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第2章 幼年編
707 夏の大冒険 ④ 意外な賊
しおりを挟むダッダダ ダッダダ ダッダダ ダッダダ‥‥
全力で逃げる馬10騎。
「「ハイッッ! ハイッッ! ハイッッ!」」
「「逃げろ!逃げろ!逃げろ!」」
ダッダダ ダッダダ ダッダダ ダッダダ‥‥
「なぁフォックスのアニキ、なんで逃げるんだよ。2人だぜ?」
「テメーら知らねぇのか!あいつはフォックスのアニキでさえ敵わなかった狂犬だよ。しかも銀級のな」
「銀級!?」
「マジか‥‥」
「マジだ。今度ヤツを怒らせたら殺されるぞ!」
「フォックスのアニキの言うとおりだ。俺ら全員殺されるぞ」
「わ、わかったよ!そんだけお前らが言うんだから‥‥」
ダッダダ ダッダダ ダッダダ ダッダダ‥‥
「俺らが100人いたって敵わねぇ。ありゃ本物の戦闘狂だよ。ロジャーさん、タイラーさん以来のな」
そんなことを言いながら。馬に乗り全力で逃げている10人の冒険者である。
ダッダダ ダッダダ ダッダダ ダッダダ‥‥
「止まれよ。久しぶりじゃんフォックスのアニキ」
「「「!!!」」」
ザザザザアアァァァッッッ!
慌てて手綱を引いて馬を急停止させるフォックス一行。
(((いつのまに???)))
「あ、アレクさん‥‥久しぶりっす‥‥」
「まぁ馬から降りて説明してくれよ。説明聞かずにお前ら、今度は頭と胴体バラされたくないだろ?」
カチャッ‥
背の刀の腹を少し見せ、全身から湯気のように闘気を激らせて威嚇するアレク。
「あ、あ、あ、あ‥‥」
「ア、ア、ア、ア‥‥」
ジヨオオォォォォーーーッッ‥‥
ジヨオオォォォォーーーッッ‥‥
フォックスの子分2人の股間から見る間に放水が始まった。
「「あ、あ、あ、アワワワワワっ‥‥」」
バターーーン!
1人がそのまま白目を剥いて頭から背中に倒れてしまう。それは鉄級とはいえベテランの域にある冒険者……。
「ち、ち、違うんだ!き、聞いてくれよアレクさん‥‥俺ら誰も殺しちゃいないんだ!」
「ふーん。まあ正座して説明しよっかフォックスのアニキ」
ササササッッ!
ササササッッ!
ササササッッ!
慌てて正座をする9人の男たち。約1名は失神したままである。
「せ、せ、説明するよ。いや、説明させてください」
「いいよ。聞いてやるよ」
―――――――――――
「お待たせ」
「「「アレク(ダーリン)!」」」
「どうなったアレク?」
「んーとね‥‥(ちょっと商人さんたちから離れていいか?)」
「「「?」」」
「あのな、お前らには悪いんだけど逃げられたってことにしてくんない?」
「「「どうして?」」」
「実はな、あいつら10人はヴィンランドギルド所属の鉄級冒険者なんだよ」
「でな、商人から受けた依頼‥‥ああ、これもギルドで正規に受けた依頼な。そんで受けた依頼っていうのがサカスとグラシアからヴィンランドに運ばれる偽物の商品を完璧に燃やしてほしいっていうものなんだよ」
「「「はぁ?」」」
「燃えてた荷物は俺が消しといたけど、中身はなんだった?」
「あのねアレク君、1/3くらいは濡れただけで大丈夫だったよ。中はね、ぼくたちが着てる制服だったよ」
「そうにゃ。サンアレ商会のタグが付いたダーリンとこの制服だにゃ」
「やっぱりか‥‥シナモン2、3着取ってきてくれよ」
「はいにゃ?」
「ダーリンこれにゃ」
「ありがとなシナモン」
そう言ってタグを中心に、制服を念入りに検品するアレク。
「これな、よくできてるけど実は全部偽物なんだ。わかんないだろ2号機?」
「「「えっ?!」」」
「俺たちが着てる制服と同じに見えるぞアレク」
「なっ、わかんないだろ2号機。タグは俺とサンデーさんにしかわからない細工がしてあるんだよ」
「「「細工?」」」
そうなんだ。アレク工房時代から俺の売るものにはロゴマークやタグが付いてるんだ。服はタグの付ける位置、糸の素材、タグの字体等々3重にも4重にも細工を施して真贋の判別ができるようにしてあるんだ。
だからこの制服はみんな真っ赤な偽物。コピー商品。
「依頼は偽物がヴィンランドに届かず、野盗に襲われた形にして盗むか焼いてほしいということだから、アイツらも族を騙って襲ったんだって。
だから実際誰も死んでないだろ?まあ冒険者は2、3発殴ったって言ってたけどな。どう思う2号機?」
「なあアレク‥‥その2号機っていうのはせめて俺たちだけのときはやめてくれないか?なんか気が抜けるんだよ」
「そんなことくらい気にするなよ。なあ3号機?」
「やめてくれよ!俺も2号機じゃなかった!モーリス様に賛成だよ!」
「それじゃあ私はどうですかにゃん?」
「か,かわいい‥‥」
「シャーーーッッ!」 バリッッ!
「痛っ!シナモンバリ掻くなよ!」
「あのなぁお前ら緊迫感なさすぎだぞ」
「「そうよ!セロの言うとおりよ!」」
あははははは
あははははは
「で、アレクはその冒険者たちを逃したんだな?」
「ああ。名前も顔もよく知ってる奴らだからな」
「あいつら馬車の御者さんと冒険者には謝ってたよ。たぶんなんも知らないだろうって」
「じゃあ商人は?」
「‥‥絶対知ってるって」
「「「‥‥」」」
「てかアレク、あんたなんなのよ!未成年なのよ?どうして馬より速いのよ!どうして大人の冒険者より強いのよ!」
「えーっと、なんとなく?」
「あーもう!聞いた私がバカだったわよ!アレクだもんね」
「そうにゃ。ダーリンはダーリンにゃ!」
「シナモンだけだよそう言ってくれるのは!」
なでなで なでなで なでなで ‥‥」
「チッ!」
「あーまたセーラがチッって言った!」
「言ってねぇよ!」
「「「こわっ!」」」
「で。その依頼主って誰なんだよ?」
「サカスの商人って言ってたな。なんだっけ?えーっとサンヨー商会だったかな。それと偽物作ってるのがグラシアのトロイ商会?って言ってたよ」
「とりあえずは証拠の制服と商人、冒険者を連れてサカスの騎士団に預けるしかないだろうな。尋問含めて」
「みんな‥‥」
「どうしたキャロル。なんかいい考えがあるのか?」
「違うの‥‥」
「「「???」」」
「あのね‥‥」
「サンヨー商会は今の私の両親、トロイ商会は私の生みの親なの」
「「「えーーー?」」」
―――――――――――
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