アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

652 急転直下

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 早速ミョクマル商業ギルド長と、ご領主様のお屋敷に行ったんだ。

 「やあアレク君。たびたびすまんな」

 「いえご領主様。めっそうもございません」

 ご領主様の執務室には先代様もテンプル先生もいたよ。

 「元気そうじゃのアレクよ。ああ先日会うたばかりじゃったな」

 「あははは。元気にしております。先代様もご健勝のようで」

 「ガハハハハハ。健康だけが取り柄じゃからの」

 ガハハハハ
 あはははは

 「実はねアレク君、帝都で君が発現した電話をね、こちらでも発現してほしくてね」

 「はいご領主様。ミスリル糸さえあればご協力致します」

 帝都に敷設した有線電話網について。ヴィヨルド領のご領主様たちは当然のように知ってたよ。なんの説明も要らないくらいにね。
 なんでかな?

 「では後日連絡をさせてもらうよ。よしなにな」

 「はい。では失礼します」

 「アレク君、私はご領主様ともう少し話をしていくから今日はここでな」

 「はいミョクマルさん」

 























 「さて‥‥ミョクマルよ此度の電話、王都の反応を含めてどう思う?」

 テンプル老師がミョクマル商業ギルド長に問いかけた。

 「そうですな。老師の思っているとおりかと‥‥王都は、というか一部不穏分子は我らをますます警戒するでしょうな」

 「ふむ。やはりの」

 「‥‥ミョクマル、すまんが王都に行き、ミカサと話を詰めてきてくれんか。よいの?大殿、若殿」

 こくこく
 コクコク

 「わかりました老師」

 「ヴィヨルドにとっては面倒なことじゃが、なんの二心もないヴィヨルドは電話を直接帝国と取引するのではなく、王都のミカサ商会に発注するとな」

 「老師、世話をかけるな」

 「なに。わしも王都会議にてその旨を周知させておく。つまらぬことで疑われてはかなわんからの」

 「いつもすまんな老師」

 「なんのなんの。とはいっても人族のやっかみ、嫉みはいつの時代も酷いものよな。なぁ先代よ」

 「そう言ってくれるな老師」

 「なに、お主らヴィヨルドの民は馬鹿がつくほど正直じゃからの」

 「「「クックック」」」

 「馬鹿か。違いない」

 「それじゃからわしも王国顧問の肩書を戴きつつヴィヨルド領顧問も引き受けておるのじゃよ。お主らのように腹芸のない馬鹿は好きじゃよ」

 「「「フッ」」」

 「まあどことは言わんがアネキアのように愚行に走る阿呆がおらんとも限らん。
 阿呆が為にこの歳若き王国が乱れることは好ましくないからの」

 「自分の力を過信する若き愚者か‥‥」
 

――――――――――


 ミューレさん(ドワーフのヴァルミューレさん)のところにも帰ったきた報告をしてきたよ。

 「ミューレさんただいま」

 「アレク君!まあ、大きくなって‥‥」

 そう言って俺にハグをしてくれたミューレさん。

 ミューレさんの頭は俺の胸の位置だったよ。

 「本当に大きくなって‥‥」

 そう言いながら背に回した俺の背中を優しく摩ってくれるミューレさん。

 だめだ。俺、ミューレさんにハグされるとなぜか涙腺が崩壊しそうになるんだよね。

 「ミ、ミューレさん、はい帝国土産」

 「ありがとうアレク君」

 「あら!それマジックバックね!」

 「うん」

 「その歳でマジックバック持ちになったのね!それとこれはお酒ね!」

 お酒をとても喜んでくれたミューレさんだったよ。

 「帝国はどうだった?」

 「あのね‥‥」

 行きのグランドの話から途中で終わったリゾートの話などなど。
 帝国留学の話をミューレさんにいっぱいしたんだ。

 俺、なぜかミューレさんにはなんでも話せるんだよね。
 
 「びっくりしたのがヴァンさんの工房だったんだ」

 「えっ?ヴァンの工房がなに?」

 ミューレさん、ヴァルカンさん兄妹にとって帝都のヴァンさんは従兄弟なんだ。

 「あのね、夕方の5点鐘が鳴ったらね、お弟子さんたちが時間と同時にみんな一斉に帰るんだよ。
 
 『お疲れさまー』って。
 たとえそれが仕事の途中でもだよ。信じられないよね?」

 「まあ!」

 「でね、ヴァンさんが言うには10年後はミューレさんとこもそうなるし、ヴァルカンさんとこはさらに10年したらそうなるって」

 「そう……。そうね‥‥」

 そう言ったきり、ミューレさんが黙りこくってしまったんだ。

 俺はてっきりそこから話が盛り上がるって思ってたのに……。

 しばらくして。
 ミューレさんが言いにくそうに口を開いたんだ。

 「あのねアレク君‥‥ヴィンサンダー領はこの1年でますます酷くなっているみたいでね」

 「うん‥‥」

 「ドワーフへの課税、重税も我慢できないくらいになったって‥‥」

 「そっか‥‥」

 「それでね、ヴァルカンから手紙が来たの。
 ヴィンサンダー領のドワーフ組合は、近々ヴィンサンダー領から移転することに決めたって」

 「ええー?!マジ?」

 こくこく

 「ミューレさん、それって大丈夫なの?」

 「大丈夫じゃないでしょうね‥‥」

 だろうな。鍛治に長けたドワーフはどこの領に行っても引く手数多だもんな。

 そんなドワーフが居なくなるって知れたら、あの領主のことだから……。

 「それってヴィンサンダー領のドワーフ組合からどのくらいの人数なの?」

 「実はドワーフ組合の総意みたいなの。
 だから家族、子どもを含めてみんなってことでしょうね‥‥」

 「ミューレさん、ヴァルカンさんたちは誰かに相談してるのかな?」

 「おそらくしてるでしょうね。口の固い味方には。それとここ、ヴィヨルドのドワーフ組合からは全員の受け入れが可能と決まったわ」

 「そうなんだ‥‥」

 公称ではドワーフ組合員の移動、就業の自由は中原全土の国々で認められている。あくまでも公称だけど。

 「‥‥人知れず引っ越さないとたいへんだよね?」

 「ええ‥‥」

 「ミューレさん、俺今からテンプル先生に相談してくるよ」

 「そうか!アレク君はもう老師とも懇意だったわね」

 「うん。ごめんミューレさん、俺もう行くよ」

 「ええ。アレク君に頼むのは変な話だけどヴァルカンのことをお願いね」

 「当たり前だよ!ヴァルカンさんは俺にとっても家族と同じ大事な人だからさ」





 テンプル先生はどこかな。王国に戻ってたら仕方ないけど、まだこっちにいるはずだもんな。

 冒険者ギルドかご領主様のところだよな。とりあえずロジャーのおっさんかタイランドのおっさんに訊いてみよ。

 ミューレさんに会ったその足で冒険者ギルドに向かったんだ。

 「アレク君!ちょうどよかった。マスターたちが待ってるわ。2階に上がって」

 「えっ?!」


 ギルドの2階。
 ギルドマスターの部屋で。

 部屋にはタイランドのおっさん、ロジャーのおっさん、しかも相談したかったテンプル先生もいたんだ。

 「アレク。いいとこに来た。ちょうど学園にお前を呼びにやるところだった」

 「なんだよおっさん?
 てか俺、テンプル先生に大至急の相談があったんだよ!」

 「ほらみい。タイラー、ロジャー」

 わはははは
 ガハハハハ

 「タイミングもバッチリってことか」

 「だな」

 「?」

 タイランドのおっさんが言ったんだ。

 「アレク、ヴィンサンダーの冒険者ギルド、グレンからお前に指名依頼だ」

 「えっ?」

 「ヴィンサンダー領のドワーフたちの護衛をしつつアザリアへ。そこからはドワーフを海路帝国領に移す。未成年の銀級冒険者、お前に初依頼だ」

 「‥‥わかったよ」

 「アレク、あれ被ってけよ」

 「あれ?」

 「お前、ヴィンサンダー領の奴らに見つかったらあんまりよくねぇだろ?」

 「あはははは」


――――――――――


 【  タイガー・ゲージside  】

 領都学園ダンジョンの入口付近。
 領都騎士団詰所にて。


 「アレクが帰ってきたらしいなタイガー」 

 「だってな。帰ってきて早々、狂犬団なんて名前の部活動も始めたらしいぞゲージ」

 「アレクらしいセンスのない名前だギャハハハ」

 「学園生の騎士団体験入隊も始めるんだろ。相変わらずいろいろ始めてるなあいつは」

 「そうだな」

 ワハハハハハ
 ギャハハハハ


――――――――――



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