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ジュエリーヌさん
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へらりと力なく笑った俺を見て、ジュリエーヌさんはこれ見よがしに溜め息を吐いた。
「大丈夫、心配すんなって」
「もう……仕方ないわねぇ」
ジュリエーヌさんは俺の目の前まで石畳を踏み鳴らすと、ひょい、っと俺を持ち上げた。
しかも片腕で、だ。
俺の顔色が悪いとか言ってたけど、それにしたってこの行動はおかしくね!?
それに大丈夫だって、言ってるのに。
「今からお昼にするつもりだったのよ。来なさいな」
「え、いや、俺食ってきた……」
「煩いわ」
俺に視線を向けることなくジュリエーヌさんはさっさと歩きだした。
俺の尻の下にある腕はしっかりと俺を支えているけれど、心と思考と上半身を置き去りにしそうな動きに、俺は慌ててジュリエーヌさんの首に腕を回してしがみ付いてしまう。
一瞬ジュエリーヌさんは訝しげな表情をして俺に目を向けたが、何も言わずにそのまま進んでいく。
周囲に顔を向けるのは……出来ない。
これ絶対目立ってるし!
ええ、これいいのか?
ジュエリーヌさん、オネェさんだろ?
それがひょいと軽々俺持ち上げちゃってもいいのか?
イメージ的に『ナイフとフォークより重いものなんて持てないわぁ』とか『女に重いものを持たせるなんて!』とか言いそうなのに。
……いや、そんなことなかったわ。
優しい人ではあった。
噴水広場は大勢の人が通る場所だから、特に店が多い。
店舗を構えようとしたフレンドの一人が、家賃が高いと零していた記憶がある。
ジュリエーヌさんの腕に腰掛けた状態で大通りに軒を連ねる店舗を見遣る。
どの店舗も人が居るような気がする。
確か、有名なデザイナーがここのどこかに店を出していたような話を聞いたような……。
物凄く曖昧だ。
現実でもそこまで頓着したことがない。
好きなのは、着やすくて楽な服だ。
スカートも、ほとんど穿かないような俺に、デザイナーとかに対する興味を持てという方が大間違いだ。
なので、ゲーム内でも服にはあまり興味がなかった。
俺の装備は性能重視である。
ファッションに関しては、ドロップだったり貰い物だったりしている。
そして着た切り雀状態になっていた。
噴水広場を抜けて一本裏の道に入ったジュリエーヌさんはそこから遠くない店に足を進めた。
ついでに言えば、ジュリエーヌさんも有名な洋裁師だ。
この人はNPCだけど、いや、だからこそかな?
NPCに贈り物をする時は、ジュリエーヌさんの所で服を買って贈っていた。
喜ばれるんだよ、これが。
NPC相手だと補正とかは重視されないからかもしれない。
プレイヤーの作った補正値の高いシャツも、ただのシャツも、NPCにしたら『シャツ』でしかなかった。
男でもデートの時は良い服を、と思うだろ?
女はもっと綺麗に、って思うだろ?
そういう時にジュエリーヌさんの服って効果抜群だったんだ。
ジュリエーヌさんの作る服は結構なお値段がするから、それなりに仲良くなってないと逆に断られることになるけどな。
だけどジュエリーヌさんの服が買えるということは、NPCの間では一種のステータスになる。
デート前に服をプレゼントしたことのあるNPCには「『FreeDom』の服じゃねえか!」と驚かれたものだ。
そう、ジュエリーヌさんは、自分の腕に自信と誇りを持った、世話焼きおば、じゃないオカンなのだ。
着た切り雀の俺は、良く『冒険者でも身だしなみはしっかりしなさい!』と怒られたものです、はい。
そうしてあれこれと世話を焼かれたものです、はい。
「大丈夫、心配すんなって」
「もう……仕方ないわねぇ」
ジュリエーヌさんは俺の目の前まで石畳を踏み鳴らすと、ひょい、っと俺を持ち上げた。
しかも片腕で、だ。
俺の顔色が悪いとか言ってたけど、それにしたってこの行動はおかしくね!?
それに大丈夫だって、言ってるのに。
「今からお昼にするつもりだったのよ。来なさいな」
「え、いや、俺食ってきた……」
「煩いわ」
俺に視線を向けることなくジュリエーヌさんはさっさと歩きだした。
俺の尻の下にある腕はしっかりと俺を支えているけれど、心と思考と上半身を置き去りにしそうな動きに、俺は慌ててジュリエーヌさんの首に腕を回してしがみ付いてしまう。
一瞬ジュエリーヌさんは訝しげな表情をして俺に目を向けたが、何も言わずにそのまま進んでいく。
周囲に顔を向けるのは……出来ない。
これ絶対目立ってるし!
ええ、これいいのか?
ジュエリーヌさん、オネェさんだろ?
それがひょいと軽々俺持ち上げちゃってもいいのか?
イメージ的に『ナイフとフォークより重いものなんて持てないわぁ』とか『女に重いものを持たせるなんて!』とか言いそうなのに。
……いや、そんなことなかったわ。
優しい人ではあった。
噴水広場は大勢の人が通る場所だから、特に店が多い。
店舗を構えようとしたフレンドの一人が、家賃が高いと零していた記憶がある。
ジュリエーヌさんの腕に腰掛けた状態で大通りに軒を連ねる店舗を見遣る。
どの店舗も人が居るような気がする。
確か、有名なデザイナーがここのどこかに店を出していたような話を聞いたような……。
物凄く曖昧だ。
現実でもそこまで頓着したことがない。
好きなのは、着やすくて楽な服だ。
スカートも、ほとんど穿かないような俺に、デザイナーとかに対する興味を持てという方が大間違いだ。
なので、ゲーム内でも服にはあまり興味がなかった。
俺の装備は性能重視である。
ファッションに関しては、ドロップだったり貰い物だったりしている。
そして着た切り雀状態になっていた。
噴水広場を抜けて一本裏の道に入ったジュリエーヌさんはそこから遠くない店に足を進めた。
ついでに言えば、ジュリエーヌさんも有名な洋裁師だ。
この人はNPCだけど、いや、だからこそかな?
NPCに贈り物をする時は、ジュリエーヌさんの所で服を買って贈っていた。
喜ばれるんだよ、これが。
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プレイヤーの作った補正値の高いシャツも、ただのシャツも、NPCにしたら『シャツ』でしかなかった。
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だけどジュエリーヌさんの服が買えるということは、NPCの間では一種のステータスになる。
デート前に服をプレゼントしたことのあるNPCには「『FreeDom』の服じゃねえか!」と驚かれたものだ。
そう、ジュエリーヌさんは、自分の腕に自信と誇りを持った、世話焼きおば、じゃないオカンなのだ。
着た切り雀の俺は、良く『冒険者でも身だしなみはしっかりしなさい!』と怒られたものです、はい。
そうしてあれこれと世話を焼かれたものです、はい。
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