アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

656 サンデー・ウィンボルグ

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 商業ギルドの3階で。
 いつ来るかともわからない俺を待っててくれたのはサンデーさんだった。


 ◯  サンデー・ウィンボルグ

 もはや王都1の御用商会にもなったミカサ商会商会長でもあるミカサ会長(ミカサ・ウィンボルグ)の孫娘。

 自身が営むサンデー商会も王国有数の商会となった。



 ミカサ会長に言わせると、会長本人よりも秀でた才があるというサンデーさん。

 見た目はぜんぜん商売人じゃないんだよ。
 小柄でキュートな見た目なんだ。

 そのくせ、たくさんの人を使い、指示を出していく姿からはまるで想像もできないんだよね。

 商人として天賦の才能を持つのもサンデーさんだし、めちゃくちゃキュートなのもサンデーさんなんだ。
 天は二物を与えたってことだよな。

 「いいじゃねぇか。おめーも変態って才能じゃあ誰にも負けねぇぜ」

 「そこ違う!しかもなんで江戸っ子なんだよ!」

 「あんがとね!」

 「なぜに足利弁?」

 「キャハハハハハ‥‥」

 「最近やけにマニアックだよねシルフィ‥‥」


 


 そんなキュートなサンデーさんは、俺が今まで出会った女性の中でも1、2を争うかわいい系の美女なんだよね。

 「今日はこの部屋は使わないからね。ゆっくり話していって」

 ピーナさんはサンデーさんと俺だけにしてくれたんだ。

 「アレク君お帰り!」

 「ただいまサンデーさん」

 太陽のような、いっぱいの笑顔でサンデーさんは迎えてくれたんだ。

 「アレク君!成長期なのね。もうずっと私よりも高くなってる!」

 サンデーさんは俺の前にピタッと近づいてきて、背伸びをするように身体を預けてきたんだ。

 (ち、ち、近いっ!)

 ショートボブの頭‥‥いや顔が‥‥ち、ち、近い。

 「あわわわっっ!」

 キ、キ、キ、キスできるくらいだよ!
 っていっても俺幼児としかキスしたことないけど。

 サンデーさん無防備過ぎ!めっちゃうれしかったけど。

 「今何セルテ?」

 「175セルテかな」

 「本当にすごいわねー。1年でぜんぜん違うのね」

 「そ、そ、そうみたい‥‥」

 あ~俺の息がかかりそうで呼吸できないよ……。きっと良い匂いなんだろうな。
 あ~なんかうれしいぞ!







 「アレク君とはまた一緒にアザリアまで旅をすることになったわ」

 「うん」

 「テンプル先生がいないのは残念だけどね」

 そつか、テンプル先生がいないのは確かに残念だな。だけど、俺はサンデーさんと2人っきりだからうれしいな。

 べ、べ、べ、別に変なことは考えてないよ!ホントだよ!

 「帝国はどうだった?」

 「うん、とっても楽しかったよ」

 俺はグランドのことからリゾート計画の途中までを一気にサンデーさんに話したんだ。

 それと最後の糸電話までをね。

 サンデーさんは保険の仕組みとリゾートの話に特に興味を持ったみたい。だけど、それは純粋な好奇心に見えたんだ。

 サンデーさんにはお金に対しての興味、好奇心は最優先じゃないんだよね。

 興味や関心を持った仕事の延長として(対価っていうのかな)自然とお金が集まってくるんだよなって改めて思ったんだ。
 俺はそんな姿勢のサンデーさんが大好きなんだよね。

 「サンデーさん、物を作る人もサービスを提供する人も、みんなが物を消費する人だよね」

 「ええ」

 「馬車の御者さんも警備してくれる騎士団さんもみんな消費者でしょ」

 「だからそんないろんなものを作る人やサービスを提供する人が1箇所に集まったら、物もお金もその中だけで回っていくんじゃないかなって思ったんだ」

 「それがりぞおとなの?」

 「うん!」

 元の世界でいう「地産地消」をやりたいってことをサンデーさんに話したんだ。

 だってそんな社会なら差別やいじめもないわけじゃん。

 「アレク君はどんどん大人になっていくわね」

 そう言いながら、サンデーさんは眩しそうな顔で俺を見たんだ。

 「ごめんね、サンデーさん。俺昔からこんな話ばかりしてるよね」

 「フフフ」

 「てかこんな話はサンデーさんにしかできなくってさ。

 そういやここで初めて会ったときも、サンデーさんとミカサ会長に俺、延々とくだらない話ばかりしてたね。まあ今もだけどさ。あははは」

 「アレク君‥‥」

 そう言ったサンデーさんは俺の手をしっかりと包み込んでくれたんだ。

 「くだらない話だなんて思ったことは1度もないわ。

 いつもいつも夢のような話だけど、それはちゃんと現実になっていくじゃない。

 アレク君はみんなを幸せにしてくれる魔法使いさんなんだよ」

 「えっ?あ、ありがとうサンデーさん‥‥」

 そんなふうに励ましてくれるなんて。うれしかったな。
 サンデーさんも俺の最大の理解者の1人なんだ。

 「ごめん。俺の話ばかりして。今回の予定をまだちゃんと聞いてなかったよね?」

 「ええ‥‥今回の予定っていうか作戦はね‥‥」

 サンデーさんが話してくれたのは、ヴァルカンさんたちサウザニアのドワーフさんたちのサウザニアからの脱出作戦だったんだ。

 「馬車で逃げるってことだけは勝手に決めさせてもらったの。

 総督派に邪魔されずにサウザニアを脱出できるなんて普通なら考えられないけど、アレク君ならやってくれるだろうって思って」

 「あははは。ご期待に沿えるよう頑張ります!」

 「具体的にはね‥‥」


――――――――――


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