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第2章 幼年編
640 さよならロイズ帝国
しおりを挟む「ありがとうなアレク君」
「ジンさん、こちらこそ。
すごく、すごく世話になりました」
コウメとジンさんともお別れしたよ。
「団長‥‥」
「あーもう泣くなよコウメ。お前女の子みたいにかわいいから、俺ドキドキするだろ!」
「「「ふっ」」」
「ん?」
なぜかみんなから生暖かい目で見られたよ。
在学時から医療を学んでいたコウメは、この後も狂犬団の幹部として老人ホーム、リハビリ病院施設などのすべての医療関係の責任者をやっていくんだ。
そのこともあってジンさんは、狂犬団の活動全般を顧問という形で参画してもらうことになったんだ。
何かあればジンさんがいてくれるから、サラさんも安心だよね。
「アレク君、最後にわしとコウメと握手をしてくれんか?」
「はい?」
「わしらの魔力を覚えておいてくれよ」
「ん?(なんで?)」
「いつか‥‥そうテンプルが言うておる言葉じゃよ。
輪廻が繋がればわかることじゃよ」
「団長‥‥必ず帰ってきてくださいね」
「ああ。絶対帰ってくるからな」
「はい団長!」
「コウメ、あと気をつけろよ。あの子狸はコウメが大好きだからな。
もちろん変なことはしないって思うけど、つきまとう危険性はあるからな」
「ふふふ。はい」
「ソニアもシェールも元気でな」
「「アレクもね」」
――――――――――
武闘祭が終わった日の夜ごはんはいつも以上に静かなご飯だったよ。
クロエもアリサも泣き続けてるし、俺も2人を思うと胸が張り裂けそうだった。
「2人とも大きくなったら俺の村に遊びに来るんだろ。
だからそれまでは強くなれよ。2人で旅行しても危なくないようにな」
「「うっ、うっ、うわああぁぁぁーーんっっ‥‥」」
「メルティーちゃん、クロエを頼むね」
「はいお兄さん」
「いつか村にも遊びに来てよ。弟のヨハンに憑くウンディーネのディーディーちゃんにも会いにさ」
「はい、アレクお兄さん!」
最後の夜は3人並んで川の字で寝たんだ。
アリサもクロエもわんわん泣きながら、俺にしがみついていたよ。
翌朝
サンドイッチを作ってテーブルに置いといたよ。
そしてまだみんなが寝てるうちに家を出たんだ。
だって出発前にしがみつかれて泣かれたら‥‥本当に俺も辛いからさ。
そおーっと家を出る。
玄関先の門扉にはじっとして動かないあいつの魔力を感じられたよ。
「デーツ‥‥」
「‥‥」
「‥‥よくがんばったな」
「ええ‥‥ああ」
「成果はあったんだな?」
「ええ‥‥ああ」
「握手しようかデーツ?」
「ええ‥‥ああ」
なんだろう。こいつ、さっきからずっとええとああを混同してるよな。
魔力量も増えた。なによりこの手は‥‥。
「‥‥よくがんばったな」
コクコク
「妹たちを頼んだぞデーツ。長男なんだからな」
「えっ!?」
「じゃあな」
そう言ってデーツとハグして別れたよ。
去年はぜんぜんチビだった俺もそんなに変わらなくなってきたからね。
「ハァン‥」
「ん?」
こうして1年にわたる俺のロイズ帝国への留学も幕を閉じたんだ。
「「また世話になるよ。ベック、リリアーナ」」
「「ごめん!アレク」」
開口一番。
2人に謝まれたよ?
「ん?どしたの?」
「「デ、デーツ(君)が‥‥」」
「デーツ?デーツがどしたの?」
「「な、な、なんでもないよ」」
「「(ホッ)」」
「さてアレク君、最後だからね。帝国史をしっかりと学ぼうか」
「は、はい‥‥」
――――――――――
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