アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

647 勘違い

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 「アリシア、キャロルごめんな。試験相手の後輩に迷惑かけるから俺は見てるよ」

 「「そうね‥‥」」

 結局新1年生との魔法の模擬戦には出なかった。だって関係ない俺が注目されたら迷惑じゃん。






 そうそう、俺が帝国に留学してる間に。
 モーリスに妹が産まれてたんだ。

 ずいぶん歳の離れた妹だけど、この世界ではふつうによくあることなんだよね。

 モーリスの妹はモモちゃんと言うんだよ。
 今は1歳でおぼつかない足どりでトテトテと歩くし、単語程度なら話すようになったんだ。

 モモ・フォン・ヴィヨルドちゃん。かわいいんだよね。お人形さんみたい。

 くんかくんかくんか‥‥

 「モモちゃん今日もお元気でちゅねー」

 「アレクお兄ちゃん!」

 キャッキャッキャッキャッ‥‥

 「アレクお兄ちゃんでちゅよー」

 「アレクお兄ちゃん!」

 キャッキャッキャッキャッ‥‥

 「あーモモちゃん。オシッコをしましたね。えらいでちゅねー。おしめを替えましょうね。アレクお兄ちゃんが替えてあげまちゅからねー」

 「アレクお兄ちゃんおしっこ!」

 キャッキャッキャッキャッ‥‥

 ((手つきが様になってやがる‥‥))

 「(モーリス様なぜかあの変態が来るとモモ様の機嫌がいいんですよね)」

 「(たしかにな‥‥)」

 放課後は毎日のようにモーリスに‥‥間違えた、モモちゃんに会いにモーリスの家に寄っていたんだ。


 「アレク、どっちが兄かわかんないだろ!」

 「そりゃモーリス、俺だろ。だってこんなに懐いてるんだぞ!」

 「くそっ!」

 「モモちゃんはアレクお兄ちやんの妹になりまちゅかー?それともアレクお兄ちゃんのお嫁さんになってくれまちゅかー?」

 「アレクお兄ちゃん!およめちゃん!」

 「そうでちゅか!お嫁ちゃんでちゅか!」

 キャッキャッキャッキャッ‥‥

 「やだよお前なんかの変態と家族になるの!」

 「変態はお前だろ!」

 「いやお前だろ!」

















 「2人ともだよ‥‥」

 「「なんだよセバス!?」」

 「だから2人とも変態なんだよ!」

 「「えっ‥‥」」


















 「セバス、お前変わったな。やることなすことなんでもモーリスを肯定してたのにな」

 「当たり前だろ!道を踏み外したとき、それを諌めるのが家臣の役目だからな」

 「「‥‥」」

 「やーいモーリス!道を踏み外しやがって!」

 「アレク‥‥聞いてるぞ。お前、せーうんかんって宿舎作って獣人の子ども集めて腹の匂い嗅ぎまくってたらしいな。変態の館を作ったって聞いたぞ」

 「ち、ち、違うんだよ!た、たしかに腹の匂いを嗅いでたけど‥‥変態の館じゃないんだよーーー!信じてくれよ!うっうっ‥‥」

 「(モーリス様少し言い過ぎかと。アレクのやつ泣いてますよ)」

 「(そ、そうだな。言い過ぎたな。それじゃあ話を替えるか)」

 「(はい‥‥)」


 「それはそうとなアレク、学園ダンジョンのことなんだけどな」

 「ああセーラから手紙で聞いたよ。残念だったな。
 でももう1度モーリスの口からも教えてくれよ」

 「ああ。セバスすまんが席を外してくれ」

 「はは、モーリス様」

 モーリスの口から去年の学園ダンジョンのことを準備からじっくりと詳細に至るまでを聞いたんだ。

 もちろん詳細についてはセバス抜きでね。それは10傑でない者には話せない学園ダンジョンの決まりだから。


 「そこはモーリス、お前がダメだ。まだまだだな」

 「マルコはいいな」

 「そこはいいよ」

 「みんなだめだな」

 互いに一切の忖度なし。俺とモーリスの仲はさらに良くなってたからね。互いを親友と言えるくらいに。

 「なぁアレク。お前が1年のときのチームと、去年の俺たちのチームを比べたら。俺たちはそんなに劣っていたのか?」

 「いや‥‥違わないよ。てか俺たちもお前らもそれほど変わんないだろ。たぶんセーラもそう言ってなかったか?」

 コクコク 

 「モーリス、お前とマルコの2人は掛け値無しに強いよ。それは俺が認める。だけどな‥‥」

 「セーラにも言われたよ。『信頼関係が足りない』って‥‥」

 コクコク

 「なあアレク、それって契‥」

 「すまんなモーリス。これだけは同じ年の10傑同士じゃないと話せないんだよ」

 「わかったよアレク」

 「ただなモーリス、俺とお前はもっと‥‥もっと仲良くなれるよ」

 「‥‥わかったよ。今年の秋はがんばろうな」

 「ああ」

 室外に出てたセバスが戻ってきて言ったんだ。

 「モーリス様、アレク。俺も忘れないでくれよ!今年こそは10傑になれるように俺もがんばるから!」

 「「ああ」」











 入学試験。

 あとから聞いたんだけど、入試の剣術ルールが変わってたんだ。

 対人で勝ち抜くやり方からより危険性がないものに。

 武器で大きな怪我をしないように、試験補助の上級生が受験生と模擬戦を3戦。

 上級生が10点満点で点数をつけ、3人がそれぞれ採点した点数の真ん中を採用して順位をつけて、合否を決めてたんだって。

 実技の採点に上級生が参加か。難しいよ。
 だって俺の採点で合否が決まるんだろ。それ俺には無理だよ。だってそれで人の人生が決まるんだから。

 でもまさか。
 その試験の穴をついてくる上級生がいるとはそのときはだれも思わなかったんだ。だって受験生、上級生といえど、誇りあるヴィヨルド領民だから……。

――――――――――

 「「アレク先輩だぞ!」」

 「「ついに見れるのか!」」

 魔法の模擬戦には出れなかったけどシナモンの弟フレッド君との体術は約束どおりに対戦したよ。

 フレッド君は3年前のシナモン同様にとても俊敏だった。まあ俺の敵じゃないけど。

 「よく闘った!よーしよし!」

 猫だからね。シナモンと同じように頭をわしゃわしゃと撫でてあげたんだ。

 「えっ‥‥」


 親が子に。あるいは異性の恋人に。そんな頭を撫でる行為の謂れを今も知らないアレク……。




 【  フレッドside  】

 速っ!マジか!?
 正直目で追いきれなかったんだ。

 俺が人族に背中を取られたなんて!しかもなんなんだよ!動けない!熊獣人クラスの力だよ!くそっ!

 パンパンパンっ!

 「お、俺の負けだ‥‥」

 一瞬でキメられてタップ(降参)したよ。

 そしたらアイツが‥‥いや、アレクの兄貴が俺の頭をガシガシ撫でて言ったんだ。

 「よく闘った!よーしよし!」

 「フレッド君、合格だよ。この速さなら君は体術で上位クラスだ。速さを活かしてこれからもがんばれよ」

 「えっ!?だって俺負けたし‥‥」

 「気にしなくていいよ。たまたま俺は君の3年早く生まれただけなんだから」

 「はい‥‥」

 同級生の幼なじみの獣人たちが言ったんだ。

 「フレッドよかったな。アレク先輩に相手してもらって。羨ましいぞ」

 「「いいなぁフレッドは」」

 「あ、ああ‥‥」

 俺はなんて人に喧嘩を売ってたんだ。
 目が覚めたよ。
 しかもそんな兄貴はシナモン姉ちゃんの彼なのか。てことは俺の身内にアレクの兄貴がなるんだ!マジ俺の兄貴じゃん!












 「アレク兄貴!」

 「へっ?」

 「シナモン姉ちゃんとアレク先輩が一緒になったら‥‥兄貴はや
っぱり俺の兄貴だよ!」

 (一緒?ああ同じクラス、クラスメイトな)

 「そうだねフレッド君」

 なんかさ、急にフレッド君に懐かれたよ。シナモンのときと同じだな。なんでだろ?

 そうだ!そんなことより‥‥

 「フレッド君」

 「なんすか兄貴?君なんて他人行儀はやめてくださいよ」

 「わかったよフレッド。あのな、俺猫の里に行ってみたいんだよね。だからさ、その、夏休みにでも案内してほしいかな?」

 「兄貴、里はこの春になくなったんすよ」

 「えっ?!」

 「俺聞きましたよ。兄貴が種族の差別が大嫌いってことも。里は猫族だけの修行だから差別になるって猫族会議で決まったんですよ。
 それってやっぱ兄貴の影響っすよね?
 だから里は俺らが最後の子どもだったんすよ。
 やっぱ差別はダメっすよね兄貴!」

 「あ、ああ。そ、そうだね。そ、そんな‥‥」































 (くっ。俺にはまだモモちゃんがいる!そうだ!メロンちゃんもいたよ!)

 そうと決まればメロンちゃんにも会いに行かなきゃな!

――――――――――

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