アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

661 追跡者

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 「おいおいおい!?本当にきやがった!」

 「「「うおおおぉぉぉっ!」」」

 「こりゃマジでついてるぜ!」

 「あの爺さんの言ってたとおりになったぜ!」

 「おおよ。これでお宝は俺らのもんだな」

 「ああ、なんせ話のわかる総督様だからなぁ」

 「グヘへヘ。ドワーフ1匹100,000Gだろ」

 「ガハハ。しかも馬車にドワーフが乗ってなかったら好きにしていいなんてなぁ」

 「「マジで話のわかる総督様だぜ。ギャハハ」」

 「あの馬車はケツに赤い旗がねぇからいいよな。赤い旗がありゃ御用商会の馬車だしな」

 「ドワーフが100匹いたら1,000万Gかよ!」

 「俺ら一気に金持ちだぜ!」

 「「「ガハハハハハ」」」

 ゴロゴロゴロゴロ‥‥















 「来たよシルフィ」

 「そうねアレク」

 「で、どうするの?」

 「んー時間ももったいないし、そのまま行くかな」

 「わかってるわねアレク?」

 「もちろん。最初だけ警告はするよ。
 でも様子見もしないし、邪魔する奴らはすべて倒す」

 「そうね」

 






 前方100メル。相手の顔まで見えて来たよ。

 騎馬が2、徒士が8人。どこからどう見ても戝。野盗の類い。

 「止まれ!」

 先頭の馬車で。
 俺は御者台に立ち上がって声を上げたんだ。

 「「おいおいおい、ホントに1人だぞ!」」

 「あれ狐か?わけのわかんねぇ仮面被りやがって」

 「「でもよ、こりゃ大当たりだぜ!」」

 「「爺さんさまさまだな」」

 卑しい笑みを浮かべながら戝たちが近寄ってきたんだ。
 やっぱり言葉だけじゃ通じないんだよな。

 「何もしなきゃ見逃してやる。
 向かって来るなら容赦なく射るぞ」

 弓に魔法塗料付きの矢を番えて宣言したよ。

 「がんばれーー!アレク君!」

 「もうサンデーさん。出てきたらダメだって!」

 「いいじゃんアレク君」

 すっかりくだけた感じのサンデーさんが馬車の中から這い出してきたんだ。
 
 でもここ、遊び場じゃないんだからね!

 「楽しみね!」

 目をキラキラさせながら、サンデーさんが俺と向かってくる戝たちを交互に見てるよ。

 なんで楽しそうなんだよ!
 アトラクションのシューティングゲームじゃないって!

 「あっ!アレクそれおもしろいわ!
 サンデーって子にも矢を射させなさいよ。
 私が補正するから」

 「マジかよシルフィ?」

 「アレクは自分でやるのよ。2人で競争よ!」

 あゝ。いつのまにかリアルシューティングゲームになっちゃうのかよ!
 しかも2人とも完全に楽しんでるし!

 「サンデーさん。こっちの弓で射ってって。
 俺対サンデーさんとシルフィ組が競争するんだって」

 「なにそれ!すっごくおもしろそう!
 アレク君の精霊、シルフィさんと私が協力してアレク君と競争するのね!」

 「あはははは‥‥」

 シルフィもすっかりサンデーさんに気を許してるよな。

 いそいそとサンデーさんも御者台に立ち上がったんだ。

 「「おい、女もいるぞ!」」

 「ありゃどう見てもいい女じゃねぇか!」

 「「早いもん勝ちだ!」」

 「「「いくぞー!」」」

 「「「ウオオォォォーーッ!」」」

 ダダダダダダダッッ‥‥
 ダダダダダダダッッ‥‥
 ダダダダダダダッッ‥‥

 「あーやっぱり‥‥」

























 「チッ、仕方ないな」

 「そういうことよアレク!」

 「サンデーさん、シルフィが合図と同時に競争だって」

 「いいわよ!」

 「よーい」

 「「どんっ!」」

 シュッッ!

 「ぐはっ!」

 シュッッ!

 「がはっ!」

 シュッッ!

 「ガァッ!」

 シュッッ!
 ザクッッ!

 シュッッ!
 ザクッッ!

 シュッッ!
 ザクッッ!

 シュッッ!
 ザクッッ!
 シュッッ!
 ザクッッ!
 シュッッ!
 ザクッッ!

 「「痛えぇぇぇ!」」

 「「ぐああぁぁぁぁぁ!」」

 「「引け引けー!」」

 「「逃げろーーー!」」
























 「あー面白かったぁ!シルフィさんありがとう!」

 「5対5。イーブンね」

 なんだよその言い方!

 「シルフィが勝負は引き分けだって。あははは‥‥」

 額や首筋に汗が浮かんだサンデーさんに、シルフィが涼やかな冷風を送ったんだ。

 「あら、涼しい!ありがとうねシルフィさん!」








































 「見てたかの?若」

 「ああ爺」

 「恐ろしいほどの弓の腕前よな」

 「爺、あの女のほうは構えからも素人だろ。ってことは‥‥」

 「そうじゃ若。ありゃ風の精霊の加護よの」
 
 「やはりあの仮面の男はエルフの可能性が高いな」

 「ドワーフのヴァルカンの友。エルフのホーク本人、またはその関係者じゃの」

 「完全に難敵だな」

 「では若、どうするのかの?」

 「‥‥‥‥仕事はする。ただ俺はまだ様子を見るぞ」

 「カッカッカッ。善きかな。善きかな。
 敵を知ることが勝利への近道じゃからの」






























 (アレクは気づいてるかしら?ヒューマンが2人見てることに)






 これ以降、日が暮れる前まで。
 誰も襲ってこなかったんだ。

 「じゃあ今日はここで明日の朝まで休憩するからね」

 「「アレク君わしたちはなんもしてねぇがいいのか?」」

 「当たり前じゃん。逆に狭いところに座ってばかりで悪いね」

 「「なんのなんの」」

 「じゃあ今夜は手足伸ばしてゆっくり寝てよ。
 野営食堂カモーン」

 ズズズーーッッ!

 「外堀、内堀もカモーン」

 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!






















 「「「なんじゃこりゃあああぁぁぁ!」」」





 夜ご飯はのんのん村でもらったお米をさっそくいただいたんだ。

 最初は何の料理にしようかなって悩んでたんだ。
 だけどね、今回はいつ何が起こっても対応できるよう、本来の簡単な冒険者メシにしたんだ。

 「ヴァルカンさんお土産の味噌使うよ」

 「構わん。せっかくアレクが持ってきてくれたがな」

 「悪いね」

 「酒も無事に着くまでは我慢じゃ。わしは飲まんぞ」

 「あははは」

 ヴァルカンさんがお土産用セットの中にいれた味噌を使ってくれって言ったんだ。

 だからお米は焼きおにぎりにしたよ。

 焼きおにぎりに塗った少し焦げた味噌はめちゃくちゃそそるからね。おかずがなくてもおいしいんだ。
 
 お土産用の麦味噌は、そんな焼きおにぎりにもぴったりなんだ。

 夜ご飯は持ってきた干し野菜と干し肉を戻した豚汁風の味噌汁と焼きおにぎり。
 めちゃくちゃシンプルな夜ご飯。

 「簡単なメシでごめん。今日と明日、明後日はこんな感じでいくからね」

 「アレク君、この建屋はいったい‥‥」

 「ああこれね、俺がヴィヨルドで住んでる学生寮の食堂なんだ」

 ざわざわ
 ザワザワ

 「あとね、食堂の周りには堀も掘ったから安心して寝れるからね。
 でも明日は夜明け前には動き出すから、食べたらすぐ寝るんだよ」

 「「「‥‥」」」

 「さあ、食べて食べて」

 「「あ、ああ。ご馳走になる‥‥」」

 「「い、いただきます‥‥」」

 大人はおっかなびっくりみたいだったけどね。子どもたちは順応性もあるんだよね。

 きゃーきゃー
 キャーキャー

 すぐに野営食堂の中を駆け回っていたよ。

 「さあ遊んでないで食べろよー」

 「「はーい」」

 もぐもぐ  もぐもぐ‥‥
 モグモグ  モグモグ‥‥


 













 「「父ちゃんうまい!」」

 「「母ちゃんこんなうまいもの初めて食べた!」」

 「「こりゃなんだ?」」

 「「う、うまい!」」

 「「「うまい、うまーーーーーいっっ!!」」」

 みんな無心になって食べてくれたよ。


 「アレク君、お米はすごいわよね。食べ方も本当にいろいろなのね!」

 「でしょサンデーさん」

 サンデーさんもお米に感心しきりだったよ。

 「じゃあ食べたら早く寝ること。
 あとトイレはそこに3つ作ったから。じゃあ俺は外を見回ってくるからね。
 みんなは絶対外に出ないでよ」

 こくこく
 コクコク
 こくこく






































 「すごい土魔法じゃわい‥‥」

 「すげぇな‥‥」

 「爺‥‥」

 「夜襲はいかんぞ若。
 攻める前に気づかれるじゃろうからな。
 しかも当然攻める我らより待ち構える奴のほうが有利じゃからの」

 「そうだな爺」

 「若、やるなら明るくなってからじゃ。しかもメシを食って安心してるときじゃろうて。カッカッカッ」

 「いや。まだ闘らねえぞ爺。なんせまだまだわからんことばかりだからな」

 「カッカッカッ。それでよい若」






 「!」
 「!」

 「おいそこの2人。振り返るなよ。それと、これ以上は近づくな。
 最悪なことになっても仕方ないからな。
 いいな?警告したぞ」






































 「「ハァハァハァハァ‥‥(分からなかった!)」」
 

――――――――――


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