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第2章 幼年編
678 ヘルメット反対!
しおりを挟むミューレさんとこに行った翌日。学年10傑の仲間に防具の話をしたんだ。けっこう力説したんだよ?学園ダンジョンは危険も多いから防具も万全にして行きたいって。
ここにいる仲間全員、10人でダンジョンに行きたいんだって。
「だからさ、武器だけじゃなくって防具もちゃんと装備したいんだよ。例えばさ、ヘルメットは必須だよな」
「へるめ‥‥なにそれ?」
「あのなキャロル、ヘルメットは頭を覆う鉄製の帽子だよ」
「鉄製の帽子?ダンジョンに潜るドワーフが被ってるみたいなの?」
キャロルの頭に浮かんだのはきっとあれだよ。ダンジョンに潜る戦士タイプのドワーフが被ってる左右から水牛のツノが生えた兜や顔がわからない仮面のような鉄兜。
「それに近いかな。まああそこまで仰々しくはないし、顔は隠さなくてもいいけどな」
俺が考えてるのはシンプルな鉄のヘルメット。
ヘルメットはカッケーよ。シンプルな鉄帽に武骨なマークを付けたやつとかね。俺もそんなカッケーヘルメットが被りたいなあ。
「へるめっと?だって鉄帽でしょ。えーーかっこ悪いわ!」
「「「そうよそうよ!(ダサいわ!)」」」
アリシア、キャロル、シナモンにセーラまで、全員が強く反対したんだ。
「だから違うって。単純な鉄の帽子だよ!」
「嫌よ!そんな鉄の帽子なんかカッコ悪いわ!」
「「「そうよそうよ!」」」
「お前らなぁ‥‥カッコより生命だろうが!」
「嫌よアレク!女子にとってカッコ悪いのは死ぬのと同じくらい嫌なのよ!」
とくにキャロルとアリシアがヘルメットの装着をめちゃくちゃ嫌がったんだ。
「アレク、私はアレクの言うことは信じますが、可愛くないのはやっぱり嫌です!そんな鉄兜なんか神様も許しません!」
「あのなぁセーラ‥」
「「そうよそうよ!ダサいわ!嫌よ!」」
「だーかーらーヘルメットは生命を守‥‥」
「だってダーリン。ダーリンの言うことはわかるけど、へるめっとは‥‥ダサいにゃ‥‥」
「くっ‥‥」
「わかったよ。ミューレさんに相談しといて正解だよ。女子は嫌がるだろうって」
「「「?」」」
「いやアレク、男だって顔が見えないような兜はいやだぞ!」
「だから違うって。ただの鉄兜だって」
あーもう収拾がつかなくなってきたよ……。
「そんなことだろうなって思って昨日ミューレさんに相談しといたんだよ」
「そうなのかアレク?」
「うん。特に女子は決められないだろうからってミューレさんに相談したんだよ」
「クックック。そうか」
「とにかく明日にでもミューレさんとこ行って、いいアイデアもらおうぜ。てかそんでもミューレさんが被れって言ったら女子も諦めるんだぞ!いいなお前ら」
「誰よさっきからミューレさんって?」
「アレク‥‥ミューレさんってヴァルミューレさんのこと?」
「まさか‥‥ヴィヨルドの鍛治の至宝?」
「「「てかミューレさんってホント誰よ?」」」
「‥‥‥‥モーリス、なんとか言ってくれよ!」
「あのなアリシア、キャロル、シナモン。お前ら知らなかったのか?アレクは1年のときからヴァルミューレさんの内弟子みたいなもんなんだぞ」
「「「えっ!?ホントなんだ‥‥」」」
モーリスの言葉はみんな信じるんだよな。くそっ。
「そういやアレク、たしか1年のときそんなこと言ってたわね」
「私冗談だと思ってたわ」
「へぇー。ヴァルミューレ様がミューレさん‥‥」
「なんだよキャロルその目は!まぁいい。あとは俺に任せろよ」
「ダメよアレク!あんたセンスないんだから。いいわ、私も明日ついてく。いいわね?」
「なんだよキャロル。センスって‥‥」
「ひょっとしてアレク、自分のことオシャレだと思ってたの?」
「思ってねーわ!でもさ俺はただ鉄兜を‥‥」
じーーーーーっ
ジーーーーーッ
じーーーーーっ
「‥‥さーせん。キャロルさん明日ぜひついて来てください」
「わかりゃいいのよ」
(キャー!アレクとデートよ!)
「キャロルずるいにゃ。私も行くにゃ!」
(抜けがけはさせないにゃ)
「私も明日は教会の打合せで行けません」
「そうね、私も明日は一緒に行けないからシナモン、アレクとキャロルについていって!」
「アリシアわかったにゃ!」
「「(抜けがけはさせないんだから!頼むわよシナモン)」」
「(アリシア,セーラ任せるにや)」
▼
こうして学年10傑の女子チームに、嫌がる鉄帽をどうすれば被れるかをミューレさんに相談したんだ。
「ミューレさんこんにちはー」
「「ヴァルミューレ様お邪魔します」」
「いらっしゃい。この子たちね。昨日アレク君が話してたのは。あら、本当にかわいい女の子たちね」
「ヴァルミューレ様かわいいって?」
「昨日アレク君が話してたのよ。クラスの4人はみんなかわいいって」
「「はいっ!」」
▼
「‥‥‥‥というわけで防具は大切なのよ」
「ヴァルミューレ様、それでもヘルメットは嫌にゃ!」
「そうね。シナモンちゃんの気持ちもわかるわ」
「私もヘルメットは嫌です!ダサいもん!」
「それもそうよねキャロルちゃん」
「お前らなあ‥‥」
「アレク君、たしかにヘルメットは学園の女の子にはキツいかもね。
そうね‥‥じゃあせめてカチューシャにしたら?」
「えっ!?」
「カチューシャよ。前面にはティアラのようにかわいい造形にすればいいわ。一部でも頭を守ってくれるから、ないよりは良いわね」
「「キャーさすがヴァルミューレ様!」」
「‥‥‥‥わかったよ。じゃあミューレさんの言うとおりにカチューシャ作っとくからな。来週な」
「「やったー!」」
まあたしかにカチューシャなら頭を最低限守れるな。女子の長い髪も束ねられるし。
「「ダサくないわ!(ダサくないにゃ!)」」
こうして俺的にはやや不本意ながらもカチューシャを付けることになったんだ。
「色と形,希望はあるか?」
「そうね‥‥私はカッコいいのがいいわ」
「うちはかわいいのがいいにゃ」
「アリシアとセーラは?」
「アリシアはあの赤い髪に合うのがいいわね」
「セーラはあの青いシスター服に似合うのがいいにゃん」
「よし、わかった。じゃああとは任せろ。
俺は集中したらお前らの相手はできないからな。今日はもう勝手に帰っていいぞ」
【 キャロルside 】
そう言ったすぐに。アレクはミューレ様の近くの火床に座ったまま鍛治を始めたの。
「(ごめんなさいね。キャロルちゃん、シナモンちゃん。せっかく遊びにきてくれたのに、なんのお構いもしなくて)」
「(いえ。ヴァルミューレ様。
ところでアレクはいつもあんな感じなんですか?)」
「(ええ。すごい集中力でしょ。フフフフフ)」
ヴァルミューレ様が言うようにアレクは集中して鍛治を始めてたわ。
一心不乱。それはまるでドワーフさんみたいな姿だったわ。
「(アレク、カッコいい‥‥)」
「(ダーリン、カッコいい‥‥)」
思わず見惚れる私はシナモンと一緒だったわ。
「(ヴァルミューレ様。私たち帰ります。今日はありがとうございました)」
「(2人とも出来上がりを楽しみにしててね)」
「(あの‥‥失礼なんですけど‥‥)」
「(なにキャロルちゃん?)」
「(素人の私でさえ、ヴァルミューレ様の2つ名は知っています。だから‥‥その‥‥お高い‥‥)」
「(なに言ってるの!私はなにもしないわよ。アレク君が好きにやるだけよ。まして彼の大事なお友だちでしょあなたたちは)」
「「(はい!)」」
「(そうそう、アレク君がね、あなたたち4人を好きだって。誰か彼女になってくれないかなぁって言ってたわよ)」
「(私もです!)」
「(うちもにゃ!)」
「「(あっ!)」」
「(フフフフフ。これからもアレク君と仲良くしてあげてね)」
「「はいっ!」」
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