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第2章 幼年編
630 キムへの手紙
しおりを挟むキム先輩久しぶりです。こんにちは。
(あーやっぱり字がゴブリンに戻ってやがる‥‥)
夏にグランドに遊びに行ったとき、キム先輩がいなかったのは残念でした。
俺は帝都学園でも毎日楽しくやっています。もうすぐ留学も終わるのはちょっと寂しくもあります。
前にも手紙で伝えましたが、入学した日に、ドンとトンの兄弟に絡まれました。
でもそのあと、ドンとトンはなぜか俺を狂犬団という変な名前のクラブ活動の代表に祭り上げました。
今は毎日、そのクラブ活動に精を出しています。
ドンもトンも2人ともいいやつです。
夏休みにドンと前帝国皇帝の息子(俺の弟です)を連れてグランドに修行に行きました。
ドンはマル爺のおかげで一気に強くなりました。
ドンとトンの2人はまじめで帝都内の各教会の炊き出しを休養日ごとに一生懸命やります。
前にキム先輩にはお伝えしましたが、帝都の奴隷商を叩き潰したときにグランドのコジローさんの弟ナジローさんを俺が殺しました。
コジローさんは俺を許してくれましたが、俺は今でも悔しくてたまりません。世の中の悪い奴らなんかいなくなればいいのにって思います。
(アレク、お前のその真っ直ぐな正義感が‥‥俺は心配だよ‥‥)
そうだ!忘れるところでした。
帝国の新しいダンジョンで、高純度のミスリル糸を吐く蜘蛛を捕まえて糸電話を作ったらめちゃくちゃわかりやすい音の電話ができました。
春にヴィヨルドに帰る前にグランドに寄ってこの電話を設置してきます。グランド中、どこからでも電話ができるようにしてきますね。
それと。話は戻りますが、3年後にドンとトンが卒業するとき。
もし2人が狂犬団をそのままやりたいと言ったら、やらしてやってくれませんか。考えておいてください。お願いします。
俺は来年のダンジョンこそがんばって、キム先輩たちと行ったその先へ行きたいです。
ではさよおなら。アレク
(なんだよ、さよおならってクックック)
【 シスターナターシャへの手紙 】
シスターお元気ですか。俺も元気です。
(あら、またゴブリンに戻ってるわ)
早いもので帝国留学もあとわずかになりました。
ロイズ帝国でもヴィヨルドと同じで、周りのいい人たちが俺の好きにやらせてくれました。
前にもお伝えしたとおり、帝国では前の皇帝がオヤジになりその息子や娘が俺の弟や妹になりました。
俺にとって新しい家族ができました。
あと少ししたらお別れですから、正直言うと最近は寂しいです。
帝都の未成年者武闘祭で優勝したから今の皇帝が(ゴリラみたいだから3男ゴリラと呼んでいます。オヤジが次男ゴリラで前の前の皇帝が長男ゴリラです)ご褒美をくれました。
長男ゴリラ以外はすぐに俺の頭をぐりぐりしてくる乱暴者です。
毎月賢人会に顔を出していますが、みんなかわいい爺ちゃん婆ちゃんばかりです。ディル師匠の昔の友だちもいます。
俺は、国家国民のために一生懸命努力してきて、今も国のことを考えている爺ちゃん婆ちゃんたちがいる帝国が羨ましいです。
功績のあった1代限りを貴族にするというジンさんの考えがしっかり身を結んでいるからって思っています。
あれ?なんの話してたっけ?
ああ、3男ゴリラが優勝のご褒美に俺に好きなものをやるって言いましたから、土地をもらいました。
うちの村と畑がまるまる3、4個入る大きな広さの土地です。その周りにあるさらに広い土地も安く貸してくれることにもなりました。
3男ゴリラからはその土地を好きにしていいと言ってくれましたから、帝都からそこまでを結ぶ煉瓦を敷いた馬車道を今作っています。
その土地でうちの村でやってるようなことを帝都学園の仲間や卒業生の狂犬団員と作りたいと思ってます。
敷地内では賢人会の爺ちゃん婆ちゃんたちが安心して暮らせるような宿舎(古い文献に書いてある老人ホームです)を作ってます。
怪我をした冒険者や騎士団さんたちの回復を助ける施設(病院)も作ってます。
賢人会の爺ちゃん婆ちゃんたちが楽しく余生を過ごせる宿舎。
何年かしたら、もっとじじいになった師匠に入ってもらいたいです。そのときはじじいの師匠をおぶって帝国に行きます。
あと、歳をとった教会の神父さんやシスターたち、女神様に奉仕してきた人だけが入れる施設も作りたいと思ってます。
では春には帰ります。さよおなら アレク
(なによ、さよおならって?)
「フフフ」
「どうしたシスターナターシャ。えらくご機嫌じゃの」
「はい。アレク君からきた手紙をみて笑ってましたよ」
「なに!あのバカ、連絡も寄越さんと!」
「まあ便りがないのは良い知らせと昔から言いますから」
「そうじゃの。それであのバカはなんと?わしはあいつのあのゴブリン字が読めんのじゃよ。シスターはよう読めるの。感心するわい」
「そりゃあ3歳からあの子に字を教えていますから」
「それでアレクはなんと?」
「はい。ロイズ帝国の前々皇帝陛下を長男ゴリラ、前ロイズ帝を次男ゴリラ、現アーサー帝を3男ゴリラと呼んで親しくしているそうですよ」
「ワハハハ。なんともあのバカらしいわい」
フフフフ
ワハハハ
アレクからの報告と楽しい昔話は夜遅くまで続いた。
「ではシスター、そろそろわしは寝るからの。最近ますます足腰が痛くてかなわんでの」
「神父様、アレク君が今帝国の賢人会のみなさんのために作っているものがあるんですって」
「ほお、何かの?」
「国や民のために働いてきた英雄のために。終の住処を作っているんですって」
「なに!それはまた‥‥‥‥アレクらしいの」
「ええ神父様。なぜかわかりますか?」
「ん?まさか‥‥」
「ええ」
「‥‥」
「最近足腰が痛い痛いという師匠のためなんですって。もっと歳が経てば‥‥故郷の仲間とゆるやかに過ごしてほしいんですって。
神父様をおぶって帝国に連れて行くそうですよ」
「あのバカ‥‥」
「フフフ。よかったですわ。あの子は真っすぐな心のまま、優しいままに成長してくれて」
「帝都の教会でも奉仕活動をしておるらしいの」
「ええ」
「そんなことを聞いては足腰が痛いなどと老けこんではおれんの。ではわしも明日からまたがんばるとするか!」
「はい神父様」
【 とある農民side 】
「もういい加減にして!あなたのせいであの子は今も領都の学校でいじめられてるのよ!
『どうしてダムを壊した男の娘が村の英雄が資金を出した領都の学校に通えるんだ』って!」
「くっ‥‥悪かったと思ってるよ」
「じゃあなぜ村のみんなに頭を下げられないの?反省してないの?!」
「俺だけじゃない、悪いのは!
最初みんなは水を流そうとした俺に賛同してたんだ!だけどいつのまにかみんな日和りやがって!
どうして俺だけが悪者なんだよ!俺だけじゃないだろ悪いのは!」
「‥‥じゃあなぜあなたの悪事のせいで娘がいじめられるのよ!
言いたくないけど、私もみんなから無視されてるのよ!
どうしてよ!
それこそ娘も私も何にも悪くないじゃない!どうしてあなたのせいで私たちまで辛い思いをしなきゃならないのよ!」
「うるさい!」
「だからみんなに謝ってって言ってるでしょ!」
「うるさい、うるさい、うるさい!
悪いのは俺だけじやない!うるさい!」
ヒョッヒョッヒョ。田舎まできた甲斐がありましたな。
こんな幸せを絵に描いたような村にも甘美な果汁を垂れ流す者がおったとは。
【 グランドにて。デーツ・レベラオスside 】
「「ハァハァ ハァハァ‥‥」」
「いいわよデーツちゃん。その腰のキレ、あなた正真正銘の天才よぉ。アタシの技術もどんどん吸収してるわよぉ!」
「お姉さまのおかげよぉ!」
バチコーンとウインクをするデーツ。
「あらデーツちゃん、あなたアタシよりルージュとシャドーの塗りが綺麗よぉ」
「まあうれしいっ!お姉さまに褒められるなんてあたし感激っ!」
「(なあ姫‥‥アレクはデーツ君のあれ、知ってるのかなぁ)」
「(知るわけないわよ!こんなの知られたら私たちまでビリビリさせられるわよ!)」
「(‥‥だよな)」
「(ええ)」
「「コワッ!」」
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