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第2章 幼年編
697 サンデー、デニーホッパー村を訪れる(前)
しおりを挟む「シルカさん、サンデーさんは?」
「王国内を回ってるっすよ」
「ふーん。そっか‥‥」
しばらくサンデーさんを見ないなぁと思ってたら、サンデーさんはデニーホッパー村へ行ってた見たい。
俺はそれを夏休みに帰省したときに家族から聞かされたんだ。
(あれ?なんか寂しいな)
―――――――――――
「ディル神父様、シスターナターシャ、ご無沙汰致しております 」
「こんな辺境までよくおいでくださったのサンデーさん」
「サンデーさん、ようこそお越し下さいました」
ディル神父とシスターナターシャが和かにサンデーを迎える。
「どうですかな我がデニーホッパー村は?」
「はい。緑も豊か、水も清らかで豊富。堅固な城壁。そして教会を中心とした整然たる街づくり。正直驚いておりますわ」
「「クックック(フフフフフ)」」
「不思議なものです。アレク君と初めてサウザニアの商業ギルドで会ってからもう10年もの月日が経とうとしていますのに。
これまで彼の出身地、こちらのデニーホッパー村にお邪魔する機会がなぜかありませんでした」
こくこく
コクコク
「お伝え致しましたとおり、サンアレ商会を設立することになり、このたびようやくお伺いすることができました」
こくこく
コクコク
「寒村とはまったく対比。辺境とは名ばかり。あまりの充実ぶりに驚いていますわ」
ワハハハ
フフフフ
「アレク君の帝国での活躍と以降のヴィヨルドでの厚遇も‥‥‥‥そんなわけでサンアレ商会を設立することになりました」
サンアレ商会設立に関して、改めて2人に説明するサンデー。
話は和気藹々のうちに進んだ。
「さてサンデーさん。今日は村に泊っていかれますかな」
「はい。店もございますし、みなさまのご迷惑でなければ」
「来客用の宿舎に泊まられると良い。建屋も温泉もアレクが発現したものですからの」
「まあ!」
「カッカッカ。よろしいかなシスターナターシャ?」
「ええ。ちょうど良いですわサンデーさん」
「?」
「サンデーさん。村の宿舎ではご婦人方が日替わりでお泊りになられる方の接待をされてましてね。今日はちょうどアレク君のお母さんの当番なんですよ」
「せっかくサンデーさんが来てくれたからの、今日はアレクの家族とわしらでサンデーさんの歓迎会とするかの」
「ありがとうございます。そのお心遣いのお気持ちがなによりの褒美でございますわ」
その夜。
ディル神父とシスターナターシャ、ヨゼフとマリアの養父母、妹のスザンヌ、弟のヨハン、そこにサンデーを交えて。ごく身内だけのささやかながらも心温まる宴席が設けられた。
「「サンデー様‥‥」」
「様などと!やめてください」
「「ですが‥‥」」
「ただのサンデーです」
「「はい‥‥」」
当初は気後れしていたヨゼフとマリアも気さくなサンデーの気配りもあり、終始和やかな宴となった。
「サンデーお姉ちゃん、あとでお風呂に行こうよ。村の温泉はとっても気持ちいいの」
「ええ、スザンヌちゃん。連れていってね」
「すごいわ‥‥」
温泉の素晴らしさは言うまでもないが。清潔な湯船とマナーが保たれた居心地の良い空間。
節度ある村民の自然な振る舞いに心底感心したサンデーである。
▼
「サンデーお姉ちゃんはアレクお兄ちゃんの大事な人なんですか?」
「えっ!?ヨハン君どうして?」
「あのね、僕に憑いてくれてるウンディーネのディーディーちゃんがね‥‥」
「サンデーお姉ちゃん。弟のヨハンにも精霊さんが憑いたの。お兄ちゃんのシルフィさんの影響だって言ってたよ」
「そう。なるほどね」
「あのねサンデーお姉ちゃん。お兄ちゃんもシルフィさんもサンデーさんが大好きなんだよ」
「えっ!?どうしてヨハン君?」
「だって僕に憑いてるウンディーネのディーディーちゃんが言ってるもん。サンデーお姉ちゃんからはお兄ちゃんとシルフィさんの2人の魔力が僕たち家族と同じくらい感じられるって。同じくらい守ってるって。そんなのは僕たち家族以外では初めてみるって」
「まあ!‥‥うれしいわ‥‥そんなふうに言ってくれるなんてディーディーちゃんにも感謝しなくちゃね」
「ありがとうディーディーちゃん」
ヨハンの肩に座っているだろうディーディーちゃんにむかって挨拶をするサンデー。
サンデーに向かって手を振るディーディーの姿をもちろん見えないサンデーなのだが、手にするグラスに清らかな水が空中から注がれるのだった。
「まぁ!」
「ディーディーちゃんも喜んでるよサンデーお姉ちゃん」
ふふふふふふ
ワハハハハハ
「ねぇサンデーお姉ちゃん」
「なにヨハン君?」
「サンデーお姉ちゃんはお兄ちゃんのお嫁さんになるの?」
「こらヨハン!?いきなりなんてことを!?サンデー様に失礼だぞ」
「そうなの?私、サンデーお姉ちゃんみたいなきれいなお姉さんがほしかったの!」
「こ、こら2人とも!」
「いいじゃないあなた。子どもたちの希望なんだから。もちろん私もそうなったら‥‥うれしいわ」
「あ、あ、あの私‥‥」
サンデーを見つめながら微笑むマリアに真っ赤な顔をしたサンデーがうつむいたのだった。
わはははははは
フフフフフフフ
ワハハハハハハ
「さあお前たち。遅くなったからそろそろ寝なきゃな」
「ええーまだー」
「私サンデーお姉ちゃんと一緒に寝たい!」
「こら、サンデー様に迷惑‥」
「いいわよスザンヌちゃん。今日は一緒に寝ましょうね」
「いーな、いーなぁぁぁ‥‥‥‥」
「クックック。ヨハンはもう半分夢の中だな」
「ええ」
「サンデーお姉ちゃん、明日はお兄ちゃんが作った湖を見に行こうよ」
「ええスザンヌちゃん。楽しみだわ」
楽しい宴は続くのだった。
夢の中にいるヨハンを抱いて帰途に着こうとするヨゼフ夫婦。
マリアがサンデーに声をかけた。
「サンデー様先ほどは失礼しました。あの子は、アレクはまだ子どもだから‥‥
でも勝手ながら母としてサンデー様、どうかアレクを、あの子をよろしくお願いします。この子たちが言うような未来が来たら私たち夫婦はどんなにうれしいことか」
眠るヨハンの頭を撫でながらそう独り言のように言うマリア。
「(マリアさんはいきなり核心をつくからの)」
「(フフフ、ええ神父様)」
こくこく こくこく
「ごめんなさいね。私も少し酔い過ぎてしまいました」
「マリア様‥‥先のことはわかりませんが‥‥そんな未来が来たら‥‥私もうれしいですわ」
「ワハハハハハ。さあ帰ろうマリア。スザンヌもヨハンも寝てるよ」
「あなた‥‥ここは笑うところじゃないのよ‥‥」
「えっ!?そうなのか」
ワハハハハハ
フフフフフフ
わははははは
―――――――――――
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