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第2章 幼年編
700 デニーホッパー村の会議(前)
しおりを挟む「サンデーさん。申し訳ないがもう1日2日、村に滞在してくれんかの?」
「それは?ディル神父様の仰ることですからもちろん構いませんが?」
「あのねサンデーさん。実は今日か明日にテンプル老師、サウザニア学園のケイト先生、隣村ニールセン村からはマモル神父様、ノッカ村からはシスターサリーが来るのよ」
「まぁテンプル先生が!?」
「ええ。そこでもサンデーさんが仰ってくれたことが大きな議題になるわ‥‥」
「‥‥」
「実はね、隣村の人たちからもそんな話がきてるのよ」
「ええっ?」
「お風呂場、宿舎でも‥‥言いにくいことなんだけど、盗難があったの」
こくこく
コクコク
そんな話からわずか1点鍾もせずに。
「久しいのサンデーちゃん」
「テンプル先生!」
「商会もさらに大きくなるの」
「ますます先生のお知恵をお借りすることになります」
―――――――――――
会議に先立って。
サンデーと別れたその日に。
ヨゼフとマリアは教会に呼ばれた。
「「神父様なに用でございますか?
あっ!サンデーさん!?」」
照れ笑いを浮かべるサンデー。
「フフフ。もう少しお世話になりますわ」
「あの子たちも喜びます!」
「2人に紹介しておこう。王国の顧問にして隣のヴィヨルド領顧問も兼任しておるテンプル老師じゃ」
それは白髪で長い髭、長身痩躯のエルフ。これまでの人生、エルフという「高貴な」存在でさえ見たことが稀な2人にとって。親しく口をきく機会があろうとは思いもよらない2人に、自ら握手を求めるエルフの老師である。
「アレク君のご両親、お会いしたかったんじゃよ」
ぎゅっっ
ギュッッ
「ベルナルド・テンプルじゃ。アレク君のお父上、お母上。ようやくお会いできましたな。わしはとても嬉しいわい」
「「テ、テンプル様‥‥」」
動揺のなか、とにとかくにも跪こうとする2人を制したテンプルが穏やかな声色で2人に告げる。
「あーなんも気にせんとよいよい。見てのとおり、わしはただのじじいじゃからの。横におるディルのじじいよりは少しだけ歳上じゃがな」
「老師、少しじゃなかろう。老師がじじいになる前、わしはまだ生まれてもおらんわ」
「そうかのぉ」
カッカッカッ
ワハハハハハ
「ア、アレクの父ヨゼフでございます」
「は、母マリアでございます」
「2人には改めて礼を言わさせてもらおうかの。帝国ではわしの孫娘をアレク君が救ってくれたんじゃ」
「お、お礼などと。もったいないお言葉でございます」
「老師様はアレクをどちらで?」
「なに一昨年前のことかの。サンデーちゃんとアザリア領のアネッポに行く機会があっての。そのときの護衛でアレク君には世話になったんじゃよ。
まあ、それ以来かの。アレク君とはなぜか気が合っての。こんな年寄りを慕ってくれる若者は珍しいんじゃよ。それ以来の仲なのじゃよ」
「‥‥」
「‥‥」
「すみません。テンプル老師様。わしら夫婦はただの農民で何も知らずに‥‥」
「何を言われる!そなたたち2人が育てた息子がどれほど皆に愛されておるのか。まあその末席にわしやディルなどの年寄りもおるがの。ワハハハハハ」
「「‥‥」」
「とにかくじゃ。人の息子に言うことではないが‥‥ようまっすぐに育ててくれたの。2人には深く感謝する」
そう言って深々と頭を下げる老師テンプル。
「も、もったいないお言葉です」
「親として子どもを育てるのは当たり前のことです」
「さすがはアレク君のご両親じゃわい」
こうして初対面の3人の間にも会話が弾んだ。
「さて。あとはケイトかの。まだなのは?」
「はい老師。近隣の聖職者はすぐに来てくれますので」
「アレク君のお父上とお母上も出るんじゃろ、会議には?」
「「はい……。ただなんの話なのか見当もつかず‥‥」」
「そうか、そうか」
「お2人が真面目に日々を暮らしておるのはわしでもわかる。
ただの、少しばかり問題が起きての。
それでこのじじいもきたわけなんじゃよ」
「「??」」
「ああそれとな、後ほどアレク君の弟さんにも会わしてくれんかの」
「ヨハンをですか?」
「ふむ。アレク君の影響で精霊が憑いておるという弟さんをな」
「はい老師様」
―――――――――――
「なんでだよ!」
「溜まったツケをお払いいただけないうちは、今後の飲食はお断り致します」
「なんだとー!」
「これ以上お騒ぎになられるようなら騎士団の方、村の役員の方にお声かけしなくてはいけなりますがよろしいですか?」
「くっ‥‥」
「いこうぜ!」
「覚えてやがれ!」
▼
「なんでだよ!わしらだけ酒場で飲めないって!」
「なんでって。俺ら金払ったことなんてないじゃねぇか」
「そういやそうだな」
ギャハハハハハ
ワハハハハハハ
わはははははは
「しかし困ったな‥‥金か‥‥」
(どっかの家で盗ってくるか)
(風呂場で盗むか)
(直接サンデー商会に盗りに行くか)
―――――――――――
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