608 / 722
第2章 幼年編
609 ゴリラへ一撃
しおりを挟むルシウスのおっさんの高火力火魔法も効かないんだもん。
これじゃあ雷魔法でもゴリラの表面の体毛を焦がすだけかもしれないな。
「契約魔法とはいえ、あまり他人に雷は見せないほうがいいわアレク」
「だよね」
今回のダンジョンに参加する人には俺の発現できる魔法に関して契約魔法で縛ってもらってる。守秘義務って言うの?
とはいえ、自分が発現できる魔法をあまり人に知られるのは良くないもんね。
「なんと!わしの火魔法が効かないのか!?」
ゴリラやオランウータンの銀色の体毛もたぶんミスリル由来なんだろうな。てことは全身がミスリル魔獣の対策もしなきゃいけない。狂犬団の仲間も守らなきゃいけないんだけど、はっきり言って1人だけがお荷物だ。
「耳が、耳が、耳が聞こえねぇーーー!」
叫び続けるバリーさんを半ば無視した狂犬団の2人が、俺を探していたよ。
「あれ?団長は?」
「「どこだ?」」
ゴリラの音対策を2人に告げに来た俺がすっとその気配もろともに消えたからね。
「耳が、耳が、耳が聞こえねぇーーー!」
「ウルセェ!バリー!」
ゴンっ!
バリーの後頭部を叩くメンディー君。
「お前、騎士団さんの仲間にも俺たちにも、みんなに迷惑かけてるのにまだ気づかないのかよ!」
「うるさい!耳が聞こえないんだよ!」
「お前昔からなんにも変わんねぇな!」
「うるさいうるさいうるさい!」
「狂犬団の子たち、どいてくれる?このうるさいバリーの肩と耳だけは治すわ」
「「はい‥‥」」
「ちょっとだけ周囲の警戒をお願いしてもいい?」
「「もちろんです!」」
「バリー、じっとしてなさい。ヒール!」
回復魔法を発現できる騎士団の女の人がバリーさんの肩と耳を治してくれたよ。
「はい。どう?」
コク
「治った?」
コク
「バリーあなたそんなんじゃ‥‥」
「もういいぞ」
頭を左右に振って。手で女子団員さんのその先の言葉を止めたのはジャック副長だった。
「バリー、このあと君はリアカーを曳くように」
それだけを告げたジャックさんは対サル戦に戻っていったんだ。
「‥‥」
戦闘中でもあるんだけど、誰もバリーさんに話さなくなった。バリーさんのボッチが確定したんだ。
――――――――――
学校の体育館の天井あたりの高さ。気配を消した俺は、今ダンジョンの天井に逆さに立っている。
ちょうどキザエモンのいる真上に。
天井に逆さで立つ俺と何気に軽く目線を合わせたメイズさんとジャックさんが頷きながら軽く微笑んでくれたよ。
こくこく
コクコク
目線は動かさず、眉毛と口角だけ上げたキザエモンも気付いてるな。
ルシウスのおっさんはただ目を大きく見張っていたけど。
他の騎士団員さんたちは残念ながら気付いてないかな。
思い出すなぁ。キム先輩が昔こうして天井に逆さに立ってたんだよね。
あのときはとにかく驚いたよ。キム先輩カッケーって。
「でももうアレクにもできるでしょ。キムに感謝よね」
「そうだねシルフィ」
ボコボコボコとドラミングをした魔獣ゴリラが、悠々とキザエモンの土俵に上がったんだ。
「フーッッ フーッッ フーッッ‥‥」
凶悪そうに微笑みながら。もうお前なんか敵でもなんでもないって雰囲気アリアリで。
これから蹂躙してやるぞって余裕ぶっこいてる魔獣ゴリラと再戦のキザエモンががっぷり4つでぶつかった。
ダアアアァァァァンンンッッッ!
今度は押し負けないキザエモンが5分の力でゴリラのぶちかましを受け止めた。
「ウガッ ウガッ ウガアァッ!?」
そのまま魔獣ゴリラの両腕ごとがっちりと締め上げるキザエモンに魔獣ゴリラは動けない!って言ってるんだと思うよ。
「ウガッ ウガッ ウガアァッ!?」
大きさはゴリラのほうが1回りも2回りも上回っているのに。ゴリラの両腕ごとを締めあげた不動のキザエモンが叫んだんだ。
「おいたちの勝ちでごわす!」
すうぅぅっっ
とんっっっっ
勝利を確信したキザエモンが目線を斜め上に上げる。
「アレク関!」
ニカッ
ニコッ
ゴリラの両肩に立った俺はそのまま脇差を抜いてゴリラの片耳を刺突。剣先はそのままもう片耳まで貫いた。
ザクッッッ!
「ウガガガガガッッッ‥‥‥‥」
「離れろキザエモン!」
脇差で耳を突くと同時に。念には念を入れて脇差を通して雷魔法も体内に流し込む。これなら周りの誰にもわからないはず。
ビリビリビリビリビリビリッ‥‥
全身を小刻みに震わせた魔獣ゴリラから白煙が立ち上った。
シユュュュュューーーッッッ‥‥
目、耳、鼻、口。身体の上部にあるすべての穴から焦げ臭い煙が上がったんだ。
ズドーーーーンッッ!
もんどり打って前に倒れる魔獣ゴリラ。
「キキッ!?」
「ギャーーッッ!」
「ギャーーッッ!」
わずかに残ったオランウータンたちサル魔獣たちは、我先に逃げていったよ。
「「キザエモン!(アレク関!)」」
軽くハイタッチした俺たちを見守ったメイズさんが言ったんだ。
「よくやった。急ごう。もうすぐ追いつくよ」
――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる