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第2章 幼年編
699 優しさ故に危惧される
しおりを挟む「先般のドワーフ組合の皆さまをサウザニアから逃がすというアレク君が受けた指名依頼。
その作戦の折、ヴァルカン様と私は敵から殺されかけたのです」
「「「えっ!?(なんと!?)」」
「ヴァルカン様も私もそれはそれで運命として受け入れておりますが‥‥」
サンデーは目にいっぱいの涙をため,絞り出すように言葉を発するのだった。
「うっ‥‥そ、その場は帝国の冒険者タムラ様が機転を利かして敵から私たちを守っていただいたのです」
「タムラがサウザニアに来ておったか!」
「はい」
「助かった!帝都ギルドのテーラーが万が一を想定して動いてくれておったんじゃな‥‥」
こくこく
「ですがアレク君は、タムラ様がいなければ最悪の結果になっていたんだと‥‥それは見ていられないほど憔悴して‥‥。私たちに何度も何度も謝って‥‥しばらくは見ていられないほどに動揺していました」
「やっぱり‥‥神父様」
「うむ‥‥シスター」
「お2人はご存じでしたの?」
「サンデーさん。聞いておるじゃろうが、あやつは幼いときに父親と自分自身を毒殺されておるからな。
また同じようなことが起こったら。もちろん自分自身もじゃが、自分以外の、あやつが心を寄せる身内が害されたら‥‥」
こくこく
コクコク
「今回ではそれがヴァルカン殿とサンデーさんじゃ。2人は身内も身内、家族みたいに思うておるだろうからな。
そんな2人が万が一‥‥‥‥あの優しい心が壊れたじゃろうな」
「「‥‥」」
「昨夜の子どもたちの話じゃないがの、アレクの深い事情まで知っておるサンデーさん故にの、わしもシスターもサンアレ商会の設立はうれしいんじゃよ。できればそれ以上の関係が生まれてくれればとな」
「ええ。私も心からそれを願って女神様に祈願しております」
「神父様‥‥シスター‥‥ありがとうございます‥‥」
―――――――――――
【 ある男の独白 】
人頭税の増税に始まり、何もかもが高くなり、しかも取り立てや騎士団からの監視も厳しくなったサウザニア。
そのくせ治安は悪くなってきたんだよ。だから、正直嫌気がさしてたんだ。
俺っちは昔からこれ1本で商売してたのによ、このままじゃあもうサウザニアにはいられねぇと思ったのさ。
そりゃ昔のサウザニアは賑わってたさ。辺境、辺境って言われててもみんなに活気もあったのさ。新しい領をみんなで盛り上げなきゃなって、気概が平民の俺たちにもあったからな。
特に休養日には教会の礼拝を終えた領民たちで広場は賑わってたさ。
俺っちの肉串もたくさん買ってくれてたしな。
だいたいツクネは俺っちの店が1番最初だって自負してるよ。
今は亡きお館様のお子のショーン様が俺っちに教えてくれたのが最初だからな。なぜか、どっかの村やヴィヨルドやらのアレク商会などというところが発案ってなってんだもんな。
お館様が亡くなってからすべてが変わっていったよ。もちろん悪い方向にな。
そんなときなのさ。
『あなたも屋台の主人になれる!
詳細は商業ギルドまで』
なになに‥‥ヴィヨルドでは移民も歓迎するっていうじゃねぇか。
昨日「屋台募集」の紙を拾ったんだ。これ、たぶん本物だぞ。領都騎士団の奴らが必死にかき集めてたからやっぱり本物なんだろうな。
ヴィヨルド領領都ヴィンランドは地方からの移住も歓迎するとあったじやねぇか!
よし、決めた!
ヴィヨルドに行くか。
―――――――――――
「お兄ちゃんいつ帰ってくるのかなぁ?」
「もうすぐ夏休みでしょ。夏休みには帰ってくるわよ」
「だがなお前たち、アレク兄ちゃんの手紙は‥‥なんと書いてあるのかわからんからな」
ワハハハハハ
フフフフフフ
キャッキャッ
―――――――――――
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