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第2章 幼年編
616 目的を果たして
しおりを挟む「なあキザエモン。これって帰還の魔法陣じゃん。外に出れるんだよね?」
「そうでごわす。これに乗ると外に出れるでごわす」
「そもそもだけどさ、なんでわかるの?トラップみたいに違う階層に出るかもしれないじゃん?」
「おいが今まで乗ったことのある魔法陣の特徴から、これは帰還の魔法陣で間違いないでごわす」
自信たっぷりにというか、ごくふつうなんだと当たり前の顔をしたキザエモンが言ったんだ。
「えっ?魔法陣に特徴ってあんの?てかこの魔法陣の古代文字をキザエモン読めるの?」
「まさか。古代文字は読めないでごわすよ。ただ帰還の魔法陣には特徴があるでごわす」
「なにそれ?」
「アレク関、魔法陣の外枠を見ればわかるでごわすよ」
バンダルスコーピオンに勝ってから開いた、休憩室にある魔法陣を指差してキザエモンが言ったんだ。
「ほう、特徴とな。わしもそれは知らんぞ」
「僕もそれは初めて聞いたよ」
「「「俺もだ(私もよ)」」」
いつのまにか俺たちの周りにはみんなが集まっていたんだ。
「たしかに休憩室にある魔法陣は帰還するものっていう刷り込みがあるわね」
「「そうよね」」
「でも休憩室には帰還用の魔法陣もあれば先へ進む魔法陣もあるのよね」
「あー俺、前にどこに飛ぶかわからない魔法陣も休憩室にあるって聞いたことがあります」
どこ飛ぶかわからない?なにそれ、コワッ!トラップと同じじゃん。
お腹が減ったにも関わらずなぜか魔法陣談義に花が咲いたんだ。
うーん、今目の前にある魔法陣を見ても特徴はわかんないなぁ。
「えー特徴?わかんねえ。ただの丸い魔法陣じゃん。
特徴‥‥大きさか色が違う?
だいたい魔法陣にはわけわかんない古代文字が描いてあるからよく見てもわかんねぇ」
「がはははは。そりゃそうでこわすな。
アレク関、ここが特徴でごわす」
キザエモンが、指差したしたところ。そこは円形の魔法陣の下部、ちょうど丸時計の6時の位置。外縁がほんのわずかに欠けて見えたんだ。
「ひょっとしてこの欠けたとこ?」
「そうでごわす」
「「「へぇー?」」」
こりゃよほど注意してないと見落とすよ。
「すげえなキザエモン」
「ガハハハハ。何事も経験でごわすよ。ちなみにアレク関、魔法陣の上が欠けてたらどこに飛ぶかわかるでごわすか?」
「えーっとダンジョンの先?」
「そうでごわす。例えば10階層の休憩室に上が空いた魔法陣があればそれは20階層に飛べるでごわす」
マジか!怖っ。でも1回行ったとこへショートカットって思えばアリかもね。
「あと何か知ってるキザエモン?」
キザエモンはダンジョンに関しての知識がものすごく豊富だった。実体験に基づいてるんだろうね。
「魔法陣の四方が欠けてたらどうでごわす?」
「うーん……。まさかランダムでどこに飛ぶかわからないとか」
「そのとおりでごわす。らんだむはわからないでごわすが」
「あははは。それめっちゃ怖いわ!」
キザエモンとのダンジョンは楽しいだろうな。
てか学園のダンジョンにキザエモンが来てくれたらいいのにな。
「なあキザエモン。キザエモンは春からどうするんだ?」
「おいは村の学園でがんばるでごわすよ。ティンギュー村のヨコヅナになるまでは毎日が修行でごわす」
「そっか‥‥(残念!)」
魔法陣の外枠の欠けてるところから飛ぶ方向がわかる。これって大発見だよな。リズ先輩に手紙送らなきゃ。
そういやリゼのやつ、ちゃんとリズ先輩に飴渡したかな?リゼのことだからもしや食ってないよな。
「じゃあキザエモンこの魔法陣に乗ったら安心して外に出られるんだよね?」
「間違いないでごわす」
「てことは‥‥メイズさん、残った食糧全部使ってもいいですよね?」
「ハハハハ。もちろんアレク君の好きにしてくれて構わないよ」
「ありがとうございます!」
休憩室には帰還用の魔法陣まである。食糧は食べきってもいい。
これはもう最後くらいは楽しんでもバチは当たらないよね。
「救助した隊員にも帰ったら契約魔法を結ぶからアレク君は好きにやってくれていいからね」
「はい。じゃあシャワー室用意しますね。今日は男女とも各4台用意しますからね」
キャーキャー
きゃーきゃー
「はぁ?しゃわあ?なんなんだ?」
「ねぇ、なんなの?」
「ダンジョンなのに私たち汚くないでしょ?」
「ええ。それものすごく不思議だったのよ。なんでなの?」
「「「ね~♫」」」
「「「??」」」
「お茶とお水はいつもどおりです。お菓子のポテチもすぐに揚げますからね。のんびりしててください」
「「「アレク君いつもありがとうね!」」」
「「「はぁ?」」」
「ねぇどういうこと?」
「「フフフ。アレク君だもん。ねー」」
「「「ねー♪」」」
「「「??」」」
ズズズーーッッ
「なんだなんだ!?テーブルと椅子がでてきたぞ!?」
「「フフフ。アレク君だもん。ねー」」
「「「ねー♪」」」
「「「!?」」」
ズズズーーッッ
みんなが座るテーブルとは別に。祭壇として発現したテーブルにバンダルスコーピオンをメインにした料理を乗せたんだ。
お供えにね。
お皿と水盃の前には認識票が全部で7枚。騎士団員さん6人と、うちのカール君……。
この世界では死は隣り合わせってことをみんながわかってる。ましてやここはダンジョンだもんね。死に関しての捉え方が元の世界より身近。近しい関係性なんだ。
だからといってもちろん悲しいんだよ。だけど仕方ないってことも理解してるし、死んだら女神様の下に行くってみんなが信じてるんだ。
祭壇の前に全員が整列する。水盃も用意したよ。(てか、お酒はもちろんないからね)
「今般のダンジョン調査。残念ながら亡くなった仲間は‥‥‥‥以上の6名だ。それとポーターからは狂犬団のカール君だ」
「「「‥‥」」」
「メイズ騎士団長より旅立つ仲間に送るお言葉を賜わる。
傾聴!」
ザッッ!
各自手にした刀を胸の前に捧げ持ったんだ。
「君たち7名は我が帝国のためによく務めてくれた。
我ら帝都騎士団、国と民のために日夜努力を重ね、今般志半ばで女神様の下に旅立った諸君を誇りに思う。
我ら一同、これからもさらに真摯に一生懸命生きることを諸君を前に誓う。
いつの日か、僕らもまた女神様の下に行く。そのときまでしばしの別れだ。
ありがとう。そしてさようなら」
「戦友に捧げーーー剣!」
ガチャガチャ
「併せて献盃!」
「「じゃあな」」
「「またな」」
「「先行って待っててくれよ」」
「「向こうでもまた仲良くやれよ」」
「さあゆっくりしようか。頼むよアレク君。ん?アレク君?」
そこには簡素な祭壇を前にただ男泣きをするアレクがいた。
「「「(アレク君‥‥)」」」
「(アレク‥‥」)
「「「(団長‥‥)」」」
【 キースside 】
カール、お前が旅立って‥‥心から寂しいよ。残った俺たちはお前の分も一生懸命生きていくからな。見守ってくれよ。
団長の涙をみて改めて思ったんだ。俺たちは最高の団長が率いる狂犬団に入らせてもらったって。
青雲館にお前のお墓を作るからな。だからカール、これからもずっと一緒だよ。
「アレク関、腹が空いて死にそうでごわす!」
「アレクよ、マヨネーズ料理を食わしてくれるんだろ?」
「「アレク君!」」
「は、はい!よ、よろこんでーー!」
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