アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
704 / 722
第2章 幼年編

705 夏の大冒険 ② 出発進行!

しおりを挟む

 夏合宿は最高だった。アリシアとキャロルの水着姿は‥‥‥‥ムフッ。

 (うん、めっちゃ成長してる!)

 ふうぅぅっ ふうぅぅっ ふうぅぅっ ‥‥


 「(ほらキャロル、アレクがフーフー言って鼻膨らませてるわ。ガン見してるわよ)」

 「(でもナタリー寮長ばっかり見てるじゃん!)」

 「「(この歳上好きめ!)」」


 アリシアとキャロルはハッキリ言ってとっても目の毒(目の保養)だった。もちろんナタリー寮長は破壊砲だった。
 こっちの世界では人族も少し早熟なんだと思う。







 「さあお前ら、早く帰るぞ」

 「アレクはりきり過ぎよ!」

 「ホント!」

 「早く、早く、早く‥」

 フフフフフ
 ふふふふふ


―――――――――――


 みんなが揃った。

 ヴィヨルド領主の次男モーリス。
 モーリス命の従者セバス。
 狼獣人のハンス。
 豹獣人のシナモン。
 熊獣人のトール。
 火魔法使いのアリシア。
 風魔法使いのキャロル。
 モンク僧見習いのセロ。
 聖魔法士のセーラ。
 そして俺。4年1組10傑の大事な仲間だ。

 「そんじゃ乗ってくれ。出発するぞー」

 「「なにこの馬車!?」」

 「すげぇだろ。えへへ」

 移動用に俺が開発した2頭立ても、連結も可能な「バス馬車」。定員15人/1輛(2輛時は30人)。
 試運転の今日は1輛だよ。


 この世界の通常の馬車が時速4、5㎞のところをこのバス馬車は時速6、7㎞と従来の1.5倍速いんだ。且つ通常なら1日50㎞程度の運行距離も80㎞は可能なんだ。

 バス馬車

 徹底的な軽量化を果たし、タイヤの機動性も制動性も格段に優れているから従来の馬車より速くて距離を稼げるんだ。

 軽量化と乗りやすさに加えて、北海道のばんえい競馬でみるような大型の馬に曳かせるから、2頭立ての2輛連結にすると、1度に30人が移動できるんだよね。

 当初は帝国のお爺ちゃんお婆ちゃんのリゾートまでの移動用として考えてたんだけど、ゆくゆくは乗り合いバスにしたいんだ。

 人の往来が自由になれば情報も行き渡るようになるし、ひいては平和になるって思うんだよね。


 「今回はな、このバス馬車の試験運行を兼ねての小旅行なんだよ」

 「これもお前が考えたのかアレク?」

 「そうだよ。今回の試験走行の結果をみて、すぐに帝都でも実用化するからな。誰もが乗れる馬車がバス馬車なんだよ。
 いつかみんなで帝都も行こうな。俺案内するからさ」

 こくこく
 コクコク
 こくこく

 「(なぁトール、アレクはいつのまにか届かないくらい大きくになったな)」

 「(うん。でも優しくてちょっと変な友だちのままだよ)」

 「(ああ!そうだよな!)」




 今回の試験走行はヴィヨルドの本職御者さんにお願いしたんだ。
 あとで改良点も教えてもらえるからね。

 「「サカス、グランドまでは我らにお任せください」」

 「「「お願いしまーす」」」


 みんなでバス馬車に乗ったんだ。
 座席はリクライニングはもちろん、対面式にもなる回転シートを採用したからね、みんなで和気藹々の旅なんだ。

 「「なにこの座席!?」」

 「「よく考えたよなぁ」」

 「みんなでワイワイできるだろ」

 「すげぇよお前は」

 「そんなに褒めるなよハンス」

 「これで変態じゃなきゃいいのになあ」

 「間違いない!」

 「ハンス、セーラ!お前ら言い方!」

 わははははは 
 ワハハハハハ  
 フフフフフフ

 「では出発します」

 ゴロゴロゴロゴロ‥‥


 従来の馬車では考えられないくらい静かな走りっぷりだよ。

 「アレク君こいつはすごいよ!」

 「馬もこれなら疲れないよ!」

 「でしょでしょ!」

 御者さんたちからも好評だよ。



 「すごい!外の景色も見えるわ!」

 「風も気持ちいい!」

 「(アレク、お前また中原の物流に革命起こしてるんだぞ)」

 「(みんな喜べばいいじゃん)」

 「(お前‥‥どうせドワーフがよくなるようにサンアレ商会の取り分は格安でやってるんだろ?)」

 「(みんながよけりゃいいんだよ)」

 「(クックック。お前らしいよ)」

 バス馬車の窓はもちろん外が見える窓ガラス仕様だよ。ただ窓ガラスっぽいけど窓ガラスじゃないんだ。

 窓ガラスっぽい物の実体は、ガッチガチに硬くした硬化ガラス並の硬化スライム膜。矢が当たっても刺さらないし、火にも強いんだ。唯一残念なのは、手動で開け閉めしてもらうことなんだけどね。

 ゴロゴロゴロゴロ‥‥

 「「ぜんぜん揺れないじゃん!」」

 「「ほんと!すごいわ!」」

 「アレク?」

 「アレク君?」

 「ダーリン?」






 「楽しいなぁ、うれしいなぁ。みんなで冒険の旅だよ!」

 「「「‥‥」」」


















 「よかったねダーリン」

 なでなで  なでなで  なでなで‥‥


 今回の試験走行は馬1頭に学年10傑の仲間が10人余裕で乗れたよ。
 
 「ぜんぜん揺れないじゃん!」

 「だろ。道のよくないとこも揺れないのがダンパーなんだよ。でも、いずれは煉瓦道にするから、さらに快適になるぞ」
 
 「今日の予定は?」

 「暗くなる前。今日中にサカスに着くぞ」

 「「マジか?」」

 「ふつうなら歩いて3日はかかるぞ」

 「だいたい馬車は用意から含めて騎士団さんか商会しか準備できねぇしな」

 「歩いてたら野盗もくるし」

 「これなら安心だぞ。ヴィヨルド領も帝都も、このバス馬車を襲ったら‥‥すごいことになるってすぐに知れ渡るからな」

 「そりゃそうだろ。ヴィヨルド領でもヘンリーの兄貴たちに捕まったら‥‥想像するだけで怖いわ!」

 「てかアレク、兄貴って、お前いつのまにヘンリー様と仲良くなったんだよ!?」

 「そうだぞ!最近はモーリス様よりお前のほうがよく話してるじゃないか!」

 「だってセバス、仕方ないだろ。仕事なんだから。
 てかモーリスはあと2、3年遊べるんだからしっかり遊んでけよ。卒業したら遊べなくなるだろ?」

 「そりゃそうだけどな。最近お前人ん家に来たら、父上たちと話をするか、モモんとこのどっちかじゃねえかよ!」

 「父上のところは別としてなぜ俺に会うより先にモモのところに行く?おかしいだろ!」

 「あっ!しまった!モモちゃんも連れてこればよかった!」

 「‥‥」

 「(あのねモーリス、最近ステファンとステファニーもアレク君からお腹の匂いを嗅がれないからって喜んでるよ)」

 「(今度はうちのモモが被害者かよ)」





 「そうだ。モーリスとセバスはこれを被れ」

 「ん?あっ‥‥狐仮面じゃないか!」

 「そうだ。モーリスとセバスはお前らってバレたらダメだろ?」

 「まあたしかにな」

 こくこく

 「俺が狐仮面1号機、モーリスが2号機、セバスが3号機だ」
 
 「「『き』ってなんだ?」」

 「き、騎兵とかみたいでかっこいいだろ。だから俺が1号機、モーリスが2号機、セバスが3号機なんだよ。とにかく人前では被っとけ」

 「「あ、ああ‥‥」」

 「あとセーラもバレるとまずいだろ。セーラはこれだ」

 「あっ。猫ですね」

 「にゃんにゃん」

 「かっ、かわいい‥‥」

 「シャー!」

 「シナモン落ち着け。どうどう‥‥」


 ゴロゴロゴロゴロ‥‥


  
   ゴロゴロゴロゴロ‥‥



      ゴロゴロゴロゴロ‥‥



 「!」

 「モーリス!ハンス!トール!」

 「わからん!」

 「争ってるな!」

 「燃えてる臭いがする!」

 「御者さん。そのまま急いでください」

 「ん?わかったよアレク君」

 来たよ来たよ!馬車のあるあるイベントが!
 これはこの先でどったかの第3皇女が襲われてるんだよ!

 馬車の窓からみんな身を乗り出して前方を見る。
 すると。

 「どうだモーリス?!」

 「煙は見える!でも‥‥すまん。俺にはまだそれだけだ」

 「賊は人族のみ。数は‥‥8、9、10人だ。助けるぞ!」

 「「「おぉー!」」」



―――――――――――


 いつもご覧いただき、ありがとうございます!
 「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...