アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

676 カミール・ミョクマル

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 ヴィヨルド領の商業ギルド長カミール・ミョクマルさんは小太りで、あのダンジョン商人みたいな男の人なんだ。先代、当代のご領主様からの信頼も厚い商業ギルド長さん。

 ミョクマルさんは俺がヴィヨルドに来て以来、ずっとよくしてくれてる人なんだ。(てか、ヴィンサンダー領の商業ギルド長なんて今も名前さえ知らないんだけどね)

 「ミョクマルさん。遅くなったけど、これ帝国のお土産」

 「ん?ありがとうアレク君。なんだい?」

 「帝都で作ったお酒だよ。ワインとビールはこっちのと味比べしてみてよ。それとウイスキーと焼酎。調味料の味噌と醤油も入ってるよ」

 そう言って俺は例のマジックバック(極小)からお土産セットを出して、ミョクマルギルド長に渡したんだ。

 「それは!アレク君‥‥まさかマジックバックかい?」

 「うん。帝都のそばにできた新しいダンジョンに騎士団さんからの依頼で行ったんだ。そしたらドロップ品でマジックバックが出たんだ。
 でもさすがにこれはもらえないじゃん。」

 「いや、アレク君が魔獣を倒したんだろ?」

 「うん。そうだけどね‥‥」

 「それは正当な権利があるものなんだよ‥‥‥‥まぁ君のことだからなぁ。それで?」

 「うん。そしたらさ、帝都騎士団長のメイズさんから俺が帰る前に餞別だって、このマジックバック(極小)をくれたんだ」

 「アレク君は帝都でもいいことをいろいろやってきたんだね」

 「いいことかどうかはわかんないけど、楽しかったよ」

 「クックック。そのマジックバックはね、(極小)とは言ってもとんでもなく価値のあるものだからね。
 帝都騎士団さんの君への感謝の思いが伝わるね」

 「あはははは。みんないい人ばっかりだったよ」

 ミョクマルさんにもグランドを含めた帝都での1年を報告したんだ。

 「お酒のことはミカサ商会のカクサーンと帝都ギルドのカサンドラからも手紙で聞いてるよ」

 「そうだ!カサンドラさんってミョクマルさんの親族なんだよね。めっちゃ似てた!」

 「ワハハハハハ。そりゃ似てるよ。あいつも悪いやつじゃなかったろ?」

 「うん。よくしてもったよ」

 「そうかいそうかい。
 さて。せっかくもらったばかりのお土産を開けて申し訳ないが、1つずつ説明してくれるかい?
 なにせカサンドラから自慢タラタラの手紙をもらったから悔しくてね」

 「あははははは‥‥」


 帝都のカサンドラ・ミョクマル商業ギルド長さん。

 俺が醸造から教えたお酒を、工房からカクサーンと2人で瞬く間に作り上げたもんな。

 俺が知らない間にできたアレクワイン工房、アレクウイスキー工房、アレク焼酎工房、アレクビール工房……。

 「これがビールとワイン。ビールとワインはロジャーのおっさんの結婚式披露宴で出したやつと同じだよね」

 「ん。風土の違いだろうね。同じものでもたしかに味わいも異なるな……。ビールはこっちより帝都のほうがコクがあるな。ワインはこっちのほうが香り高いな」

 「俺飲んだことないからわかんないし」

 「ワハハハハハ。それでお酒が作れるんだからおもしろい話だよ」

 「あはははは。古文書の文献どおりに作っただけなんだけどね」

 「そうそう。ヴィヨルドのアレクビール工房とワイン工房は今も絶賛稼働中だよ」

 「あははは。絶賛ね‥‥」

 「それじゃあこのウイスキーと焼酎も作り方から説明してくれるかい?」

 「うん」

 そこからウイスキーと焼酎を飲んでもらいながら、製造法とかをざっくり説明したんだ。

 これはもうシルフィさんのアーカイブ頼りなんだけどね。てか、ウイスキー工場や焼酎工場の見学に行ったなんてぜんぜん覚えてなかったのになあ。

 アーカイブに残ってるのは小さなころ、連れてってくれた爺ちゃんのおかげだよ。

 「それじゃあ早速ヴィヨルドでも工房を作らなきゃいけないな。カサンドラに負けてたまるものか!」

 「あははははは‥‥」

 ミョクマルさんは醤油と味噌についてもすごく興味を持ってくれてたよ。

 「アレク君の帝国留学は実りが大きかったんだね」

 「うん!」



―――――――――――



 後日。ヴィヨルド領商業ギルドの応接室にて。

 ミカサ・ウィンボルグと孫娘サンデー・ウィンボルグがカミール・ミョクマルを訪ねていた。

 「ミカサ会長、サンデーさん。話は聞いたよ。実に良い手を思いつかれたね」

 「ミョクマルよ。そういうことなんじゃよ」

 「ミョクマルさん、そういうことなんです。よろしくお願いしますね」

 「もちろん。ますます大きくなっていくアレク工房には肝心のアレク君がまだ学生で不在だからね。
 しかも今のところはいいが、世の中いい人ばかりじゃない‥‥サンデーさんが共同経営者。これは申し分ない形だよ。
 さっそく登記もしっかりして、真似されないよう、不正されないようにやらせてもらうよ」

 「アレク君とサンデーさん。2人が参画するサンアレ商会‥‥いつミカサ商会を追い越すのか楽しみですなぁ会長」

 「そうじゃのぉ」

 ワハハハハハ
 フフフフフフ
 わははははは


 「そうそう、そういやアレク君が土産に持ってきてくれた酒。ウイスキーに焼酎。あれらもすばらしく旨いものじゃったわ。ミョクマルは飲んだのか?」

 「ミカサ会長、あれは美味かったよ。
 カサンドラにばかり儲けさせたらおもしろくないからな。さっそくこちらでもアレクウイスキー工房と焼酎工房も始めさせてもらいますよ」

 ワハハハハハ
 フフフフフフ
 わははははは



―――――――――――


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