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第2章 幼年編
644 フレッド
しおりを挟むいきなり俺の胸ぐらを掴んで絡んできたのはシナモンの弟フレッドだった。
身長はシナモンと変わらないくらいあるだろうか。160セルテほど。
すらりとした体躯にいかにも豹獣人を思わせる脚の長さと、見るからにわかる体幹の確かさ。
そのくせ顔は幼そうに見えるから獣人特有の早熟性の現れなのかもしれない。
胸ぐらを掴まれたんだけど、あんまり驚かなかったよ。だって俺もこの1、2年で背も伸びたからね。160セルテを下に見れるからさ。
「人族が体術で獣人に勝てるもんかシャーーッッ!」
犬歯(猫歯)を見せ鋭い目つきで威嚇を続けるフレッド。
「しかもなんでシナモン姉ちゃんと仲が良いんだよ!てめーは人族だろうが!」
あーここにもいたよ。他種族を差別することになんの疑問を持たないやつが。
中原では圧倒的に数が多い人族が、その数にまかせて他種族を差別する風潮はたしかにある。
だけど、単純にスペックだけで比べると獣人は人族に勝ることが多いんだよね。
だから起るのは獣人による人族差別。
でもさ、差別感情は悪魔の計略によって生み出されたものなんだから、そんなマイナス感情はなくしていかなきゃいけないんだ。
「ダーリン。フレッドは学園生になるために里から3年ぶりに帰ってきたの。
だからダーリンのことを知らないにゃん!」
「里?なんだそれシナモン?」
「猫族の里にゃん。
猫系のうちらは小さいうちの3年、里で集団生活や戦闘技術を学ぶの。だから里にいたフレッドはダーリンのことを知らなかったの」
「猫の里!?シナモンもいたのか?」
「そうにゃ」
なにそれ猫族の里!?
行きてぇー!めっちゃ行きてぇー!
仔猫がいっぱいなのか!モフモフのくんかくんか天国じゃねぇか!
「ダーリンそんなに(ウチのことが)好きだったのかにゃん!?」
「おぉよシナモン!俺は(仔猫が)めちゃくちゃ大好きだ!?」
だってモフれるんだよ。くんかくんかできるんだよ。好きにきまってるじゃん!
「ダーリン‥‥やっぱりウチのことがそんなに好きだったにゃん‥‥キャーーー」
「(ハンス君‥‥)」
「(トール‥‥)」
「「(お互いますます誤解しまくってるぞ‥‥)」」
「くそっ!なんで人族なんかを身内にしなきゃいけねぇんだよ?!
アレクてめーは許さない!俺の爪で八裂きにしてやる!」
「まあまあフレッド君。お姉さんの言うことをちゃんと聞かなきゃいけないよ。それとアレクお兄さんの言うこともな」
「「「(なんだアレクお兄さんって!?)」」」
「くっ!お兄さんだと……。てめー殺すぞ!」
「そんな物騒な言葉を使っちゃいけないよ。
君は僕のかわいい後輩になるんだからね」
「弟だとーー?!」
「(ハンス、アレクの言い方がキショい‥‥)」
「(セーラ、あいつの目には里の猫系獣人の子どもたちしか映ってないな)」
「(夢見てるのかしら)」
「「(変態モード中だ‥‥)」」
「じゃあ明日のクラス分け試験はアレクお兄さんがフレッド君の相手をしてあげるよ。
だから明日はがんばりなさい」
「くっ!なめやがって!
俺はお前を絶対に許さないからな!学園の試験といえど明日はお前をズタズタに切り裂いてやる!」
「ハッハッハ。その意気やよし!
よろしい。その意気で明日はがんばりたまえ」
「ダーリンうちらの弟をありがとう!」
シナモンが満面の笑みを浮かべてアレクの腕をとる。
「そりゃシナモンの弟だからな」
(仲良くなってあいつに猫族の里まで連れてってもらわなきゃな)
「「じゃあ明日なー」」
「「ばいばーい」」
「「バイバーイ」」
「早く帰って寮長にお土産渡さなきゃ!」
「いいのハンス君?」
「いいもなにも‥‥‥‥なあトール」
「「大丈夫かな?」」
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