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第2章 幼年編
636 最後の武闘祭 ③
しおりを挟む「今日は『団長と闘ろう』の初日でーす。
司会は芸術クラブの5年8組のララがお送りしまーす。わんわん♪」
ウオオォォォーーーーーッ!
ララちゃあぁーーーーーんっ!
わんわん わんわん ララちゃん わんわん♪
あっ!いきなり間の手わんわんが始まったよ!俺も参加してぇ!
でもなんだよララちゃんって!しかもケモミミじゃん!尻尾もまん丸のふりふりじゃん!
こ、こ、こ、こんなの反則じゃん!
かわいすぎるわ!
知らんかったぁー!
こんな子が学園にいたなんて!
ムフゥーーーーッッ!
「(アリサちゃん、団長の鼻の穴膨らんでるわ!)」
「(おギン先輩‥‥お兄ちゃんが変態みたいな顔してる!?)」
「「獣人の先輩ガン見してるわ。絶対変態よ‥‥」」
「今日から土曜日まで毎日10戦、団長に闘ってもらいますよぉー!みんなーいいですかぁー?」
「「「わんわーんっ!」」」
「団長もいいですかぁー?」
「わんわーんっ!」
「「「さぶっ!」」」
「1日10戦、団長は誰と闘るのか直前まで知りませーん。団長と闘る人はもう抽選で決まってるからわかってますよねー」
ウオオォォォーーーーーッ!
「じゃあさっそく第1戦から始めますよー。今日の第1戦は5年6年の共同編成、団体名は『オールスター』さんでーす」
「「オールスター?なんじゃそりゃ!」」
わははははは
あははははは
わははははは
「「プッ。オールスターって」」
「「冗談キツいわ」」
わははははは
あははははは
わははははは
そんな周囲の失笑なんかものともせず、胸を張ってる学園生が多数。
この流れは、ついこないだの魔法軍の若者と同じじゃんか。
「では『オールスター』さんに意気込みを語ってもらいまーす」
「俺ら『オールスター』です。ヨロシク!
団長さんよ、あんたに恨みはねぇんだが、俺ら5年6年の上級生が3年のガキにいつまでも負けてたらカッコつかねぇんだよ」
「まぁそういったわけだ」
「「プッ。自分たちをオールスターって言う!?」」
「「マジ冗談キツいわ」」
わははははは
あははははは
あははははは
「ぷっ。では自己PRをお願いしまーす」
「俺ら6年1組から3組の精鋭と、5年1組と2組の精鋭。プラス魔法科。帝都学園上級生オールスターのお出ましよぉ!」
5年6年の「精鋭」と自らを名乗った学園生70人ほどが揃った。みんな胸を張ってるけど……。
わははははは
あははははは
あははははは
あ~気づいてないよ、こいつら。
「では対する団長も一言お願いしまーす」
「お前ら‥‥そのオールバカが70人だったらなんとかなるって思ったんだよな?」
「「「ったり前だろ!」」」
「「てか誰がオールバカだ!」」
「「なめんな!」」
「団長さんよ、今ごろになってルールをちゃんと決めなかったから無効だとか言うなよ」
「1人もしくは1組。これには人数制限なんてないんだからな」
「「そうだぞギャハハハハ」」
「ママー僕怖いでちゅー!」
ギャハハハハ
ワハハハハハ
「だそうですよー。団長さん?」
「あのなオールバカ。仮に、仮にだぞ、万に1つ俺が負けても70人で袋だぞ。それで格好がつくのかよ。安いわっ!」
「「「バ、バカにするな!仮にじゃなくて俺らが絶対に勝つんだよ!」」」
「「「実はビビってんだろ団長さんよ!」」」
ガハハハハハ
わははははは
ギャハハハハ
「え、えーと、この『オールスター』さんはこれまで団長が闘ってきた姿や発現してきたものを見てないみたいですねー。狂犬団でないララでさえ見てるのに。みんなどう思うー?」
「「ララちゃんの言うとおりだー!」」
「「こいつら夢見てるぞー!」」
わははははは
あははははは
わははははは
拡声魔法器を手に俺はさらに言ったんだ。
「一応言っとくぞ。
うちのクラス、3年1組のドンが来年はお前らを蹂躙する。
今いないがデーツもな。お前らこの2人に手も足もでないぞ」
「はぁ?デーツだと?背だけ高いあんなデクの棒、相手にもなんねえ!
ドン?海洋諸国のチビが偉そうなこと言うな!」
「フッ。救い難いバカどもめ。
あともう1つ、夢見てる魔法科のバカども。今の2年、俺の妹のアリサはすでにお前らの遥か上を行ってんだぞ?」
「「「アリサちゃんはかわいいだけだろ!」」」
「「「魔法科をバカにするな!」」」
「バカをバカと言って何が悪い?」
「「「なにをーー!」」」
「第1戦から期待どおりの展開になったよー。ねーみんなー?」
「「バカばっかりだー!」」
「「団長最後にシメたってくださーい!」」
わははははは
あははははは
わははははは
「最後に団長からもう一言いただきまーす」
「オールバカ、なぜ気づかない?
なぜ強者から学ばない?
弱者の自己満足なんてクソの足しにもならないことに早く気づけよ!
オールバカのお前らが夢見てる間に、アポロ校も陸軍も海軍も騎士団も周りの領も、同年代がどんどん追いついてきてるんだぞ?
お前らオールバカのせいで最強の帝都学園の名が廃るんだぞ?」
わははははは
あははははは
わははははは
「「団長ーバカは死ななきゃわかりませーん!」」
「「違いねー!」」
わははははは
あははははは
わははははは
「じゃあララからの質問でーす。
学園長先生、来年以降も帝都で未成年者武闘祭をやるんですよね?」
「やるよララさん」
ウオオオォォーーーーーッ!
「オールバカ70人、今からよく身体で覚えろ。
それと俺の声が届いてる狂犬団員‥‥まだこんなバカがいるのには正直驚いたが、こいつらの末路をよく見とけ。わかったか?」
「「「はいっ!」」」
一斉に発せられる承諾の言葉に、戸惑うオールバカたち。
「「(な、なんだよ?マジか?俺らアウェイかよ?)」」
「「(どうしてだよ?)」」
【 バブーシュカside 】
いよいよアレクがこの家から去る日が近づいたさね。
思えば、この家に来た日から変わった子だったさね。
見たこともないような魔法で家をきれいにするわ、風呂を作るわ、地下室を作るわと驚きっ放しさね。
メシを作らせたらお貴族様が食うようなうまいもんばかりを作ったさね。
何より驚いたのが、言葉も忘れたお人形のクロエ様がかわいくて心優しいお子様になったことさね。
この家に寄りつきもしなかった旦那様の陛下も今ではちゃんと家で朝めしを食うし、夜ごはんには家族が揃うようにもなったさね。
この婆を含めて「家族」と言ってくれるアレクのおかげであたしも救われたさね。
元の廃れたこの家は、なんの喜びもないただ生きてるだけのあたしの心と同じだったさね。
「いいことバブーシュカ。お兄ちゃんがいなくなったら、今度からは私がご飯を作るから。バブーシュカは今と同じよ」
「はい、アリサ様」
「バブお婆ちゃんはクロエと一緒。ずーっとお家にいるんだよ」
「はい、クロエ様」
「まあなんだバブーシュカ、お前はこれからもこの家で働いてくれ。お前も家族だからな」
「はい、旦那様‥‥」
あたしもお料理をちゃんと覚えるかね。
アレクが帰ってきたら驚くように。
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