4 / 19
序章
かえるくん本能の目覚め
しおりを挟む
第7話 鮭くん、本能の目覚め
ある日のこと。
いつものように淀みの中を行ったり来たり遊んでいるとき。
急に思い立ったように。
鮭くんが言いました。
「かえるくん。ぼくはここを出ようと思うんだ。
かえるくんとずっと一緒に暮らしていたいけど、ここを出てぼくは川を下らなきゃいけない気がするんだ」
「ええ!なんで?」
鮭くんの突然の告白に、困った顔をするかえるくんです。
続けて鮭くんが言います。
「なぜかわからないけど、川を下らなきゃいけない気がするんだ」
まだ見ぬ外の世界へ行きたいという鮭くん。
ただただ困惑するかえるくん。
「亀じいさんに聞きにいこう!」
「うん。それがいいよ!」
ふたりは亀じいさんのところへ。
大きな岩の上で、いつも寝てばかりいる亀じいさんです。
「亀じいさん、こんにちは」
「おぉ、仲良しの鮭くんと、かえるけんじゃの」
「教えて亀じいさん。
なんでぼくはそわそわするんだろう?
そしてここから外へ行かなきゃいけない気がするんだ」
鮭くんがこうたずねました。
「亀じいさん、こんにちは」
「教えて亀じいさん。
なんで鮭くんは外に行きたいの?」
かえるくんもたずねました。
「亀じいさん。どういうこと?」
「亀じいさん。どういうこと?」
ふたりがたずねます。
「ほっほっほ
そろそろ旅立ちのころかの」
亀じいさんが答えました。
◎ 第1章 初めの春
第8話 かえるくんの決心
淵を出て川を降り、外へ行きたいと言う鮭くんです。
一方、このままずーっとここでいっしょにいたいと言うかえるくん。
亀じいさんに相談しました。
「亀じいさん。どういうこと?」
「そろそろ旅立ちのころかの」
亀じいさんが教えてくれます。
「それはのぉ・・・」
物知りの亀じいさんが教えてくれるには。
鮭は川を下って海に行き、大人になってまた帰ってくると。
旅立ち。
それが鮭の本能なんだと。
「ぼくは行かなくていいの?」
かえるくんがたずねます。
「かえるはここにいたらいい。
かえるは生まれたところにずっといる、これも本能なんじゃよ」
亀じいさんが教えてくれました。
「そうか。じゃあ僕らはお別れするんだ」
「お別れするんだ」
「さよならは嫌だよ!」
「ぼくも嫌だよ!だけど外に行かなきゃいけないし・・・」
ふたりとも黙ってしまいました。
しばらく悩んで。
かえるくんがこう言いました。
「じゃあぼくもいっしょに行くよ!」
「えっ!ほんとう?」
うれしそうに鮭くんが叫びました。
「ほんとうさ。ぼくらはずっといっしょだったし、これからもずっといっしょだよ」
「かえるくん、ありがとう!」
すりすり、すりすり。
頬を寄せあいながら。
鮭くんとかえるくんはほんとうに仲良しです。
でも。
これには亀じいさんが驚きました。
「う~ん。鮭が川を下るのは本能としてとうぜんなんじゃが・・・。
その鮭にかえるがついていくというのか。
わしも長く生きているが、そんなことは聞いたこともないぞ」
「かえるよ。やめておけ。外の世界はとても危険だぞ」
かえるくんは迷わず答えました。
「それでもぼくは行くよ!
だってずーっといっしょなんだから」
「うん、かえるくんといっしょに行くんだ!」
しばらく黙ったままの亀じいさんでしたが、
「そうか。でもこれもまた運命なんじゃろうなぁ。
こんなことは初めてじゃが、こんなふたりがいてもいいんじゃろぉ」
「わかった。鮭にかえるよ、お互いに助けあっていくんじゃよ」
「うん!」
「うん!」
「じゃがよいか。
これだけは忘れるなよ。
鮭は海で生きていけるが、かえるは海では生きていけぬのじゃ。
海は塩の水じゃ。
鮭は良いのじゃが、かえるは塩の水では生きていけぬのじゃからの」
「海って?」
かえるくんがたずねます。
「この川をずーっと降った先が海。
どこまでもどこまでも広いところじゃよ」
亀じいさんは言います。
「いっしょに行くのは、川の水の味が変わる海の手前までじゃ。
そしてそこで鮭が帰ってくるまで、かえるは長く待つことになるじゃろう」
「わかったよ亀じいさん。
海の手前までにするよ。
そこで鮭くんが帰ってくるのを待つよ」
こうしてふたりは、いっしょに川を下ることにしました。
ある日のこと。
いつものように淀みの中を行ったり来たり遊んでいるとき。
急に思い立ったように。
鮭くんが言いました。
「かえるくん。ぼくはここを出ようと思うんだ。
かえるくんとずっと一緒に暮らしていたいけど、ここを出てぼくは川を下らなきゃいけない気がするんだ」
「ええ!なんで?」
鮭くんの突然の告白に、困った顔をするかえるくんです。
続けて鮭くんが言います。
「なぜかわからないけど、川を下らなきゃいけない気がするんだ」
まだ見ぬ外の世界へ行きたいという鮭くん。
ただただ困惑するかえるくん。
「亀じいさんに聞きにいこう!」
「うん。それがいいよ!」
ふたりは亀じいさんのところへ。
大きな岩の上で、いつも寝てばかりいる亀じいさんです。
「亀じいさん、こんにちは」
「おぉ、仲良しの鮭くんと、かえるけんじゃの」
「教えて亀じいさん。
なんでぼくはそわそわするんだろう?
そしてここから外へ行かなきゃいけない気がするんだ」
鮭くんがこうたずねました。
「亀じいさん、こんにちは」
「教えて亀じいさん。
なんで鮭くんは外に行きたいの?」
かえるくんもたずねました。
「亀じいさん。どういうこと?」
「亀じいさん。どういうこと?」
ふたりがたずねます。
「ほっほっほ
そろそろ旅立ちのころかの」
亀じいさんが答えました。
◎ 第1章 初めの春
第8話 かえるくんの決心
淵を出て川を降り、外へ行きたいと言う鮭くんです。
一方、このままずーっとここでいっしょにいたいと言うかえるくん。
亀じいさんに相談しました。
「亀じいさん。どういうこと?」
「そろそろ旅立ちのころかの」
亀じいさんが教えてくれます。
「それはのぉ・・・」
物知りの亀じいさんが教えてくれるには。
鮭は川を下って海に行き、大人になってまた帰ってくると。
旅立ち。
それが鮭の本能なんだと。
「ぼくは行かなくていいの?」
かえるくんがたずねます。
「かえるはここにいたらいい。
かえるは生まれたところにずっといる、これも本能なんじゃよ」
亀じいさんが教えてくれました。
「そうか。じゃあ僕らはお別れするんだ」
「お別れするんだ」
「さよならは嫌だよ!」
「ぼくも嫌だよ!だけど外に行かなきゃいけないし・・・」
ふたりとも黙ってしまいました。
しばらく悩んで。
かえるくんがこう言いました。
「じゃあぼくもいっしょに行くよ!」
「えっ!ほんとう?」
うれしそうに鮭くんが叫びました。
「ほんとうさ。ぼくらはずっといっしょだったし、これからもずっといっしょだよ」
「かえるくん、ありがとう!」
すりすり、すりすり。
頬を寄せあいながら。
鮭くんとかえるくんはほんとうに仲良しです。
でも。
これには亀じいさんが驚きました。
「う~ん。鮭が川を下るのは本能としてとうぜんなんじゃが・・・。
その鮭にかえるがついていくというのか。
わしも長く生きているが、そんなことは聞いたこともないぞ」
「かえるよ。やめておけ。外の世界はとても危険だぞ」
かえるくんは迷わず答えました。
「それでもぼくは行くよ!
だってずーっといっしょなんだから」
「うん、かえるくんといっしょに行くんだ!」
しばらく黙ったままの亀じいさんでしたが、
「そうか。でもこれもまた運命なんじゃろうなぁ。
こんなことは初めてじゃが、こんなふたりがいてもいいんじゃろぉ」
「わかった。鮭にかえるよ、お互いに助けあっていくんじゃよ」
「うん!」
「うん!」
「じゃがよいか。
これだけは忘れるなよ。
鮭は海で生きていけるが、かえるは海では生きていけぬのじゃ。
海は塩の水じゃ。
鮭は良いのじゃが、かえるは塩の水では生きていけぬのじゃからの」
「海って?」
かえるくんがたずねます。
「この川をずーっと降った先が海。
どこまでもどこまでも広いところじゃよ」
亀じいさんは言います。
「いっしょに行くのは、川の水の味が変わる海の手前までじゃ。
そしてそこで鮭が帰ってくるまで、かえるは長く待つことになるじゃろう」
「わかったよ亀じいさん。
海の手前までにするよ。
そこで鮭くんが帰ってくるのを待つよ」
こうしてふたりは、いっしょに川を下ることにしました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる