アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

595 別れの予感

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 「ぼ、僕団長がいなくなるの嫌っす。
 う、うっ、うわあああぁぁぁぁん!」

 「「「ハチ‥‥」」」

 ハチのあまりの泣き声に皆んながびっくりしたんだよね。俺も面食らったし。

 「俺がいなくなるって、まだまだ3ヶ月以上も先だぞ」
 
 「だ、だって‥‥うっ、うっ、うわあああぁぁぁん!」

 ハチに釣られてアリサやコウメ、おギンまで目にいっぱい涙を溜めてるよ。

 「あのなハチ。昨日皇帝のおっさんも言ってたろ。
 俺はただのお飾りなんだよ。狂犬団は俺なしでもみんなで運営してくれなきゃ困るだろ!」

 「団長はお飾りなんかじゃない!うわあああぁぁぁん!」

 「だ、団長は王国に帰ったらもうこっちには帰って来ないんですか?」

 ハチに続いて。目にいっぱい涙を溜めたコウメが言ったんだ。

 「何言ってんだよ。帰ってくるに決まってるじゃん!
 てか、これから作る老人ホームはな、まだまだ先のことだけど‥‥俺らみんなが歳とったらまた集まれたらいいなって思ったんだよ!」

 「「「??」」」

 「だって学園卒業したら誰もが違う道に進むだろ。大人になったらみんな別々の道になるじゃん。
 だから歳とってからもう1度みんなが集まれるかなって……。
 って勝手にそんなこと思ってるの俺だけかよ!?」

 「俺はもちろん団長についていきますよ。
 ジジイになっても」

 「俺もです」

 ドンとトンの双子が口を揃えて言ってくれたんだ。

 「お兄ちゃん私も‥‥」

 「団長私も!」
 
 「「「俺も!」」」

 「「「私も!」」」

 みんなの声が揃ったんだ。





 「ありがとうな。だからこのリゾートを完成させてくれよ。頼むよ」

 「「「おおーっ!」」」

 よかった。俺もなんだかうるっとしたよ。



 「じゃあ改めて俺の構想を話すな」

 「まずは国のために働いてきた賢人会の爺ちゃん婆ちゃんたちがのんびりできる保養施設を兼ねた老人ホームを作る」

 「これは手摺りがある、段差のない、柔らかい床と徹底的に爺ちゃん婆ちゃんが過ごしやすくした宿舎にする」

 「宿舎まわりには散歩も楽しくなるような季節ごとの花が咲く池のある庭も欲しいな」
 
 「それから、寒い冬にも歩ける温かい植物園も作りたいな」

 「爺ちゃん婆ちゃんを食事から日常の世話まできる人。それはメイドじゃなくてそういったことを専門にできる人にやってもらいたい。
 もちろん日々の健康はコウメのような医療知識のある人間に常駐してもらう」

 「次に作りたいのは傷病者の病院。
 同じように国のために頑張ってきた人たちで傷ついた人たちが社会復帰できるまでをサポートする施設。例えば手足の義手や義足、車いすも欲しいな。これも専門に作れる人を養成したい。ドワーフの力もいるよな」

 「あと共済保険始めたじゃん。あれと連動した保険適用の施設にしたいんだよね」

 「で、老人ホームと傷病者用施設を敷地の真ん中くらいに置く」

 「敷地の入り口付近は学園生専用の宿舎。これはこの青雲館施設をそのまま移したみたいなものでもいいかな」

 「部活動で夏休み中やあるいは休養日前に。短期から中長期の宿泊ができるように」

 「この近くにはプールも作るし、湖も作るからボート遊びもできるよ」

 「あと学園生と家族で休養日に泊まれても楽しいよな」

 「サッカー場やバスケ、テニスコートもほしいな」

 「あと食堂とは別にパン屋もラーメン屋も敷地内にほしいな。大人用にはお酒が飲める店も。もちろん自分たちでメシが作れるBBQ場があってもいいし」

 ジオラマにフィギュアを使ってここまでを一気に話したんだ。

 「リゾート先までは煉瓦道を作る。
 大人も子どもも、魔力の有無に関わらず、女子1人でもリゾートまで来れるようにしたいんだよね」
 
 「それが誰でも乗れる馬車。バスなんだよ。
 そんな馬車は御者はもちろん、馬も車も全部自分たちの施設で賄うんだよ」

 「全部?」

 「そう。野菜作る人は野菜作って売るだろ。野菜を売ったお金で食堂でメシを食べる。
 
 食堂の人は野菜を買うし、ほかのお店で物を買う。

 つまりすべてのお金の流れをこのリゾートの中で循環していくんだよ」

 「で皇帝のおっさんから借りた土地に家族連れが来れる宿泊施設と別荘も作る。さらに土地があるからカウカウやブッヒー、コッケーを飼うんだ」

 フィギュアを並べながら熱に浮かれたように話をしたんだよね。
 でもそんな夢物語的な俺の話でさえ、みんなは好意的に捉えてくれたんだ。

 「金はいくらでもあるから大丈夫っす。団長の思ったとおりの物が作れるっす!」

 ハチもいつのまにか泣きやんでいたよ。






 会議のあと。アリサはおギンたち女子と話があるっていうから先に帰ったんだ。

 「ただいまー」

 「お帰り」

 珍しくオヤジが先に帰ってたんだ。

 「珍しいじゃん。オヤジが先に帰ってるって」

 「まあたまにはな」


――――――――――


 「どうだ学校は楽しいか?」

 「うん。毎日めっちゃ楽しいよ」

 「誰か女できたか?」

 「女?いきなり変なこと聞くオヤジだな」

 「で、どうなんだ?」

 「できるわけねぇじゃん!だいたいいつのまにか変態認定されてるわ!
 俺も恋愛してみたいよ‥‥」

 「恋愛?学園で1番強いんだぞ。金もある。不自由ないだろ」

 「俺はねオヤジ、普通に普通の恋愛っていうのをしてみたいんだよ」

 「家にはアリサがいるだろ?」

 「妹に手を出したら本物の変態じゃねぇか!」

 「学園生は?」

 「学園生に手を出したら退学になるわ!あと3ヶ月なんだぞ!」

 「じゃあバブーシュカは?」

 「なんの罰ゲームだよ!」

 「ローズの孫フリージアはどうだ?かわいいじゃねえか」

 「あいつはもう友だちだからな。友だちに手を出したらやっぱり変態だろ!」 

 「お前変なこだわりがあるんだな。
 よし、それじゃあ俺が色街に連れてってやるか」

 「えっ!?マ、マ、マ、マジ?」

 「俺もお前の歳には連れてってもらったもんよ」

 「ホントかよ!やった、やった、やったー!」

 思わず飛び上がって喜んだよ。ついに俺も大人の階段を上がるんだって。

 大人ってあんなことやこんなこともするんだよね……。




































 ブシュュュューーッッ!

 「うわっ!汚ねぇな!お前どんな身体の作りしてんだよ、まったく!!
 やめだやめだ!」
 (アリサが悲しむからやっぱりやめだな)

 「う、うう‥‥」 

 「泣くな馬鹿野郎!」


――――――――――


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