アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

598 ワクワクが止まらない

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 左肩から下げるのは弓矢。腰には脇差と小袋。小袋には特製アレク塩。背には刀。
 いつもと変わらない俺のスタイルだ。ああランドセルは増えたけど。
 ランドセルには鉄が延棒みたいにして入ってるよ。鉄があればいろいろ作れるからね。


――――――――――


 「さあアレク君入ってくれ」

 「は、はい」

 ざわざわ  ザワザワ
 ザワザワ  ざわざわ

 帝都騎士団本部の大会議室。そこには数多くの騎士団員が着座してたんだ。中でも精鋭とみられる騎士団員の精鋭が20名、前列に座っていた。

 あっ、フリージアじゃん!

 後列にはフリージアの姿も見えたよ。小さく手を振ってたからすぐにわかった。

 あっ!

 「あれ?もう1人のポーターって?」

 「おいでごわす。アレク関」

 相撲取りのような大きなガタイ。顔には白地に赤い隈取り。まんま歌舞伎レスラーの形。
 隅に立ってるんだけど、圧倒的な存在感を醸していたのは武闘祭で闘った仲間、キザエモンだったんだ。

 「もう1人のポーター、キザエモンだったんだ。キザエモンなら俺も安心して背中を預けられるよ!」

 「それはオイも同じでこわす」

 ガシッ
 ガシッ

 キザエモンと固く握手したんだ。そのままキザエモンの分厚い胸に抱き抱えられたよ……。

 ガハハハハハ‥‥

 「痛い、痛い。キザエモン痛いって!ハグじゃなくってベアハックだから!」

 (またアレク君ったら抱きつかれて喜んでるわ!やっぱり変態なのね。私だって‥‥)


 「それでは直ちに蒼いダンジョンに向かう。選抜した隊員は副長から聞いているね。
 騎士団の精鋭剣士20名だ」

 出発前のわずかな時間のなかで。
 会議を説明をしながら情報共有を図る帝都騎士団。
 その最後に。

 「それでは‥」

 ジャック副騎士団長さんが会議の終わりを告げようとしたときだ。

 「いいですか団長!なんでこんなガキの言うことなんか聞くんですか?」

 「「「そうだ、そうだ!」」」

 それは明らかに魔法士とみえる騎士団員の一群だった。

 「言いたかないが帝都騎士団の魔法士は魔法軍にさえ負けない精鋭揃いです!」

 「うん。そうだろうね」

 「じゃあなんで!」



















 「うちの魔法士のみんなは攻守ともに帝都随一の魔法士であると僕も認めているよ。それは副長のジャックもね」

 「おっしゃるとおりです。メイズ騎士団長」

 「「「ではなぜ!?」」」

 ジャック副騎士団長が言ったんだ。

 「皆に言う。俺たち帝都騎士団はその行動のすべては帝都民のためにある。
 そしてその行動の先頭に立つメイズ騎士団長の命令は絶対だ。疑うことなど一切有り得ない。

 さらに言うが今回の緊急クエスト。冒険者ギルドの顧問テーラーさんの指名もアレク君一択だ。君たちはメイズ騎士団長と俺、そしてテーラー顧問の言葉が信じられんのか!?」

 「い、いえ‥‥決してそういうわけではありません。ですが‥‥」

 するとメイズ騎士団長が不平を唱える騎士団員さんを名指しで、子どもに言い聞かせるようにゆっくりと話したんだ。

 「オーティス、君の得意とするのは土魔法だね」

 「はい、メイズ騎士団長」

 「今年、帝都各区に建った時計塔。あの建物はわかるね」

 「もちろんです。毎時を正確に知らせてくれる時計の響きには自分も助かっています」

 「そうかい。ではオーティス。あの建物と時計、君1人なら何日で建てられる?」

 「時計塔ですよね」

 「そうだよ」

 「時計はもちろん発現できません。俺は土魔法だけですから。
 それと時計塔、あんなバカデカいもの俺1人で発現できるわけないですよ」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「そうだねオーティス。それが答えだよ」

 「えっ?!ま、まさかこのガキが‥‥?」

 「そうだよ。アレク君が帝都の教会にある時計と時計塔すべてをそれぞれ1日で発現した。
 そうだねアレク君?」

 「はい」

 「まさか、ダブルか!?」

 「しかもあの大きさの時計塔を!?」

 「「「信じられん!」」」






















 「認めん!認めんぞメイズ!わしはそんな荒唐無稽なことなど絶対認めん!」

 さっきいた魔法衣のおっさんが怒声をあげたんだ。
 歳の頃はメイズ騎士団長さんやジャック副騎士団長さんと同じ30代~40代。

 金髪碧眼。190セルテと細身長身のメイズさんとジャックさんはいかにも騎士団員らしいよな。スマートな体格でカッコいい。
 メイズさんは腰にレイピア下げてるし。

 そんなメイズさんやジャックさんが、いかにも帝都騎士団員さんっていうカッケー雰囲気を漂わせてるのと反して。

 背の高さは俺と変わらず170セルテ。ぽてっとお腹がつき出た銀髪のおっさん。
 魔法衣を着たおっさんは権威の塊のように見えたんだ。
 隣りにいる副官さんと2人、これぞ魔法士の鏡って堅い雰囲気のある、ただのおっさん……。

 「ルシウスさん‥‥」まだいましたか」

 「メイズ、此度のダンジョン調査、わしも行くぞ!」

 「それはちょっと‥‥。時間が惜しいのでルシウスさんにお構いもできませんので」

 「構わん!わし1人なら問題あるまい。もちろん自分の身は自分で守るわ。
 ダンジョンで必ず、わしの力にぬしらは感謝すること間違いないわ!」

 「‥‥」

 「わしも行くぞ!」

 コクコク
 こくこく

 メイズさんとジャックさんが目配せしたんだ。

 「‥‥仕方ないですね。ではルシウス魔法軍軍団長のみ同行を許可しましょうか」

 「当たり前じゃ。そんなどこの者とも知らぬ小童ごとき、わしの足下にも及ばぬわ!」

 「そうですか‥‥同行にあたってただ1つ、お約束してもらいますよ」

 「なんじゃ!?」

 「このあとのダンジョンで見聞きしたアレク君の魔法はすべて、契約魔法により他言無用にできるのであれば許可しましょう」

 「そんなこと造作もないわ。
 小童と言いつつ実はメイズの武技か騎士団だけの秘密のドロップ
品じゃろう!」

 「フッ。まあそういうことにしましょうか」

 メイズさんが目線だけ僕を見て軽くウインクしたんだ。

 「イケメンはなにをやってもイケメンよねー」

 「やめてくれよシルフィ‥‥自分が1番知ってるよ‥‥」

 

 ▼


 出発前の騎士団本部の前で。

 「アレク君おやっさんをお願い。私、おやっさんにはとってもお世話になってるの。だから‥‥」

 フリージア近いって!なんかいい匂いもするし!えへへ。

 「うちの狂犬団員もいるからさ。必ず助けるよ」

 「うん!」

 そんなアレクとフリージアの様子を見ていたお姉さんたちが3人近寄ってきたんだ。

 「フリージア」

 「あっ、分隊長に先輩ちゃんたち。
 あのね、もしダンジョンでヤバくなったらアレク君の側にいたら大丈夫よ」

 「フフフ。そうね(よくわかんないけど)。
 フリージアが他の、しかも男の子を褒めるとこなんて初めて見たわ!」

 「しかもなによ、その恋する乙女みたいな目は!」

 「ち、ち、違わよ!」

 「「「へぇー?!」」」

 だよな。フリージアは俺のこと変態って思ってるもんな……。

 「「「(フリージア‥‥)」」」

 それは第2分隊の仲間でさえ初めて見る、フリージアの恥じらう姿だった。



 出発に先立ち、居並ぶ馬の前で。
 やっぱ騎士団さんの騎乗姿はカッケーよな。

 「それでは蒼いダンジョンまで一気に駆ける。よいな」

 「「「はいっ!」」」

 先頭に立つメイズ騎士団長さんが声をかけたんだ。
 キザエモンは最後尾の馬車だな。

 「なんだ小童。馬にも乗れんのか!」

 それは魔法軍軍団長のルシ‥‥ルシウスだったっけ?ルシうざいおっさんだった。

 「馬にも乗れんでよくぞ偉そうな口を叩くもんじゃ!」

 さっきから鬱陶しいくらい絡んでくるルシうざおっさんだな。

 「だって俺、馬より早いもん」

 「また訳のわからんことを‥‥」

 あ~無視だな。ノー眼中。
 てか馬はあおちゃんと再会するまで乗らないって決めてんだよ。

 「行くぞ」

 「「「おぉ~!」」」

 20人の軍馬+馬車1台プラス俺。
 蒼いダンジョンの救助隊が深夜の帝都を駆け出した。



















 「な、なんなんだ!?」

 騎士団長メイズの横で談笑しながら並走するアレクを見て開いた口が塞がらない魔法軍軍団長のルシウスだった。


――――――――――


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