アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

641 ヴィヨルドへの帰還

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 帰りの船。
 やっぱり異世界あるあるは何ひとつなかった。
 海賊船もこなかったし、巨大タコも魚人族も攻めてこなかった。
 もちろん嵐もこなかった。

 揺れのない快適な船旅。
 ただただイーゼル艦長のありがたくも長々とした講義を毎日毎日聞かされ続けたんだ。

 「クックック。最後まで災難だったなアレク」

 「くそー!ベックとリリアーナも参加すりゃよかったんだよ!」

 「「嫌だ!(嫌よ!)」」

 「即答しやがって!」

 ワハハハハハ
 フフフフフフ
 わははははは







 「じゃあまた会おうな」

 「「おお(ええ)」」





 王都ではミカサ会長に会いにご自宅に行ったんだけど、残念ながら不在だった。
 だからお土産だけ置いてきたんだ。

 お土産はマジックバック(極小)に入れた帝国土産が入ったクーラーボックス。

 いろいろ試行錯誤した結果、こんな感じでマジックバックに9箱収納できたんだ。


◎  マジックバック(極小)  容量9/9

 ◯  お土産セット9箱(魔力をこめて作った金属箱入)

 ・  ウイスキー  1本
 ・  赤ワイン  5本
 ・  白ワイン  4本
 ・  焼酎  1本
 ・  瓶麦酒  9本
 ・  醤油  1本
 ・  麦味噌  1袋
 ・  豆味噌  1袋
 ・  ソース  1本

 容量が9ということはわかるけど、お酒や調味料を1つにまとめたお土産セットを金属箱にしたら、なんと9箱入ったんだ。

 なぜだか謎だったのは、1つの金属箱に赤ワインと白ワインは合計として9本入ったし、瓶麦酒は9本入ったんだ。なんで?
 わけわかんないよ。

 そんでもさ、小っちゃながま口にこんだけのものが入るんだからね。やっぱマジックバックはすごいよね。


 そうそう、アーカイブからウイスキーや焼酎も作れるようになったし、ワインも既存のワインより断然良質なものができたんだ。

 ただ俺は酒が飲めないからよくわかんないんだけどね。

 お酒を入れる硝子製品も製造できるようになったよ。
 それもあって、アレク工房は帝国内にいくつもできたんだ。

 アレクウイスキー工房、アレクワイン工房、アレク焼酎工房、アレク麦酒工房、アレク醤油工房、アレク味噌工房、アレクソース工房、アレク硝子工房などなど。
 なんかすごくない?

 まあいつものように名前だけで俺はなにもやってないんだけどね。製造元がアレク工房で発売元がミカサ商会って感じかな。
 そんなわけで食に関しては順調に再現できてるよ。

 俺的にほしいのは、あとは野菜のトマトかな。トマトケチャップがあればさらに美味しい料理ができるからね。


――――――――――


 「ピーちゃーん!」

 「シャーーーッッ!」
 (お待たせー狐ちゃん!)

 グランドまではピーちゃんタクシーがあっという間に連れてってくれたよ。

 「ピーちゃん、デーツも乗せてってくれたんだよね。ありがとう」

 「シャーーーッッ!」  
 (帰り、デーツ君が怖くなってたのよ!)

 「へぇーデーツが強くなったんだね」

 「シャーーーッッ!」
 (だから怖くなってたのよ!)」

 「そっかー。レベたゃんみたく強くなったんだ!」

 「シャーーーッッ!」
 (だーかーらー怖いのよ!)

 「そんなに強くなったんだね。これはレベちゃんに感謝しなきゃね」

 「シャーーーッッ!」
 (レベちゃんと同じくらい怖いのよ!?)」

 「レベちゃん並に強くなったんだね!」

 「シャッッッ!」
 (もういいわよ。狐ちゃんの言うとおりよ!)

 ガリガリガリッッッ!

 「痛い痛い痛い。ピーちゃんあたま噛まないで!」


 「そうだピーちゃん、帝都にはカラスをティムしてるやつがいたんだよね。
 俺も動物や魔獣をティムできるかな」
  
 「シャーーーッッ!」
 (簡単よ。ティムしたい相手と仲良くなればいいだけよ)

 「そっか」
 (うーん。やっぱりわかんないなぁ。梟や烏ってやっぱティムだと思うんだけどな)


 




 半年ぶりのグランドはさらに大きく変わっていたんだ。

 帝国、法国、自治領エルフォニアの領事館もできてたし、ヴィヨルド領の領事館も帝国内大使館に間借りしてあった。

 仕事は主にゴムを主体の貿易交渉みたいだね。

 対して王国の領事館はやっぱりなかったよ。

 あとグランドとしては断ってるんだけど、今も戦闘靴と引き替えに領事館を設置したいって国々からの話がたくさんきてるんだって。

 神父様とシスターが常駐の新しい教会もできてたし、ダルク大国が作った子どものための魔法学校もあったよ。

 戦闘靴を手に入れたいという、利権絡みって考え方はいかにも大人的でいやらしいけど、結果的にグランドの人々が平和に過ごせられるのならいいのかもしれないな。

 大国の領事館の存在が犯罪の抑止力として機能するのならいいんだろうね。

 打算もあるだろうけど、帝国、大国、法国、エルフォニア、ヴィヨルドからのグランドへの支援はありがたいなって思ってるよ。 
 まあガキの勝手な思い込みだけどね。



――――――――――


 「き、狐ちゃんごめんね」

 「わ、悪かったアレク」

 「す、すまんかったアレク君」

 「ん?なんで?」

 なぜか姫、コジローさん、マル爺から謝られたんだ。でもさ……

 「あのねー私に妹ができたのよおぉぉ。るんるん♪」

 なぜかレベちゃんだけハイテンションだった。

 「あのさー‥‥みんなの話が見えないんだけど‥‥?」

 スルーしていいのかな?なんとなくみんなもスルーして欲しそうだったんだ。
 だからさ、なんか知らないけどスルーしたんだ。

 「じゃあその件はナシってことで。
 お前どんどん背も高くなってるな」

 「「本当だ!」」

 「でしょー。ようやく175セルテまで伸びたよ」

 「私より低かったのにねー。成長期よね。
 それはそうと狐ちゃん、この沢山の金属は何なの?
 キムが手紙で知らせてきた、いとでんわ?」

 「まさか‥‥アレク、この金属はひょっとして‥‥」

 「そうじゃの‥‥」

 「そう。ミスリルなんだ。さすがコジローさんにマル爺だね」

 「てかお前、ミスリルはとんでもなく高いんだぞ!?」

 「あー大丈夫大丈夫。タダだから」

 「「「はあ?」」」

 「帝国に新しくできたダンジョンがあってね。ミスリル鉱のダンジョンで出てくる魔獣にはぜんぶミスリルが含まれてたんだよ」

 「「「ミスリル魔獣!?」」」

 「うん。で蜘蛛も糸がミスリルだったんだよ。
 だから俺が採ってきたこの蜘蛛の糸はタダだからね」

 「「「なるほど!」」」

 「あとね、この糸電話は帝国の商業ギルドで登録も済ませてあるからね。
 材料もミスリルだから、これだけ大量には帝国の騎士団からしか手に入らないしね。
 俺以外の人が敷設するのはたぶん時間もお金もめちゃくちゃかかるからできないと思うよ。
 だからこれはタダ!」

 「「「‥‥」」」

 「グランド中のどこからでも使用できる糸電話を敷設するからさ。
 これからは警らは2人1組で行けるよ。悪い奴らを見つけたら詰所で待機してた人に応援要請をすればいいんだよ。だから警らも楽になるよ」

 「「「??」」」

 「あははは。わかんないよね。とにかく早速敷設するからさ、明日1日待ってよ」

 俺が糸電話として敷設したのはグランド中の外縁をぐるっと1周電話線(ミスリル蜘蛛の糸)を敷設したもの。

 2、300メル単位である電話ボックスはグランドの警ら隊しか利用できない鍵式のもの。

 電話ボックスから詰所の警ら隊に応援要請ができる仕組みなんだ。

 「じゃあアレク、今夜は俺の家に来るか?」

 「いくいく!ジャネットちゃんに会いに行く!」

 「あら狐ちゃん、妹のリアーナはもう飽きた?」

 「違うよ。本当は2人揃うと最高なんだけどなぁー」

 子ども2人のお腹の匂いか‥‥たまらんなぁ。えへへっ。

 「「「(やっぱり変態だ‥‥)」」」

 





 「ジャネットちゃんアレクお兄ちゃんでちゅよー。元気にしてまちたかー?」

 キャッキャキャ‥‥
 すーはーすーはー‥


 この日はコジローさんの家で1泊泊めてもらってから、翌朝から1日かけて糸電話を敷設したよ。いたずらされないように地中深くに埋めて、電話も鍵付きの箱入式。

 「じゃあ実験するよ。そろそろかかってくるかな?」

 チリーン  チリーン  チリーン‥‥

 呼び出し音は鈴にしたよ。受話器はレトロタイプで受信機は小さな土製スピーカースタイル。













 「しもしもー」

 「しもしもー」

 ウオオオォォーーッ!

 「「「なんだこれ!」」」
 
 「「「すげぇ!」」」



 これで24時間、ゴームの不法伐採も防ぐことができるよね。

 グランドでは大人気となったゴームの木。 
 主要産業の原材料を刈りすぎないように厳重な管理をしているんだ。
 今の生産性を維持しながら刈りすぎないようにきちんと管理をしていくこと。そしたら今後10年20年は大丈夫だよ。

 「ゴーム。次はこのタイヤも控えてるからね」

 ゴムタイヤも中原全土から注文が殺到するだろうな。


――――――――――


 グランドで糸電話の敷設をしたあとは、慌ただしくヴィヨルドに帰ってきたよ。だってもう新学期だからね。

 領都ヴィンランドの東門の前で。
 領都騎士団員さんから入場許可をもらったんだ。
 俺、領都民だし冒険者でもあるからね。ほぼスルーかな?

 「ヴィンランド学園生で冒険者のアレクです」

 「ちょっとまってくれよ‥‥‥‥ああアレク君だね。
 早速だが、ご領主様のところまで寄ってくれるかい?」

 「えっ?!ご領主様‥‥ジェイル様ですか?」

 「そうなんだよ。各門を守護する我々に、君が帰ってきたら、そう告げるように指令がでてるんだよ」

 「お、俺‥‥なんか悪いことしました?」

 「ハハハハ。それはないと思うぞ。だいたい悪いことをした犯罪者なら手枷足枷つけてもらうことになるからね」

 「あはははは。ビビったー」

 「まあそういうわけだ。速やかにジェイル様のところに行ってくれたまえ」
 
 「は、はい‥‥」

 なんだろう?
 俺なんかしたかな?

 「やったじゃねぇか!お前前皇帝の末娘の腹の匂いを嗅いだ変態だろうが!」

 「ううっ‥‥ど、ど、どうしよう‥‥」

 留学時の不祥事でまさかのお咎めか。変態として捕まるのか俺?!どうしよう……。


――――――――――


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