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第2章 幼年編
705 夏の大冒険 ② 出発進行!
しおりを挟む夏合宿は最高だった。アリシアとキャロルの水着姿は‥‥‥‥ムフッ。
(うん、めっちゃ成長してる!)
ふうぅぅっ ふうぅぅっ ふうぅぅっ ‥‥
「(ほらキャロル、アレクがフーフー言って鼻膨らませてるわ。ガン見してるわよ)」
「(でもナタリー寮長ばっかり見てるじゃん!)」
「「(この歳上好きめ!)」」
アリシアとキャロルはハッキリ言ってとっても目の毒(目の保養)だった。もちろんナタリー寮長は破壊砲だった。
こっちの世界では人族も少し早熟なんだと思う。
▼
「さあお前ら、早く帰るぞ」
「アレクはりきり過ぎよ!」
「ホント!」
「早く、早く、早く‥」
フフフフフ
ふふふふふ
―――――――――――
みんなが揃った。
ヴィヨルド領主の次男モーリス。
モーリス命の従者セバス。
狼獣人のハンス。
豹獣人のシナモン。
熊獣人のトール。
火魔法使いのアリシア。
風魔法使いのキャロル。
モンク僧見習いのセロ。
聖魔法士のセーラ。
そして俺。4年1組10傑の大事な仲間だ。
「そんじゃ乗ってくれ。出発するぞー」
「「なにこの馬車!?」」
「すげぇだろ。えへへ」
移動用に俺が開発した2頭立ても、連結も可能な「バス馬車」。定員15人/1輛(2輛時は30人)。
試運転の今日は1輛だよ。
この世界の通常の馬車が時速4、5㎞のところをこのバス馬車は時速6、7㎞と従来の1.5倍速いんだ。且つ通常なら1日50㎞程度の運行距離も80㎞は可能なんだ。
バス馬車
徹底的な軽量化を果たし、タイヤの機動性も制動性も格段に優れているから従来の馬車より速くて距離を稼げるんだ。
軽量化と乗りやすさに加えて、北海道のばんえい競馬でみるような大型の馬に曳かせるから、2頭立ての2輛連結にすると、1度に30人が移動できるんだよね。
当初は帝国のお爺ちゃんお婆ちゃんのリゾートまでの移動用として考えてたんだけど、ゆくゆくは乗り合いバスにしたいんだ。
人の往来が自由になれば情報も行き渡るようになるし、ひいては平和になるって思うんだよね。
「今回はな、このバス馬車の試験運行を兼ねての小旅行なんだよ」
「これもお前が考えたのかアレク?」
「そうだよ。今回の試験走行の結果をみて、すぐに帝都でも実用化するからな。誰もが乗れる馬車がバス馬車なんだよ。
いつかみんなで帝都も行こうな。俺案内するからさ」
こくこく
コクコク
こくこく
「(なぁトール、アレクはいつのまにか届かないくらい大きくになったな)」
「(うん。でも優しくてちょっと変な友だちのままだよ)」
「(ああ!そうだよな!)」
今回の試験走行はヴィヨルドの本職御者さんにお願いしたんだ。
あとで改良点も教えてもらえるからね。
「「サカス、グランドまでは我らにお任せください」」
「「「お願いしまーす」」」
みんなでバス馬車に乗ったんだ。
座席はリクライニングはもちろん、対面式にもなる回転シートを採用したからね、みんなで和気藹々の旅なんだ。
「「なにこの座席!?」」
「「よく考えたよなぁ」」
「みんなでワイワイできるだろ」
「すげぇよお前は」
「そんなに褒めるなよハンス」
「これで変態じゃなきゃいいのになあ」
「間違いない!」
「ハンス、セーラ!お前ら言い方!」
わははははは
ワハハハハハ
フフフフフフ
「では出発します」
ゴロゴロゴロゴロ‥‥
従来の馬車では考えられないくらい静かな走りっぷりだよ。
「アレク君こいつはすごいよ!」
「馬もこれなら疲れないよ!」
「でしょでしょ!」
御者さんたちからも好評だよ。
「すごい!外の景色も見えるわ!」
「風も気持ちいい!」
「(アレク、お前また中原の物流に革命起こしてるんだぞ)」
「(みんな喜べばいいじゃん)」
「(お前‥‥どうせドワーフがよくなるようにサンアレ商会の取り分は格安でやってるんだろ?)」
「(みんながよけりゃいいんだよ)」
「(クックック。お前らしいよ)」
バス馬車の窓はもちろん外が見える窓ガラス仕様だよ。ただ窓ガラスっぽいけど窓ガラスじゃないんだ。
窓ガラスっぽい物の実体は、ガッチガチに硬くした硬化ガラス並の硬化スライム膜。矢が当たっても刺さらないし、火にも強いんだ。唯一残念なのは、手動で開け閉めしてもらうことなんだけどね。
ゴロゴロゴロゴロ‥‥
「「ぜんぜん揺れないじゃん!」」
「「ほんと!すごいわ!」」
「アレク?」
「アレク君?」
「ダーリン?」
「楽しいなぁ、うれしいなぁ。みんなで冒険の旅だよ!」
「「「‥‥」」」
「よかったねダーリン」
なでなで なでなで なでなで‥‥
今回の試験走行は馬1頭に学年10傑の仲間が10人余裕で乗れたよ。
「ぜんぜん揺れないじゃん!」
「だろ。道のよくないとこも揺れないのがダンパーなんだよ。でも、いずれは煉瓦道にするから、さらに快適になるぞ」
「今日の予定は?」
「暗くなる前。今日中にサカスに着くぞ」
「「マジか?」」
「ふつうなら歩いて3日はかかるぞ」
「だいたい馬車は用意から含めて騎士団さんか商会しか準備できねぇしな」
「歩いてたら野盗もくるし」
「これなら安心だぞ。ヴィヨルド領も帝都も、このバス馬車を襲ったら‥‥すごいことになるってすぐに知れ渡るからな」
「そりゃそうだろ。ヴィヨルド領でもヘンリーの兄貴たちに捕まったら‥‥想像するだけで怖いわ!」
「てかアレク、兄貴って、お前いつのまにヘンリー様と仲良くなったんだよ!?」
「そうだぞ!最近はモーリス様よりお前のほうがよく話してるじゃないか!」
「だってセバス、仕方ないだろ。仕事なんだから。
てかモーリスはあと2、3年遊べるんだからしっかり遊んでけよ。卒業したら遊べなくなるだろ?」
「そりゃそうだけどな。最近お前人ん家に来たら、父上たちと話をするか、モモんとこのどっちかじゃねえかよ!」
「父上のところは別としてなぜ俺に会うより先にモモのところに行く?おかしいだろ!」
「あっ!しまった!モモちゃんも連れてこればよかった!」
「‥‥」
「(あのねモーリス、最近ステファンとステファニーもアレク君からお腹の匂いを嗅がれないからって喜んでるよ)」
「(今度はうちのモモが被害者かよ)」
「そうだ。モーリスとセバスはこれを被れ」
「ん?あっ‥‥狐仮面じゃないか!」
「そうだ。モーリスとセバスはお前らってバレたらダメだろ?」
「まあたしかにな」
こくこく
「俺が狐仮面1号機、モーリスが2号機、セバスが3号機だ」
「「『き』ってなんだ?」」
「き、騎兵とかみたいでかっこいいだろ。だから俺が1号機、モーリスが2号機、セバスが3号機なんだよ。とにかく人前では被っとけ」
「「あ、ああ‥‥」」
「あとセーラもバレるとまずいだろ。セーラはこれだ」
「あっ。猫ですね」
「にゃんにゃん」
「かっ、かわいい‥‥」
「シャー!」
「シナモン落ち着け。どうどう‥‥」
ゴロゴロゴロゴロ‥‥
ゴロゴロゴロゴロ‥‥
ゴロゴロゴロゴロ‥‥
「!」
「モーリス!ハンス!トール!」
「わからん!」
「争ってるな!」
「燃えてる臭いがする!」
「御者さん。そのまま急いでください」
「ん?わかったよアレク君」
来たよ来たよ!馬車のあるあるイベントが!
これはこの先でどったかの第3皇女が襲われてるんだよ!
馬車の窓からみんな身を乗り出して前方を見る。
すると。
「どうだモーリス?!」
「煙は見える!でも‥‥すまん。俺にはまだそれだけだ」
「賊は人族のみ。数は‥‥8、9、10人だ。助けるぞ!」
「「「おぉー!」」」
―――――――――――
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