アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

704 夏の大冒険 ① バス馬車

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 「「キャーーーッッやめてーーーっ!」」

 「許してくれよぉぉー」

 「勘弁してくれよぉぉー」

 「「あんたー(父ちゃーん)!」」

 ざわざわ
 ザワザワ
 ひそひそ
 ヒソヒソ

 「騎士団さん。気にせず連行してください」

 「‥‥わかった。それでは罪人は足枷をつけて移動する。いくぞ」

 「「キャーーーッッ!やめてーーーっ!」」

 「許してくれよぉぉー」

 「勘弁してくれよぉぉー」

 「「あんたー(父ちゃーん)!」」




 村人皆が周知したはずの温泉で。宿泊施設で。
 金銭を盗むべく物色していた者が相次いで捕まった。ともに村人。現行犯である。

 温泉では。
 その男のポケットからは財布も見つかった。

 「それは俺の財布なんだよ!言い逃れはできんからな!」

 「く、くそっ!いいじゃねぇか!こんな小銭しか入ってねぇ財布1つくらい」

 「決まりは決まりだ。お前はもう村に戻ってくることはない。領都の沙汰を待って‥‥まぁ奴隷だろうな」

 「許してくれよー!許して‥‥」



 これ以降、村から盗難はぴたっと止まったんだ。サンアレ商会での万引もなくなった。

 だけど。
 従来からの村人と新興且つ不真面目な村人との間の溝ははっきりと深まったんだ。


―――――――――――


 で。
 そんなことがデニーホッパー村で起こってるってことをまったく知らない俺は浮かれまくっていたんた。

 「じゃあ夏休み明けな。またなハンス」

 「?」

 「またなトール」

 「アレク君?」

 「またなシナモン」

 「ダーリン?」

 「またなセロ」

 「おいアレク?」

 「またなセバス」

 「おいおい?アレク‥‥」

 「またなセーラ。じゃあいこうぜアリシア、キャロル」

 



































 「チッ!ボケたかアレク?」

 「ひどいぞセーラ!なんでそんな言い方‥‥‥‥あっ!?」

 「お前なぁアレク。マジで忘れてたのかよ‥‥」

 「す、す、すまんモーリス。合宿も楽しみで楽しみで‥‥すっかり忘れてた‥‥」

 「「「アレク‥‥」」」

 「お前が1番浮かれてたんだぞ!」

 「そうにゃ。ダーリンが1番喜んでたにゃ!」

 「そうだよ。アレク君これを作るあれを作るって僕に話してたんだよ!」

 「だって海の合宿なんだぞ!女子の水着が見れるんだぞ!ひょっとしたら女湯だって‥‥‥‥‥‥あっ!?」












 「すいません皆さん‥‥‥‥ボケてました」

 わははははは  
 ワハハハハハ  
 フフフフフフ

 「じゃあ予定どおり、お前らは今年の寮の夏合宿は途中で帰ってくるでいいんだな?」

 「うん。大丈夫、大丈夫。寮長にも言ってあるから」

 「「私たちもよ!」」

 「よし。じゃあ週末の朝6点鍾に東門前な」

 「「はーい!」」

 「「了解!」」

 「「おおっ!」」

 「(ねぇキャロル、やっぱ今年の水着は大胆なのにする?)」

 「(そうね‥‥)」






 そう、この夏は豪華2本立てなんだ。
 毎年恒例、男子寮と女子寮の合同合宿に、初めて学年10傑の仲間の小旅行なんだ。
 バス馬車で冒険の旅なんだよ!

 なんでかって?

 実はご領主様や前ご領主様、モーリスの兄貴ヘンリーさんたちと雑談してて決まったんだ。
 

 留学から帰ってから。俺はご領主様一家と親しくなったんだ。ご領主様一家は俺にとってもよくしてくれるんだよ。

 ヘンリーの兄貴は、「様付けなんかいらないよ。さんか兄貴でいい。
 アレクはモーリスと同じ‥‥ちょっぴり変態な弟と思ってるからね」と言ってくれたんだ。

 「!?ま、まさか‥‥ヘンリーの兄貴、俺たちの秘密を‥‥」

 「クックック。秘密だと思ってるのはお前たちだけだぞ。ああ、でもモーリスには内緒な。知れたらかわいそうだからな」

 「‥‥」

 ワハハハハハ
 わははははは  
 ワハハハハハ 

 「お前たちは変態なところまで仲が良いのぉ」

 「いや先代様。モーリスは変態だけど俺は違います!」

 「「「‥‥」」」







































 「なんでみんな黙るんですか!?」

 わははははは  
 ワハハハハハ  
 わははははは 

 「くっ‥‥」

 そんなご領主様一家との会話の中でバスの話が出たんだ。

 俺が帝都の各地からリゾート地まで走らせるバス馬車構想のことにヴィヨルドの為政者さんたちも興味を示してくれたんだ。

 
 「するとアレクよ、その馬車のばすを定期運行するということだな?」

 「はい先代様」

 「定時になるとバス停にやってくるバスに乗れるんです。最初は予約制にするけど、いずれは老若男女、誰もが自由に移動できる。

 それって画期的ですよね。バスに乗ってる限りは、誰もが安全だって騎士団が大々的に謳ってるところを襲うバカはいませんよ。だって悪いことしたら本人どころか家族までとんでもない目に遭うんだから」

 「父上、アレク君の言うようにそれは帝都民ならではの結束でしょうな。なにより騎士団の絶対な人気。襲う者など誰もいないでしょう」

 「‥‥うちもできるじゃろかアレク?」

 「先代様。ヴィヨルドならできますよ。だって帝国と同じに騎士団の実力も人気もあるんだから。

 まずは領都ヴィンランドとグラシア、サカスを結ぶバス路線を作ったらどうですか?
 なんなら俺が煉瓦道くらい発現しますよ」

 「「父上(お祖父様)?」」

 「アレクよ。お主夏休みじゃろ?さっそく叩き台を作ってみてくれんか?」

 「もちろんです!」

 「そうか!これは楽しみじゃの。ますます我が領は栄えるの」

 「はい!あのー先代様、ご当主様、ヘンリーの兄貴。そのことなんですが、モーリスや学園の仲間連れてっていいですか?」

 「もちろんじゃ。お主も夏休みは楽しみたいじゃろ」

 「はい!」

 「では好きにやってみい!なに、金は気にするな。モーリスも連れてみんなで楽しく遊んでこい」

 「はいっ!」




 ▼




 「モーリス!決まったぞ!俺らの夏休みの予定が!」

 「ん?夏休み?お前、寮の合宿だろ?」

 「違うんだよ!モーリス、セバス。今年の夏は俺らみんなで初の冒険の旅なんだよ!」

 「「冒険?」」

 さっそくモーリスとセバスに夏の大冒険の構想を伝えたんだ。

 「あのな、ヴィンランドからサカスとグラシアを平らな煉瓦道で結ぶんだよ。そして馬車をダンパーとゴムタイヤで改造して‥‥‥‥だからバス馬車なんだ」

 「でな、お前も一緒に行っていいって先代様も当代様もヘンリーの兄貴も許可してくれたんだよ!」

 「マジか?」

 「マジ!」

 「「「やったー!」」」


 そんなわけで、話はとんとん拍子で決まっていったんだ。セーラもセロも参加してくれるから、本当の本当に10傑みんなの小旅行なんだよ!

 あー楽しみだよ!


―――――――――――


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