アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

651 他者理解

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 サミュエル学園長と狂犬団の勧誘方法についても話したんだ。

 「この世界に限らず、人は自分からみて下の者の発言にはなかなか従えないものなんだよアレク君。わかるよね」

 「ですよね学園長」

 「だからアレク君が帝都学園でやったように、自分を最強として認知させる、まぁ強権を行使するやり方もあながち間違ってはいないだろうね」

 「サミュエル学園長。俺は頭の中にある元の世界の多数決や選挙、民主主義というやり方が本当は平和的なんじゃないかなって思ってるんですよ」

 「そうだね。戦後日本人が刷り込まれた平和的な自虐史観だね」

 「はい?」

 「ただね‥‥その平和的な考えを意に沿わぬとする人は予想以上に多いよ。さらには1度手にした権力を手放さない人も‥‥」

 「‥‥ですよね」

 「だから帝国の1代限りとする貴族制も帝国民の高い志も驚くほどのものなんだよ。ある意味理想的ともいえるね」

 「はい‥‥。逆に力づくで弱者を虐げることが正義なんだって真面目に思ってる人がふつうにいますもん」

 「封建的な国家が多数を占めるこの世界で民主主義の導入はいささか早急かもしれないね」

 「ですよね学園長‥‥」

 狂犬団活動報告の名の下に。サミュエル学園長には連日助言をもらってたんだ。

 だって学園長はこの世界の俺にとって1番身近な親戚の叔父ちゃんだから。

 「そうそうアレク君。ご領主様から呼び出しがあったよ。ミョクマルギルド長と一緒に館に来るようにだって」

 「えーっ!?学園長俺なんか悪いことしましたっけ?」

 「ハッハッハ。君はいつもそうだな」

 「だって学園長、昔から偉い人や先生に呼ばれるって嫌なことしかないじゃないですか。褒められるなんて絶対ないし」

 「クックック。そりゃたしかにそうだね」

 「ど、ど、どうしよう?」

 「ハッハッハ。安心していいよ。今回は君が帝都で敷設した有線電話の件だよ」

 「ああ、糸電話のことですか。よかったー」

 「クックック」

 「じゃあ早速ミョクマルさんのところに行ってきます。お土産もあるし」

 「そうだね」
 

―――――――――


 「「ライラ先輩!」」

 「「シナモン先輩!」」

 2人の女子獣人は、狂犬団の中であっという間に人気者になったんだ。だって2人ともまるで偉ぶらないからね。俺の理想どおりなんだ。


 狂犬団の部活動。

 当面は帝都学園の狂犬団に倣って、学内狂犬団と学外狂犬団に分かれて行動をしていくことに決めたんだ。

 学内組はまずは購買の設置から。学外組はパン工房の設置から始めるみたい。

 「購買はこんな感じなんですね団長?」

 「そう。窓口から商品の受け渡しができるようにな」

 「パン工房は厨房の部屋と販売の部屋があればいいんですね?」

 「そうだね。販売の部屋は2階建にすると、1階で買ったものを2階で飲食ができるようにしたらおもしろいよ」

 「なるほど」

 建築に興味のある学園生が建物のデザインを担当するようになったんだ。

 俺が大雑把に箱庭形フィギュアを作ったから、あとのことは彼らに任せたんだ。俺は建屋を発現するだけだよ。
 
 建築に明るい学園生は帝都学園にはいなかったから楽しみだよ。

 調理に興味のある生徒、接客に興味のある生徒も集まったよ。
 
 調理も接客も大人から学べばいいからさ。
 ご領主様のお屋敷に勤める調理スタッフさんやメイドスタッフさんたちが快く協力してくれたよ。

 販売に興味を持った生徒たちには商業ギルドのミョクマルさんが全面的に協力してくれてるよ。

 生産されたモノが商品となって経済を回していく。そんな生きた経済活動をミョクマルさんが差配して学園生に教えてくれることになったんだ。

 このほか、騎士団の仕事から冒険者の仕事まで。それぞれの仕事も実地で体験して学ぶ体制が整いつつある。

 社会見学を兼ねて、学園狂犬団員はその道のプロから学ぶことになったんだ。

 こうした狂犬団の全体スケジュールは、4年1組のステラと2年1組のヨーク君たちが把握してるよ。

 ステラはもちろんだけど、2年1組のヨーク君っていう男子生徒も抜群に頭が良いんだ。

 2人とも武闘や魔法はからっきしなんだけど、頭抜けた頭脳の良さで1組なんだよね。

 そういったわけで、みんなが描く狂犬団の絵に頭脳明晰の2人が正確な数字やスケジュールをのせて、現実のものとして形作っていってるよ。


 ヴィヨルド領狂犬団でも、購買部とパン工房から始めることが決まったんだ。

 「ここでいいかいアレク君?」

 「ありがとうございます学園長。ここに発現します」

 「(イメージは幕度なんだね?)」

 「(はい。2階にイートインスペース付きです)」

 「(ハッハッハ。そりゃ楽しみだ。ちなみに私はチキンタツタが好きだったよ)」

 「(俺はやっぱ月見とナゲットですかね)」

 「(楽しみだよ)」

 ワハハハハ
 あはははは

 通りに面した修練場の隅っこに新たに敷地も借りたんだ。

 パン工房を作っていいよって学園長の許しを得たからね。



ヴィヨルド領狂犬団は順調に動き出したよ。

――――――――――


 【  とある6年生side  】

 気に入らねぇ!なにが名誉帝国民だよ!帝国もダラダラと歳をとり続けてっから世の中が見えてないんだよ!

 ヴィヨルドも一緒だよ。武力ばっか優先したから本当に頭も悪くなったんじゃねぇのか!

 これからは俺らが新しい風を起こさないとな。

 いつまでも下級生が偉そうにしてちゃダメなんだよ。
 獣人が偉そうにしてるの許せないしな。



 【  とある5年生side  】
 
 なにが狂犬団だよ!
 狂った犬には毒エサやって殺せばいいだけだろ。



 【  別の6年生side  】
 
 これからは頭がいいやつだけが生き残るんだよ。体力バカが武闘祭なんてのに熱狂してく時代じゃないんだよ!

 体力バカな幅を利かす時代はもう終わりなんだよ!



 【  さらに別の6年生side  】

 一昨年は俺らのパイセンが粛清されたっていうじゃねぇか。
 パイセンも馬鹿なんだよ。魔法着なんかはここぞというときに使えばいいんだよ。

 武闘祭は実力主義?
 笑わせるなよ。世の中頭のいいやつが勝つんだよ。数で囲めばどうとでもなるんだよ!



 【  カーマンside  】

 同級生や下の奴らで今のやり方に不満を抱いてる奴らを集めるんだよ。

 10人集めて勝てなければ100人集めればいいだけのことなんだよ。

 焦らずに毎年少しずつ増やしていくんだけなんだよ。まあ俺もちょっとばかし焦ってたけどな。

 ようやく俺の息のかかった教師も5人になった。

 いよいよこの秋だな。クックック


――――――――――


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