはヨーロッパに近いかなぁ?
石?レンガ?とりあえず木造とか、コンクリートとかは見当たらない。
道も歩道や車道があるわけでもない、ただの土の道が伸びている。
舗装された道っていうのは貴族街とか、もっと大きな街にしかないらしい。
そっちの方には行くなと厳命されてるから見たことはないんだけどね。
貴族っていえばお金持ちだよね?
関わることもなさそうだけど、どんな生活してるのかはちょっと気になるかもしれない。
街並みを覗くだけなら怒られないかなぁ?
そんなことを考えながら迷子にならないようにとクラースの指を掴んで、均された土の上を物珍しさにキョロキョロしながら歩く。

手を繋いでいるじゃないのか、って?
身長差と手の大きさの違いに、手を繋ぐのが難しかったんだよね。
クラースの手って大きいんだよ。
わたしの手が小さいのかもしれないけどさ。
それに掴んだクラースの指があたしの頭の横にあるからね……。
あたし自身の身長がどれぐらいかわからないけど、それを差し引いてもみんな身長が高いんだよねぇ。
あたしもおっきくなるのかな?
前は日本女性平均はあったから、こっちでも平均的な大きさであればいいかなー。

「面白いかい?」
「うん、いろいろあるねー」

まだ早朝といってもいい時間だろうに道に並んだ店舗や露店は既にお客が並び、道を行き交う人々の賑わいでとても活気づいている。
こっちに来てまだ時計を見ていないんだけど、ここの人たちは時計を使わないんだろうか。
そこまで浸透してはいないのかな?
まあ、あたしが時計がなくても全然困らない生活してるから、もしかしたら一般的には時計は必要ないのかも?
それこそ商人だとか軍隊とかでもない限りね。

見たことのあるようなものや見たことないものに目を向けながら色々考えてみるけれど、如何せんこの世界に関する情報は少ないから憶測にしかならない。
これから色々覚えていかなくちゃだなぁ。

「さあ、ここが冒険者ギルドだよ」
「ほあー……」

あたしの亀のように遅い歩みに付き合ってもらいながら二人で歩き、漸く第一の目的地に辿り着いた。
真上を見上げるようにしてとても大きな建物を見上げる。
宿の一階も普通より大きく作られているんじゃないかなって思ったけど、この冒険者ギルドっていうのはもっと大きく作られているかもしれない。
ぽかーんと口を開けてその大きさに目を丸くしていたら、隣から小さく笑う声が聞こえた。

「ふふ。ほら、中に入ろうか。もっと驚くかもしれないけどね」
「はぁーい」

クラースに促されて入り口に向かう。
数段の階段があってそれを登りながら前を見ると色んな格好をした人たちにちょっと役所のような様子が見えた。
いや、本当ならもう少し見えないものなのかもしれないんだけど……あたしの身長が低いから丸見え状態になってしまっているだけだな。
冒険者ギルドの入り口の扉ってあれ、西部劇で出てくるような扉だった。
階段を登り切ればちょうど目の前に扉がきて何も見えなくなった。
隣に立つクラースが片方のドアを押して開くのに対し、あたしは少し背中を丸めてドアを潜って中へと入る。
あ、ちょっと楽しいかも。
クラースに手を引かれたままちらっとくぐったばかりの扉を思わず振り返ってしまった。
はっ、まるで子供みたいだ……!
いけない、と前を向き直せばカウンターがあって、その向こうに居るお姉さんがあたしをじーっと見てた。
……もしかして扉で遊びたいって思ったのがバレたのかな!?
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