アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

706 夏の大冒険 ③ 会敵

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 「セーラ猫は20メル前で停止。馬車を聖壁で守ってくれ」

 「わかりましたにゃん」

 「か、かわいい‥‥」

 「シャーーーッッ!」  バリッッ!

 「痛いよシナモン!」


 「2号機モーリスは俺の後ろにいろ。ほら、仮面被っとけよ。出るぞ」

 こくこく 「わかった」

 「セーラ猫、トール以外対人の実戦経験者は?」

 ぶるんぶるん
 ぶるんぶるん
 ぶるんぶるん

 「トールは御者さんを頼む。バス馬車はお前の判断に任す」

 「うん。任せて」

 「ハンスとシナモンは止まったら、降りて馬車の右を警戒。3号機セバスとセロは馬車の左を、アリシアとキャロルは馬車に乗ったまま後方警戒と魔法を撃てるように」

 こくこく 「「わかった(わかったにゃ)」」

 コクコク 「「わかった」」

 こくこく 「「う、うん」」

 「いくぞ」











 (((アレク‥‥)))

 セーラを除く全員が。アレクの落ち着いた振る舞いと的確な指示に驚いていた。そしてアレクは荒事にも慣れていると思った。

 「(なあセバス、アレクは銀級冒険者なんだろ)」

 「(ああセロ。そうだってモーリス様からきいたぞ)」

 「(未成年者では中原初らしいな)」

 「(正直すげぇよらあいつは)」



 「(ハンス、トールは実戦経験者なのかにゃ?)」

 「(俺も知らないぞ。てか、ひょっとして子どものころのあれか?)」

 「「(?)」」



 (なんでアレク君は僕を実戦経験者って言ったんだろう。やっぱりシャンク兄ちゃんとのあのことなのかな?でもなんでアレク君が知ってるんだろう)



 実際、アレクからみた10傑の仲間のうち、安心してあとを任せられるのはセーラとトールだけだった。
 セーラとトールは今もまったく平静を保てている。そして敵も大したことはない。

 (まあこのくらいなら大丈夫だろ。セーラもトールもいるからな)

 「いいかみんな。確実に勝てると思う以外は闘るな。逃げても構わない。俺は1度にみんなを守れないからな。だから絶対ぜったい怪我をするな」

 こくこく
 コクコク
 こくこく

 ついこの間のサンデーさんとヴァルカンさんの姿が浮かんだんだ。油断してたわけじゃないんだけど、あのときタムラさんがいてくれなかったら俺は自分を許せないだろう。
 俺の中で過信、慢心があったんだ。あんなことはもう絶対遭っちゃならない。なんとしても避けなきゃ。

 「御者さんこのまま急いでください。大丈夫です。絶対に傷1つ負わせませんから。
 あとのことはトールの指示に従ってください」

 「「わ、わかったよアレク君」」


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ‥‥
 
 平原にモクモクと黒い煙をあげる炎の柱が見えてきた。数人の商人と数人の冒険者らしき人が座らされている。彼らを囲んでいるのは10人ほどの賊だ。

 「コイツら‥‥」

 「ええアレク」

 賊だけど賊らしくない。だって殺意までは感じられないんだよ。みんな顔を隠しているけど、やっぱ賊らしくないな。

 そして。
 俺はコイツらの3、4人を知ってる。







 それは襲っているはずの賊側からも見えていた。
 領都ヴィンランド方面から迫り来る2頭立ての見たこともない馬車。

 ゴロゴロゴロゴロ‥‥

 ゴロゴロゴロゴロ‥‥

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ‥‥



 【  賊side  】

 「「馬車が来るぞアニキ!?」」

 「「ど、どうするんですか?」」

 「「まだダメだ。依頼をやり終えてないからな」」

 「「でもアニキ。このままじゃ‥‥」」

 固唾を飲んで見守る賊。燃え盛る馬車と、向かってくる馬車を交互に見つめる賊の10人。

 「「早く燃えろ燃えろ!」」

 「「まだか!くそっ!」」

 燃え盛る馬車は未だ全焼には至っていない。

 「依頼主さんからは全焼が条件だからな。早く燃えろ燃えろ!」

 ダダダダダダダダダダダダダ‥‥

 馬車の前から走ってくる2人の男が見える。

 「コイツら馬より速いぞ!」

 「あっ!まさか‥‥」

 「「アニキ!?ヤバいよー!」」




 【  モーリスside  】

 「いくぞ。ついてこい」

 そう言ったアレクの足は驚くくらい速かったんだ。
 俺もアレクに負けないように突貫も学んでそれなりに速くなったなんて自負してたけど……。
 どんどん離されていったんだ。

 これが精霊魔法の力なのか。アレクは銀級冒険者になったって言ってたけど、この走りだけでわかるよ。  
 なんて強いだ……。

 「あははははは‥‥」

 あいつの背中を追いかけながら、俺は笑いを堪えられなくて仕方なかったんだ。だって親友のアレクに追いつくことが俺の最大の目標になってたからさ。




 ハァハァハァハァハァ‥‥

 しかし、速すぎるぞ‥‥




 【  賊side  】

 ダダダダダダダダダダダダダ‥‥

 先頭の男の姿が見えてきた。

 「ま、まさか!狐仮面か!?」

 「あ、あ、アニキ!」

 「いかん。逃げるぞ!」

 「「あ、アニキの言うとおりだ。誰に遭うよりも1番ヤバい奴が来た!」」

 「「引け引けーー!」」

 10人の賊は慌てて馬に乗り、逃げていった。








 「2号機は待機。みんなとこの人たちを救助してくれ。俺は逃げたあいつらを追う」

 「わかった!」

 「スコール!」

 ザーーーーーーーーーッッッ!

 燃え盛る馬車を消火。
 すかさず逃げる馬を追ったんだ。

 あいつら、なんでこんなことしてるんだよ。冒険者だろ。



―――――――――――


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