アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
649 / 722
第2章 幼年編

650 ヴィヨルド領狂犬団

しおりを挟む


 「「アレク、おもしろいことやるんだろ?俺らものるぜ!」」

 「「私たちも参加するね!」」

 「お前らも参加してくれるのか!ありがとう!」


 放課後。顔見知りのの同級生もたくさん集まってくれた。下級生もいたよ。合わせて30人ほどが集まってくれたんだ。もちろん人族、獣人族を問わずに。

 「兄貴、1年1組は狂犬団に全員参加です!」

 シナモンの弟フレッド君もいたよ。

 「「アレク先輩僕ら1年3組もほとんどが参加します!」」

 「「私たち2年8組も全員参加します!」」

 3年以下の後輩たち。幹部希望の子たちが言うには、3年以下の各クラスはほとんどが狂犬団に参加してくれるんだって。
 もちろん同級生たちもほぼ参加してくれてる。

 「みんなありがとうな‥‥」

 だけど‥‥幹部希望も含めて5年生、6年生はいいとこ2、3割程度。幹部希望を含めて、過半数はぜんぜん参加してくれなかった。

 帝国学園と同じ。ある意味当たり前だよね。

 「アレク君ごめんね。6年1組はまだぜんぜん集まらなくて」

 「いえライラ先輩。でも俺はライラ先輩がいてくれるだけでめちゃ‥‥痛い痛い痛い!シナモンなにすんだよ!」

 「だってダーリン。ライラ先輩見るとき、いつも変態みたいな顔するんだもん!」

 「してねーわ!」

 「絶対してるにゃん!」

 じとーーーっ!

 「‥‥いや、本当に‥‥はい。気をつけますシナモンさん」

 「わかればいいにゃん」

 集まってくれた幹部生たちになんだか変な空気が流れたからね。さすがの俺も自重したんだ……。
 

 「じゃあ部室に移ろうよアレク」

 「「移ろうアレク君(移るにゃダーリン)」」

 「そうだなキャロル、シナモン、ステラ。みんな部室に移るぞ」

 「「「部室?」」」

 「ああ。狂犬団の部室はもう確保してある。それと顧問はサミュエル学園長だ」

 おぉー!
 マジか!
 すげぇ!

 「「さあみんなついてきて。アレクもとっとと行く!(ダーリン行くにゃ!)」」

 「はいキャロルさん、シナモンさん」


 学園内の真ん中あたり。職員室近くの2部屋をまるまる狂犬団の部室にしてもらったんだ。
 もちろん顧問のサミュエル学園長が融通してくれたと思うよ。

 「「2部屋あるからいろいろできるな」」

 「「なんか楽しみね!」」

 「「学園長が顧問なんだろ。すげぇよな」」


 4年1組10傑からはキャロルとシナモンにステラ。3人が狂犬団幹部で俺の補佐もしてくれてる。おギンと同じような立位置だね。

 言ってみればヴィンサンダー領領都学園のシャーリーだよ。ありがたいや。

 あとの仲間は忙しいから幹部生としては無理みたいなんだ。っていうかキャロルとシナモンと俺が抜ける分を他の仲間が補ってくれる感じかな。

 あとはライラ先輩が来てくれたのもうれしいな。

 そういやさ、ステラもなんか胸も大きいし、エロかわいいんだよな。4人の美少女?えへへ。

 「そのへんにしてけよ変態」

 「あわわわっ。は、はいシルフィさん」


 「姉ちゃん、キャロル先輩、ステラ先輩、紙配っていいっすか?」

 「お願いにゃ」

 「「ええフレッド君お願い」」

 部室になった教室にみんなが座ったんだ。

 「じゃあみんないいかな?」

 「「了解(ええ)」」





 「まずはここに集まってくれたみんなにあらためて感謝する。
 みんなは狂犬団の幹部希望ってことでいいよな」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「集まってくれてありがとう。
 じゃあ最初になぜ狂犬団が生まれたか。そして帝国で何をやってきたかってことを話すよ。ちょっと長くなるけど聞いてくれよ」

 こくこく
 コクコク
 こくこく

 狂犬団の誕生の経緯からのすべてを話したんだ。できるだけ客観的にね。
 
 なにをしたいのかをみんなに理解してもらわないといけないからね。

 同床異夢だっけ。同じ場所で違う夢みてたらいずれは破綻するってやつ。

 昔爺ちゃんから教えてもらった言葉なんだ。そうならないように。最初が肝心だもんね。







 「じゃあなに、制服が欲しかったってことからこの制服ができたの?」

 「うん。ミチーコ先輩って言う服飾の好きな先輩がいたからな。最初は白い制服にしたかったんだけど俺が食べ物をこぼしまくって制服が汚くなったから今の色になった」

 プッ!
 わはははは
 アハハハハ

 「「「じゃあ購買は?」」」

 「ノートや鉛筆は俺のアレク工房だから仕入が安いだろ。もちろんパンとかも。
 だから市中価格より安く売ってもなんも問題ないじゃん。しかも売るのは学園生と先生だけだし」

 「「「なるほどね」」」

 「幹部生が販売にも慣れてきたら、貧民街の寡婦や仕事のないお年寄りにその仕事をやってもらったんだ。そしたら少しでも参加してくれた家族が救えるだろ」

 「「「なるほどね~」」」

 「パン工房やソーセージ工房もそんな感じなの?」

 「うん。250万人がいる帝都で、俺が帰る前には各区に店ができてたよ。けっこう流行ってたし。
 中には卒業してからそのまま仕事として狂犬団に携わる先輩もいたよ」

 「「「なるほどー」」」

 狂犬団の活動の一環。日にわずかな利益でも継続してるからタダでこの制服ができたこと。
 もちろん制服はデザイン、色からすべて自分たちで決めたこと。

 パン工房やソーセージ工房もできて、学内の購買はもちろん、どの店も毎日たくさんの帝都民で賑わってること。

 「もちろんお金儲けの商売が優先じゃないんだ。
 何かはお金大好きな1年生もいたけど」

 社会に出る前に。大人になるまでの練習としていろいろやるんだってことをみんなに話したんだ。
 
 特に教会の炊き出しや青雲館事業は、利益はないけど大事な社会奉仕の活動だということも話したよ。

 「それと保険はこれ」

 首から下げた認識票を見せながら説明したんだ。

 「「「へぇー」」」

 「残念ながらダンジョンで死んだ成人狂犬団員には保険金が支払われたよ。保険金の第1号だけどね」

 「「「そっか。保険か‥‥」」」

 「俺が死んでも弟や妹は学校に行けるんだな」

 「「ありがたいよな」」

 帝都学園狂犬団の活動にはみんなが納得してくれたよ。

 「アレク、いっぱいやってきたんだな」

 「まあな。てか俺はほとんど何もやってないぞ。
 俺がやったのはきっかけを作っただけだ。
 やってるのは帝都学園の狂犬団員だよ」

 こくこく
 コクコク
 こくこく
 
 「だからさ。これからやるヴィヨルド学園の狂犬団も同じなんだよ。
 何をやっても、何を作ってもいいと思うんだ」

 「もちろん帝都の狂犬団と同じことをやってもいいし。
 分からないことはあっちと連絡をとってやり合ってもらえばいいし」

 「そうそう。来年の夏には帝都学園狂犬団とうちの狂犬団が王都近くのグランドで合同合宿をやる方向で学園長が向こうに打診してるぞ」

 うおーーっ!
 すげーーー!

 「とにかく狂犬団の俺たちは自由だ。
 でもな、その自由には責任もある。
 狂犬団をやらせてくれる学園に対しても、ヴィヨルド領に対してもな」

 「「「‥‥」」」

 「だから制服を着るんだよ。
 制服を着てたら学園生だって一目でわかるだろ。
 誰が見てもわかる学園生。どこにいても変なことできないじゃん。制服はその覚悟の証なんだよね」

 ウオオォォォーーッ!

 「じゃあさ、幹部のみんなはこの紙に思いつくままにやりたいことを書いてくれよ。あとどういう組織にしたらいいかとか、何をやりたいとか、自分は何ができるとか。
 とにかくなんでも書いてくれよ」

 こくこく
 コクコク
 こくこく

 「明日から放課後は書いてもらった紙を元に、何をするかを話し合ってもらうよ」

 「「「了解!(わかりました)」」」

 みんなのなかにヤル気が充満したんだ。

 「でアレク君、私たちはアレク君をなんと呼んだらいい?」

 「えっ!?ライラ先輩、これまでと一緒でいいですよ。アレクと気安く呼んでください」

 「そう。じゃあ団長でいいんだね?
 みんなわかった?」

 「「「はい。団長!」」」

 「「「アレク団長!」」」

 こうしてヴィヨルド学園でも俺は団長と呼ばれるようになったんだ。

 「変態団長な」

 「くっ‥‥」
 


――――――――――


 いつもご覧いただき、ありがとうございます!
 「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...