アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

606 あの日の記憶

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 「なにが起こったのか説明してくれるかい?」

 メイズ騎士団長が、目を覚ましたメンディー君とケント君に聞いたんだ。

 「はい。俺たち狂犬団4人は騎士団さんの、蒼いダンジョンの先にできた新しいダンジョン調査にポーターとして参加したんです」

 「うん」

 「入って何日か、元々の蒼いダンジョンはまったく問題もなかったんです。
 だから、騎士団さんも2人、2人の4人が帰還してるはずなんですけど?」

 「うん。君の言うとおり4人は帰ってるよ」

 「そうですか。よかったです。
 それで新しいダンジョンに入ってから。最初は弱いゴブリンやワーウルフだったんですけど‥‥だんだん出てくる魔獣に苦戦するようになって……」

 これはシルフィの説が当たりっぽいな。学園ダンジョンもだんだん強くなってったもんな。

 「蜘蛛の子が20体くらいまとめて出てきたんです。小さな蜘蛛自体は最悪踏めば大したことないし。
 さすがに蜘蛛の糸に絡まるようなヘタレは俺たち狂犬団にもいませんから」

 「「「‥‥」」」

























 「「「プッ」」」

 みんな必死に笑いを堪えてるよ!

 「そ、そうだね‥‥」

 天然のメンディー君がさらに爆弾を放り込んだよ。

 「てかアレク団長‥‥ここに転がってる人って?」

 「あはははは。なんだろ。蜘蛛の糸に絡まった人みたいな?」

 「は、は、早く解けよこのクソガキーーー!」

 真っ赤な顔をして怒鳴るバリーさん。やっぱ恥ずかしいんだろうな。

 「あははは。ちょっと待っててくださいねバリーさん」

 「「(バリー?)」」

 「「(そうだ!バリーだよ!)」」

 メンディー君とケント君が頷き合ってたから知ってるのかな。

 転がるバリーさんの糸も解いたんだ。

 「ハァハァハァハァ‥‥遅い遅い遅い!早く助けろよクソガキ!」

 「あははは。さーせん」

 あーサンキューの一言さえもないんだなこの人。

 「「ちょっ!?助けてもらったのに‥」」

 「2人とも」

 言わなくていいと首を左右に振ったんだ。

 「「はい団長‥‥」」


 「それで?」

 「ああ、すいません。話の腰を折りました。
 蜘蛛の子20体と会敵したときなんです。
 後ろから矢が飛んできたんです」

 「「「矢?」」」

 「「「えっ?」」」

 「騎士団さんがすぐに矢を叩き落としたんですけど、そのまま一気に蜘蛛と乱戦模様になって。
 そのとき、俺の足が斬られました」

 「斬られた?蜘蛛に?」

 「いえ、刀にです」

 「「「‥‥」」」

 「それで騎士団さんがすぐにこの場を離れるようにって。
 満足に歩けない俺をケントが抱えてくれたんですが、そのときに2人とも蜘蛛の糸に捕まってしまって」

 「うん‥‥」

 「蜘蛛は捕まってもすぐに殺されないからって騎士団さんが言って、あとですぐに助けにくるってみんなが離れたのが‥‥記憶の最後です」

 うん。判断に間違いはないな。てか斬られたって誰に?

 「斬ったのは?」

 「わかんないんですけど、俺にはゴブリンに見えたんですよね‥‥まさかって思いますけど‥‥」

 
























 あの日の忌まわしい記憶が蘇ったんだ。俺は思わず声に出していたんだ。

 「ゴブリンソルジャーだ」
 


 ◯  ゴブリンソルジャー

 ゴブリンの上位種。二足歩行。80~100㎝前後。
 人族3歳程度の容姿に近い。
 対人戦のみに特化した危険度の高い魔獣である。人並みの知恵がある。
 当初は青銅級冒険者レベルではあるが、対人戦を積む毎に能力が向上するため、出来うる限り速やかに駆除する必要がある。
 永く対人戦を生き延びたゴブリンソルジャーはゴブリンサージェント(軍曹)・ゴブリンキャプテン(大尉)・ゴブリンコロネル(大佐)・ゴブリンジェネラル(将軍)へと進化をする。食用不可。



 「メイズさん。最初の作戦どおりに急ぎましょう。ちょっとマズいです」

 「あ、ああそうだね」

 「「アレク君?(アレク関?)」」

 「歩きながら話します」



 シルフィの提案どおりにメイズ騎士団長さんが宣言したよ。

 「じゃあここからはバリーを斥候に。狂犬団員さん2人はバリーの補佐をして進んでもらうよ。いいね」

 「「「はいっ!(はぁ?)」」」

 「「(団長?)」」

 メンディー君とケント君が聞いてきたよ。

 「(いーの。いーの。詳しいわけはあとで話すから。悪いけど2人とも斥候やってね)」

 「「(わかりました)」」


 「いいねバリー。斥候の君は後ろの本隊に話しかけたりしないこと。
 後ろの僕たちと接点をもたれないようにするんだよ。必ずね」

 「了解です!」

 めっちゃ明るい声でバリーさんが即答してたよ。



 【  バリーside  】

 メイズ団長もようやく俺様の力を認めてくれたな。
 ヨッシャー!これからは俺様の時代だ!
 あのガキにもわからせてやるよ!俺様の実力ってやつを。




 「とにかく急いでください。何かあったら、後ろから俺が弓で護りますから」

 そう言ったんだけどね……。
 
 「うるせーガキ!てめーの援護なんて要らねぇんだよ!黙ってついてきやがれ!
 ここからは俺とこの手下だけで充分だ!なぁ手下ども?」

 「「えっ?!手下って俺たち?」」

 メンディー君とケント君が声を上げたんだ。

 「お前らしかいねぇだろ冒険者め!」

 「だってお前、バリーだろ?もちろん俺たちのこと覚えてるよな?」

 「はぁ?騎士団の俺様になんて口聞きやがる‥‥‥‥」
























 「お前ら‥‥メンディー、ケント‥」

 めちゃくちゃ気まずい顔してるバリーさんだったよ。

 「アレク団長、俺たち東区生まれなんですよ。バリー、コイツも同じ初級学校出身なんです。
 俺たちは帝都学園に合格して、コイツは落ちて。たしかアポロ校も落ちたよなバリー?
 てかあれからだから6年?7年ぶりだよなバリー」

 「クッ‥‥」








 「まあいいよ。俺たちはアレク団長の指示どおりにお前について斥候やるだけだ。そうですよねアレク団長?」

 「うん。とにかく急いでね」

 「「わかりました」」

 「行くぞバリー。お前も騎士団員になったんだろ?だったら前みたくみんなに迷惑かけんなよ」

 メンディー君天然だから普通にディすってるよ……。

 「「ほらバリー急げ!」」


――――――――――


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