腐女子の俺が逝く! ゲームから出られなくなった俺は趣味を堪能するはずが……あれあれ?

冬生羚那

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もう一度言おう

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 ソファーや壁やらを伝い、なんとか風呂場に到着した俺はシャワーで体を洗い流す。
 下っ腹に力を入れたらまたこぽこぽと溢れてきて、溜め息なのか吐息なのかわからないものが口から零れた。

「あー……そうだ。避妊薬飲まなきゃ」

 お湯でとろみの薄くなった白い液体が、排水溝に流れていくのを見ながらひとりごちる。

 ゲームの話になるが、成人向けにはヤったらその成果が齎される状態になることも設定としてあった。
 そう、妊婦状態だ。
 勿論子供を産むことも出来る。

 これは魔物の子供でも産むことが出来たので、プレイヤーの中には自ら『苗床萌えー』と叫ぶ人も居た。
 終わりの見えない状態ではないから、それもプレイの一環として愉しめたのだ。
 そこまで特殊じゃなくても、NPCに恋をして、結婚し、子供を産んだプレイヤーだって存在していた。
 とあるプレイヤーが『この妊婦状態は男でも出来るのか』とか検証してて、一時期盛り上がったこともある。
 出来なくて鎮火した。

 まあ、だから避妊薬は普通に売られているのだ。
 男性用、女性用とあって、どちらも飲むタイプである。
 これは事前に飲んでもいいし、事後に飲んでも効果があるらしい。
 ただし、一日という制限がつく。

 俺もこれは持っている。
 後で飲んでおこう。
 流石に今、子供が出来たとかは笑えない。
 もう少しこの世界を知って、金を稼いでからだ。

「……ふは、馴染んでるな、俺」

 うん、楽しまなきゃ損だもんな。

 風呂から上がり、インベントリを漁る。
 下着は見つけたけれど、服がない。
 そういえば、予備の服は一式しか入れてなかったのだった。
 さっき放り投げられて、しかも風呂に来る前に踏んで来た。
 ……うん、きっとべとべとになってしまっているだろう。
 仕方ない、とどうにか歩けるようになった足に力を入れて廊下へと出る。
 そこには大きな図体を丸めているレオンが居て、思わず何してんだ、コイツと思ってしまった。
 俺に気付いたレオンが顔をあげ、その手に薄汚れた布を見てとり、ああ、掃除か、と納得する。

「な、なんて恰好してんだ!」
「は? ……ああ」

 真っ赤になって俺に向かって怒鳴るレオンに、首を傾げそうになるが……もう一度言おう。
 お前のせいだろうが、と。

「服二階にあんだよ、仕方ねぇだろ」
「そ、それにしたって……!」
「うっせえ、お前が汚したんだろうが」
「うぐ……っ」

 レオンが言葉に詰まったのを見て、鼻で笑ってやる。
 文句が言えなくなったレオンが唸る声を聞きながら、俺は二階へと上がり、自分の部屋へと向かう。
 一日空けただけの部屋になんら変わりはなく、なんとなくほっとした。
 そのままクローゼットへと向かい扉を開く。
 そこには数枚のコートと畳まれたシャツにズボンがちょこんとあるだけだ。
 一枚ずつ手に取り身につける。
 そうしてインベントリから下着を取り出し、棚に乗せてある籠へと突っ込んだ。
 色とりどりで、目に痛い気がする。
 シンプルなやつは、インベントリに仕舞ったままにしておく。

 そうして部屋を出て一階に戻れば、まだ廊下を拭いている最中のようだ。
 どれだけ垂れ流していたのかがわかる。

「あ、そうだ」
「んぁ? なんだよ」

 ここで一つ、思い出した。
 掃除の為に作ったものがあったじゃないか。

 ととと、と廊下を進み、階段下の収納庫の扉を開く。
 そこにはいくつかの掃除道具に洗剤、そして小瓶がいくつも置かれていた。
 その小瓶をいくつか手に取り、レオンの元へと戻る。

「なんだ? それ」
「これは俺が作ったスライム」
「……お前、スライム好きだな」
「使い勝手いいんだぞ? スライムバカにすんな」
「してねえけど」

 軽い言い合いをしながら小瓶の蓋を開ける。
 そうして床に拡がる汚れに向かって小瓶を逆さまにすれば、黄色のスライムがびちゃり、と落ちた。
 でろーんと伸びたスライムを見下ろして待つこと数秒……。
 スライムがぷるぷると揺れると、スライムの色が徐々に薄くなっていく。
 摘まんで持ち上げれば汚れがほとんどなくなっていた。

「……なんだこれ」
「これお掃除スライム。このスライム自体が動いたりは出来ないんだけど、こうして汚れの上に乗せるとその汚れを吸収して分解してくれんの。天井とか壁にも張り付くから、どこでも掃除出来んだぜ」

 ドヤァと胸を張ってそう言えば、レオンは手にした布を見て、肩を落とした。

「もっと早く言えよ」
「忘れてた」
「そうかよ……」
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