アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

688 茫然自失の新貴族組

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 【  新貴族組side  】

 「あの平民に1人で来いとはさすがエッセンだよ。考えたな」

 「「「そうだよ!」」」

 「「さすが俺ら新貴族組の参謀だよエッセンは」」

 「だろヒャッハハハー」

 「でどうするんだエッセン大将?」

 「フン。安心しろお前ら。俺は当然次の策も考えてある」

 「「「おぉーーー!」」」

 「次はな、俺ら15人で部屋の四隅にアイツを追い込むんだよ」

 「「「それでそれで?」」」

 「レイピアを正面、下方、上方の3方からアイツに向けるんだよ。15人のレイピアに突き立てられたら逃げられると思うか?」

 「「「思わないよ!」」」

 「「袋のチューラットですよエッセン先輩!」」

 「だろ。奴に逃げ場なんてないからな!」

 「「「おぉーーー!」」」

 「「「すごい!」」」

 「「「さすがエッセン先輩だ!」」」

 「俺の策には失敗なんか絶対ないんだぞ。
 それでも1,000に1つ、10,000に1つ俺らが負けたら、平民のアイツに怪我されられたって学園に訴えればいいんだからな」

 「証言者は俺らだけってことか!」

 「あの平民は1人で来るしかないからな」

 「「「おぉーーー!」」」

 「「「さすが!」」」

 「「「すげえ!天才だ!」」」

 「まぁ秋に備えて、俺らの魔法衣の練習にもなるしな」

 「「「うんうん!」」」

 「お前ら魔法衣着てレイピアを突き刺したことあるか?」

 「いや。俺は魔獣だけだな」

 「「俺もだ」」

 「「俺もまだ奴隷しか刺したことないな」」

 「「僕もです先輩」」

 「だろ。で、おあつらえ向きにアイツは平民の人族だろ。俺らに人を刺す感触の実験台になってもらわなきゃならないだろ?」

 「そこまで考えてるのかエッセン!」

 「「「すげえ!」」」

 「あの平民を倒したあとで、俺らが狂犬団とかいう平民クラブの貴族になってバカな平民どもを治めてやるんだよ」

 「そこまで考えてたんですかエッセン先輩!」

 「まあな」

 「「さすが参謀様!」」

 「「さすが軍師様!」」

 「「俺ら1、2年も先輩に付いてきますよ!」」

 ワハハハハハ
 ヒャッハハハ
 ガハハハハハ
































 新貴族組と模擬戦をやる前に。モーリスと2人で話しながら、校舎の外れにある魔法修練用の教室に向かったんだ。

 「アレク、新貴族と謳う奴らはまた必ず魔法衣を着てくるぞ。だからお前1人に来いって要求してるんだぞ?」

 「だろうなモーリス」

 「魔法衣レベルじゃ相手にもならないってところを教えてやれよアレク」

 「うん。もちろんそれも考えてるよ。ちょっぴり痛いめにも遭ってもらおうかなって。ワハハハハ」

 「お前‥‥その笑顔、やっぱり戦闘狂だな」

 「失礼だなモーリス君」

 「事実だろうが!てかお前も爵位があるってことをアイツらに教えてやりゃいいんじゃないか?」

 「それじゃあダメなんだよ。あいつらは不満に思いこそすれ、決して納得しないと思う」

 「てか納得なんかするもんかよ!領主側の俺からみてもアイツらが納得する絵図なんかぜんぜん見えないぞ。
 父上はわかった上で、ヴィヨルド領として実利を採ってるんだよ。いきなり活況となった辺境にきてもらう人材募集に餌をぶら下げてな」

 「モーリス、大人はそれでいいんだよ。でも子どもはダメだ。良いことも悪いこともちゃんと教えなきゃダメだろ?」

 「お前‥‥昔からそういうとこあるよな。とんでもなく夢想家なところが」

 「長い目でみてあいつらにもいい学園生になってもらわなきゃいけないんだよ」

 「そんなお前の思いなんか1セルテも通じちゃいないがな」

 「モーリス、領主たる者理想を忘れちゃだめなんだぞ?」

 「お前、辺境の3領でも1番のヴィンサンダー領、しかもそこでも有数の寒村出なんだろ?
 なんでそんなことをお前が考えなきゃいけないんだよ!」

 「モーリス言っとくがお前のためじゃないぞ!
 かわいいかわいいモモちゃんが大人になって住みやすい領のためにやってんだからな!」

 「モモはお前なんかの変態にはやらん!」

 「えっ!?くれないのかモーリス?」

 「やるわけないだろ!」

 「あーーーーー残念!」

 ワハハハハハ
 わははははは







 

 「「「ちゃんと来たな平民」」」

 「「「あっ!?」」」

 「1人じゃねぇのか!?」

 「「「約束と違うぞ!」」」

 「「「1人って言ったはずだぞ!?」」」




























 
 「(まさか‥‥)」

 「(このお方は‥‥)」

 新貴族組の人たちはモーリスを呆然と見ていたよ。

 「4年1組のモーリス・フォン・ヴィヨルドだ。俺が立会人をやる」











 「「「モーリス様‥‥」」」

 「このヴィヨルド領  領主一族の者として誓う。
 アレクとお前たちが闘る模擬戦に俺は一切口出しをしない。たとえこいつが死のうがな」

 立会人をやるというモーリスの言葉に、さすがの新貴族組たちの誰も文句を言わなかったよ。しかもモーリス自身からの他言無用宣言に明らかにホッとしてたんだ。

 「先輩たち、魔法衣は禁止されてるのは知ってるんですよね?」

 「ハァ?なんのことだ平民?」

 「その長袖の下ですよ」

 「き、き、着てないにきまってるだろ!」

 「「そ、そんな証拠どこにある?」」

 「「ど、ど、どこに証拠があるんだ!」」

 「「ヘ、平民が高貴な俺たちに命令でもできると思ったのか!?」」

 「「「そうだそうだ!」」」

 「モーリス様。モーリス様は俺たち貴族と平民のコイツを何も見てないし、口出しもされないんですよね?ヘッヘッヘ」

 「フッ」

 モーリスは首を左右に振っただけで何も応えなかったよ。

 「「わかったか平民風情が!」」

 「「平民が貴族に逆らうな!」」

 「もう1度聞きますよ。魔法衣は着てないんですね?」

 「「「‥‥」」」

 「まあいいや。魔法衣を着てないんなら」

 「じゃあさっそく闘りましょう。俺は魔法も使わない。この木剣1本で15人の新貴族様のお相手をしますよ」

 「「「偉そうに上から目線になりやがって!」」」

 「「「平民風情が!」」」

 「モーリス様の手前、せめて殺すのだけは許してやる平民」

 「「そうだそうだ。エッセンの言うように殺すのは勘弁してやるよ平民」」

 コイツらは‥‥‥‥うん、握手するまでもない。1年のときの俺でさえ余裕で勝てる。

 「ちょっと痛い目に遭ってもらいますよ新貴族のみなさん」

 「「受けるー!コイツ寝言言ってやがるぞ!」」

 「「おおよ。寝言は寝て言えだ!」」

 ホント言うと、ちょっぴり腹が立ってんだ。なんで平民平民って人を馬鹿にできるのかなって。しかも自分たちも親が爵位を得るまでは平民だったはずなのに……。

 「始めるぞ。アレク  対  新貴族組の15人の模擬戦を。いいなお前たち?」

 こくこく
 コクコク
 こくこく

 「アレクもいいな?」

 「いつでもいいよ。さて。これが終わったらみなさんは狂犬団に入ってもらいますからね?」

 「俺らが負けるわけはない!」

 「なんとでも吠えてろ犬め!」

 「「「平民の犬め!」」」

 
















































 「始め!」

 ダダダダダッ!

 15人が一斉にレイピア片手に俺を向いたんだ。

 「遅っ!」

 思わずシルフィが吐き捨てたよ。うん、そのくらい遅い……。

 まぁでもいきなり勝っちゃかわいそうだしな。一応コイツらの言うように動いてやるか。

 「「ど、どうだ平民!」」

 ジリジリ‥‥

 「「1歩も動けまい平民!」」

 ジリジリ‥‥

 「「下がるばかりだな平民!」」

 ジリジリ‥‥

 「フン。ついに壁についたな。もう下がれないぞ?どうする平民?」

 「土下座して謝るんなら少し傷つけるくらいで許してやるがな」

 「少しか?違うだろ?」

 「「殺しはしないって程度だろ?」」

 ワハハハハハ‥‥
 ヒャッハハハ‥‥

 「‥‥」

 「なあ、なんか言ってみろよ平民?」





 「聞こえてるのか平民?」





 「ビビって声も出ないのか平民?」





 「お、おい?」





 「な、な、何かいえよ!」







 「し、仕方ない。よ、よし。みんなでコイツを穴だらけにしろ!いくぞ!突け!」

 「「「お、おおーーーーー!」」」

 15人間全員から、魔法衣特有の瞬間的な魔力の発現と移動が感じられたんだ。15人間レイピアに突かれたら怪我くらいじゃ済まないってことわかってるのかな。

 でも‥‥‥‥こいつらのはあまりに遅い魔力の発現……。

 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
















































 「遅い!」

 「「「アッ!」」」

 俺に向けて突き立ててくるレイピアを余裕で目に見ながら、背が地面につくくらいにのけ反ってこれを回避。15人が放った動作の逆。レイピアが戻る動作に合わせて俺から攻撃をしたよ。

 斬ンンンンンンッッッッッ!

 「「「うわわわあああぁぁぁっっっ!」」」

 ドンドンドンドン‥‥

 木剣を横に薙いだだけで、尻もちをつく15人。
 木剣とはいえ魔力を通してるからけっこう痛いはず。しかも破れた魔法衣は機能できなくなつてるはずだしね。

 「「「「えっ!?」」」

 「「「な、なにが‥‥どう‥‥‥‥?」」」

 茫然自失の新貴族組の15人。
 身体に受けた打撲の痛みも遅れて……。

 「「うっ!」」

 「「痛い!」」

 「「痛い痛い痛い痛い痛い!」」
 
 「「ギャーーーッッ!痛いよーーー!」」












 「ヒール水」

 ザアアアァァーーーッッッ!






 「「「えっ!?」」」

 

―――――――――――


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