鮭とかえる

かえるまる

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序章

かえるくん本能の目覚め

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第7話  鮭くん、本能の目覚め

ある日のこと。
いつものように淀みの中を行ったり来たり遊んでいるとき。
急に思い立ったように。
鮭くんが言いました。

「かえるくん。ぼくはここを出ようと思うんだ。
かえるくんとずっと一緒に暮らしていたいけど、ここを出てぼくは川を下らなきゃいけない気がするんだ」

「ええ!なんで?」

鮭くんの突然の告白に、困った顔をするかえるくんです。

続けて鮭くんが言います。

「なぜかわからないけど、川を下らなきゃいけない気がするんだ」

まだ見ぬ外の世界へ行きたいという鮭くん。
ただただ困惑するかえるくん。

「亀じいさんに聞きにいこう!」

「うん。それがいいよ!」

ふたりは亀じいさんのところへ。
大きな岩の上で、いつも寝てばかりいる亀じいさんです。

「亀じいさん、こんにちは」

「おぉ、仲良しの鮭くんと、かえるけんじゃの」

「教えて亀じいさん。
なんでぼくはそわそわするんだろう?
そしてここから外へ行かなきゃいけない気がするんだ」

鮭くんがこうたずねました。

「亀じいさん、こんにちは」

「教えて亀じいさん。
なんで鮭くんは外に行きたいの?」

かえるくんもたずねました。

「亀じいさん。どういうこと?」

「亀じいさん。どういうこと?」

ふたりがたずねます。

「ほっほっほ
そろそろ旅立ちのころかの」

亀じいさんが答えました。



◎  第1章  初めの春
      第8話  かえるくんの決心

淵を出て川を降り、外へ行きたいと言う鮭くんです。
一方、このままずーっとここでいっしょにいたいと言うかえるくん。
亀じいさんに相談しました。

「亀じいさん。どういうこと?」

「そろそろ旅立ちのころかの」

亀じいさんが教えてくれます。

「それはのぉ・・・」

物知りの亀じいさんが教えてくれるには。

鮭は川を下って海に行き、大人になってまた帰ってくると。
旅立ち。
それが鮭の本能なんだと。

「ぼくは行かなくていいの?」

かえるくんがたずねます。

「かえるはここにいたらいい。
かえるは生まれたところにずっといる、これも本能なんじゃよ」

亀じいさんが教えてくれました。

「そうか。じゃあ僕らはお別れするんだ」

「お別れするんだ」

「さよならは嫌だよ!」

「ぼくも嫌だよ!だけど外に行かなきゃいけないし・・・」

ふたりとも黙ってしまいました。

しばらく悩んで。
かえるくんがこう言いました。

「じゃあぼくもいっしょに行くよ!」

「えっ!ほんとう?」

うれしそうに鮭くんが叫びました。

「ほんとうさ。ぼくらはずっといっしょだったし、これからもずっといっしょだよ」

「かえるくん、ありがとう!」

すりすり、すりすり。

頬を寄せあいながら。
鮭くんとかえるくんはほんとうに仲良しです。

でも。
これには亀じいさんが驚きました。

「う~ん。鮭が川を下るのは本能としてとうぜんなんじゃが・・・。
その鮭にかえるがついていくというのか。
わしも長く生きているが、そんなことは聞いたこともないぞ」

「かえるよ。やめておけ。外の世界はとても危険だぞ」

かえるくんは迷わず答えました。

「それでもぼくは行くよ!
だってずーっといっしょなんだから」

「うん、かえるくんといっしょに行くんだ!」

しばらく黙ったままの亀じいさんでしたが、

「そうか。でもこれもまた運命なんじゃろうなぁ。
こんなことは初めてじゃが、こんなふたりがいてもいいんじゃろぉ」

「わかった。鮭にかえるよ、お互いに助けあっていくんじゃよ」

「うん!」
「うん!」

「じゃがよいか。
これだけは忘れるなよ。
鮭は海で生きていけるが、かえるは海では生きていけぬのじゃ。
海は塩の水じゃ。
鮭は良いのじゃが、かえるは塩の水では生きていけぬのじゃからの」

「海って?」

かえるくんがたずねます。

「この川をずーっと降った先が海。
どこまでもどこまでも広いところじゃよ」

亀じいさんは言います。

「いっしょに行くのは、川の水の味が変わる海の手前までじゃ。
そしてそこで鮭が帰ってくるまで、かえるは長く待つことになるじゃろう」

「わかったよ亀じいさん。
海の手前までにするよ。
そこで鮭くんが帰ってくるのを待つよ」

こうしてふたりは、いっしょに川を下ることにしました。

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