アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

672 トリアージュ

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 避難訓練の目的とその概要についても幹部連みんなで意識の統一を図ったんだ。

 「アレク君、部活費用じゃないから申請しなくていいよ。備品なんだから当然学園で払うよ」

 「あさーす学園長」

 避難先(ここでは修練場)でのテントの確保と鍋や調理器具、簡易トイレの用意。それ用の小屋を建てた。担架は各教室にも用意したよ。
 全部学費で支払うって学園長は言ってくれたんだ。



 幹部連の会議では避難訓練の意義、目的について共通認識、みんなで深く話を詰めたんだ。

 「戦争や地揺れ、ダンジョンから魔獣(魔物)が溢れるスタンピードが
起きたらどうする?」

 「「戦争は当面ないんじゃない?」」

 「「そうだよな。国内でうちの領と闘り合うとこなんてないしな」」

 「「国外でも、中原最強の帝国とは仲良しだし、大国と帝国も絶対戦争はしないだろうしな」」

 「戦争をやる側は相手が予想してないときが1番効果があるぞ?」

 「「「そっか!」」」

 「「地揺れもないんじゃない?」」

 「「俺も(私も)そう思う」」

 「これもいきなり起こるから被害も大きいぞ?」

 「「「そっか‥‥」」」

 「「スタンピードが実際あったなんて話は100年以上前の話はだろ」」

 「「ましてうちは学園ダンジョンだけだしな」」

 「「「だよなぁ」」」

 「「「うちじゃあ、あり得ないよな」」」

 「それでも‥‥戦争と地揺れと同じだぞ?スタンピードがもしあったらどうする?」

 「「「そのための避難訓練ですか?」」」

 「そうだよ。いざというときの訓練がやっといてよかったになるんだから」

 「「「ふーん」」」

 みんなは渋々納得していたよ。だけど‥‥特に俺は、元の世界で地揺れは経験してる……。

 「具体的に詰めなきゃいけないのがダンジョンからのスタンピードだな」

 「闘いますか団長?」

 「「ワーウルフ程度なら1、2年生でもいけますよ」」

 「じゃあコボルトやゴブリンライダーの複数なら?もし10体以上ならどうする?オークも含めて100体溢れたらどうする?」

 「「‥‥避難ですか団長?」」

































 「違う。同時にやるんだよ」

 「「「同時?」」」

 「闘う・避難する・避難を誘導するを同時にやるんだよ」

 「「「?」」」

 「学園ダンジョンから魔物が溢れたら、学園生はもちろんだけど領民に被害が広がるからな」

 こくこく
 コクコク

 「闘うのはワーウルフやゴブリンなら1年でもいけるだろ」

 こくこく
 コクコク

 「でもさっきの話、多数のコボルトやゴブリンライダーなら?あるいはオークなら?」

 「「5、6年の上級生が揃えば勝てると思います」」

 「そうだろうな。幸い学園には武闘祭があるからな。強さの序列ができてるだろ」

 こくこく
 コクコク

 「闘う者、避難する者、避難を誘導する者に分けるんだよ。
 基本、上級生は下級生の盾になり、下級生を誘導して逃がす。
 下級生は上級生の言うことをよく聞く」

 でもここでいい意見が出たんだ。

 「団長、今の学園じゃあ下級生は上級生の言うことを聞かないし、上級生は下級生の盾になるより前に先に逃げないですか?」

 「「(だよなぁ。やたら威張るばっかの上級生もいるもんなぁ)」」

 「「(だよなぁ。自己中のガキも多いよなぁ)」」






























 「そのとおりなんだよ。めちゃくちゃ現実的でいい意見だよな。
 上級生と下級生の信頼関係、こればっかりは普段から意識してないとダメなんだよ。だからこそ狂犬団の基本の考えとして学年、種族、性別を越えて互いを理解していくんだよ」

 こくこく
 コクコク

 「それとな、みんなトリアージュってわかるか?」

 「「「とりああじゅ?」」」

 「「団長なにそれ?」」

 「兄貴わかんね」

 「だよな。トリアージュってのは救命の優先順位をつけることなんだよ」

 「「「?」」」

 「災害が起きて、不幸にして何十人、何百人が一斉に倒れたらどうする?」

 「そりゃ助けるだろ兄貴」

 「じゃあ軽傷者も重傷者も同時に助けてくれって叫んでるところに出くわしたらどうする?」

 「「‥‥」」

 「「みんな助け‥‥‥‥られないよな」」

 「そのとおりだ。回復士の魔力も限られる、薬の数も限られる。ましてハイポーションやエリクサーなんて数えるくらいしかない」

 「「全員は‥‥助けられない」」

 「「そうだよな‥‥」」

 「そこでトリアージュって考えなんだよ。
 医療に明るい奴が率先して、優先順位を決めて、倒れている患者を分けていくんだよ」

 「「「分ける?」」」

 「その人の階級や人種で区別しない。症状で区別するんだよ」

 「「「?」」」

 「専門の人間が、即座に分けるんだよ。色付きの紙を手渡してな。

 赤色は最優先に治療する、黄色は多少遅れても構わない、緑色は軽症、黒色は治療の見込みのない者や既に死んでる。
 
 赤・黄・緑・黒‥‥こんなふうにすればあとに続く回復士や薬師もやりやすいだろ」

 「「「トリアージュ‥‥」」」

 「大規模災害になったのなら、ここまでやらないと多くの生命は救えないんだよ。だからこそのトリアージュなんだよ」

 「「「‥‥」」」

 「医療に興味関心のある医療チームを編成しなきゃね団長」

 「そう。それも最優先事項でな」

 こうして回復士、医師、薬師、看護士、介護士と帝都のあとに続いてヴィヨルドの医療も一気に進むんだ。

 でも、そんな避難訓練やトリアージュの考えがまさか現実になるとは、このとき誰も考えてなかったんだ。




 【  カーマンside  】

 くそっ!クソっ!アレクのガキ、校長と親しいっていうじゃねぇか。
 てことは、俺はまたあの狂犬に邪魔されたのか!あのガキ、どんだけ俺様の邪魔をすりゃ気が済むんだよ!

 身体からは変な色が取れねぇし。マジでゾンビじゃねぇか!
 くそっ!くそっ!くそっ!





 【  ハイルside  】

 くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!

 なんでわいはいつまで経っても1組になれへんのや。
 なんで10傑にもなれへんのや。

 おかしいやろ。わいは地元の教会学校から期待されて学園に推薦入学を果たした、期待の新星なんやぞ!
 そやのになんでや。字が読めへんとか計算ができへんとか関係あらへんやないか!くそっ!

 このままやとあかん。村にも帰れへんし、座学の成績も最悪のままや。このままやったら下手すりゃ5年になれずに退学しなあかんことになるわ。

 なんか変えへんとドンケツのまんまや。ヤバい!

 そうや。
 昨日会うた、なんや知らへんおっさんの話を聞いてみるか。

 タダで最強にしてくれるって言うてたもんな。



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