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レオンと

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 鴉亭に部屋を借りて一泊した俺は、煩い声で目が覚めた。
 扉の向こうで急かすレオンに食堂で待つように言って、身支度をする。
 といっても脱いでいたズボンを穿いてマントを羽織り、髪を縛り直して顔を洗って歯を磨いて終了である。
 そうして食堂へ下り、朝食を食べて預けていた馬を連れたレオンと共に街を歩く。
 横に並ぶとレオンの大きさがよくわかる。
 身長は二メートルを超えていたような記憶がある。
 俺と並べば頭一個分は余裕で高い。

 道すがらパーティーを組む。
 ゲームだとパーティーは組めなかったのだが……どうやら問題なさそうだ。

 ゲームではレオンのようなランク持ちのNPCでもパーティーを組んで狩りに行けなかった。
 パーティーを組めたのは、冒険者ギルドで斡旋されるNPCだけだったのだ。
 レオンと狩りに一緒に行けるのならば、今までの狩場でもいけるかもしれない。
 まあ、二人ではキツいだろうけど。
 他にも一緒に行ける人を探すか。

「あ、そうだ。クエスト見ようと思ってたのに」
「ん? 見てくか?」
「んー……ああ、いいか?」
「おう」

 冒険者ギルドは南門近くにある。
 この一帯では一番大きな建物だ。
 扉を開いて中に入れば皆の目が集まる。
 俺に、じゃなくてレオンにだ。
 流石Sランク……まさか狼頭が目立っているわけ……いや、どうだろう。
 レオンを見て俺を見て『なんだアイツ』って顔をされる。
 俺がレオンと居たらおかしいってか?

 ……まあいいか。
 中に入って右側の壁に沢山の紙が貼られている。
 扉に近い方が低ランクでカウンターに近い方が高ランク向けだ。

 低ランクの方からざっと目を通す。
 流石に低ランクでは報奨金が少ないが、たまに割のいいクエストがあるからな。
 ……今日は大したクエストはなかった。
 ちまちまと狩りをするつもりもないし、採取も目立ったものはない。
 そうしてFからBまで過ぎて、Aランクのボードの前に立つ。
 そこに書かれる討伐クエストの魔物の名前を確認して、自分一人で狩れるかを確認する。
 Aなら問題はなさそうである。
 Sランクへとそのまま横にずれる。
 そこに書かれている魔物の名前を見て、若干眉間に皺が寄る。
 時間も手間もかかりそうな魔物のオンパレードだった。
 ゲームならば死んでも直前のセーブポイントやマイホームに戻れたが、今、戻れるかわからない状態で危険に挑めない。
 俺THUEEE状態ならばいけるだろうが……そこもわからないからな。
 これはおいおいだろうな。

 俺の戦闘スタイルは二刀流で、素早さで攪乱しつつ細かく攻撃を当てていくタイプだ。
 なので決定的な攻撃力に欠ける。
 後は魔法も少々といったところか。
 ガツンとした一撃を食らわせるのは難しいから、良くパーティーを組んだのは前衛職の人だった。
 まあ、最大六人までパーティーが組めたから、そこそこならば気にも留めないことも多かったけどな。

「いいのあったか?」
「んー、今日はない」

 結局クエストを受けないままでギルドを後にすることになった。
 ギルドに居た冒険者達の間で、ヒソヒソと何か囁かれていたが、俺の耳に届くことはなかった。
 レオンの耳はピクピクと動いてたけどな。

 東門へ向かい、街を出る。
 レオンの馬は普通の馬よりも大きくがっしりしていて、軍馬っぽい。
 スート程じゃないけどな。
 レオンが乗るには、これぐらい大きくないとダメなんだろう。
 ひょいと軽々と馬に乗ったレオンの後ろに俺も乗せてもらう。
 レオンの馬も、俺が乗ったぐらいじゃビクともしない。

「じゃ、行くか」
「おー」

 レオンの腰に手を添えて掴まれば、馬が颯爽と走り出した。
 目の前の背中は大きくて、花屋の兄ちゃんとの対比にも萌えていたのにな、と少し残念になる。
 もうカップリングを見ることは出来ないのだろうか……。
 じゃあ、これからは普通の男女のカップルを、と考えてふと自分はこれからどうしよう、と悩む。
 恋愛や結婚までは考えていないが、イケメンとのあれそれを体験してみたいかもしれない。
 というか、この体は自分のものなのだろうか?
 色合いとか違う部分もあるし、一度確認してみるべきだろうか。

「おい、こっちで合ってんのか?」
「あ?」
「なにボーっとしてんだ。道合ってんのかって聞いてんだよ」
「あ、ああ」

 レオンは何度か俺を呼んでいたらしい。
 すまんかった。
 MAPで道を確認し、方向を指示する。
 レオンの馬もそれなりに早く、数時間で俺の家に着くことが出来た。
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