アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

591 自爆

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 焦りまくりのシルフィが叫んだんだ。

 「アイツをすぐに棺桶で囲んで!
 それからアレクの持つすべての魔力を注いでどんどん囲み続けて!
 イメージはエジプトのピラミッドよ!」

 「わかったシルフィ!」

 ガコガコガコガコガコガコ‥‥

 有無を言わさずカパルを石棺に詰めたんだ。

 「みんなには頭を抱えて伏せなさい!腹這いになって!」

 「頭を下げて伏せて!腹這いになって!」

 周囲のみんなに聞こえるように、大声で言ったんだ。

 ササッッ!
 ササッッ!
 ササッッ!

 危機管理意識っていうのかな。疑いもせずにみんなが地面に這って頭を抱えてくれたよ。


 「アレク!このまま魔力が空になってもいい。使い果たして倒れるくらいピラミッドを大きくして!」

 「周りの家を潰してもいいわ!」

 「あと飛び散るピラミッドの石も危険なのよ!深く‥‥そうね!やっぱりピラミッドはやめて地の底に埋めて!」

 「そうよ!ピラミッドより地面の中よ!大江戸線の六本木よ!」

 シルフィの言ってることが二転三転してるよ!
 てか大江戸線って何!?って思ったけどつっこむ気さえ起こさせないくらいのシルフィのあわあわぶりに、俺が冷静に応えなきゃなって思ったんだよ。

 だいたい魔力を使い果たせなんてことをシルフィが言うなんて初めてのことだよね。だって魔力欠乏だけはしちゃダメだっていつも言ってるくらいなんだもん。

 「ほらアレク早く早く!地下鉄大江戸線よ!」

 「地下鉄大江戸線、大江戸線、大江戸線、大江戸‥‥」

 俺もイメージが言葉になって出てたくらいにらだよ。
 でも‥‥六本木駅まで掘れなかったんだ。

 ズズッッッ






























 ドオオォォォンンンッッッ!!

 
 































 腹這いなのに一瞬浮き上がるくらいの衝撃!それは明らかに震源地の直下型地震だ。その衝撃は俺の予想をはるかに超えていたんだ。

 「う、うそだろ‥‥」

 カパル1人を沈めた地面。俺の目の前にはまるで崩落事故を起こしたかのような、あるいはミサイルが地面に着弾したかのような大きな穴が開いたんだ。
 周囲の石造の家や建物も何軒かが崩落したんだ。

 「「なんだ?」」

 「「すげぇ音がしなかったか」」

 「「家が揺れたわ」」

 「「「なにがあった?」」」

 この日、250万もの市民が暮らす帝都全域で。腹に響くような地鳴りが1度したという。

 「アレク君‥‥」

 「坊主‥‥」

 「アレク‥‥」

 「「「‥‥」」」

 大穴を前に俺たちは呆然と立ち尽くしていたんだ。

 その後の調査。カパル本人はもとより、カパルの痕跡も一切が消滅してたよ。







 宮殿の会議室に戻って、改めてここまでの経過を報告しつつ、みんなが情報共有をしたんだ。

 「あと1つ。どうしても気になることがあるんだよね。タムラ?」

 メイズさんが話を切り出して、そのままタムラさんに話を振ったんだ。

 「あのカパルって奴が出てきた先には大使館が多いだろ。奴が出てきた真裏にはサンダー王国、ウエストランド、カザリア法国がある」

 ざわざわ
 ザワザワ

 「「「どういう意味だタムラ?」」」

 「さっきもこの話の途中に会敵したんだよ。
 言いたかねぇが‥‥俺ら冒険者の間じゃあ王国に若干不穏な動きがあると思ってる」

 ざわざわ
 ザワザワ

 「「王国?タイラーさんやロジャーさんがいるだろ!?」」

 「当然そうなるよな。王国は別だって。
 ただな、お前らも薄々勘づいてねぇか。王国でも親しくしてるのはヴィヨルドだけだって。てかヴィヨルドくらいだろ、王国の建国以来永く友好関係が続いてるのは」

 コクコク
 こくこく

 なんとなく納得する空気感がみんなへと伝染したんだ。

 「いかんぞ。確たる証拠があるまでは他国、まして友好国を疑うことは。
 確たる証拠があるまではの」

 モヤモヤしたものはぬぐいきれなかったよ。だけどそれがどうしようもないこともわかってるんだ。
 もちろんジンさんの含んだ発言も気になったけどね。

 「今回の騒ぎ。憂慮すべきことしかないの。ただこの杖を手にできたことだけは収穫じゃわい。
 これから帝都の若い研究者にしっかりと勉強してもらうかの」

 ジンさんがカパルが使っていたステッキを手にしみじみと言ったんだ。

 今後。
 といっても早急にやるべきことから中長期でやるべきことまで。問題が山積してるんだよね。
 でもさ。ちょっぴり卑怯だけど俺、留学生のただのガキでよかったな。難しいこと考えるの苦手だし。


 「アレク、この子にカラス借りるわよって伝えて」

 会議の終わりとなるとき。シルフィがカラス(人)にカラス(鳥)を借りるって言ったんだ。

 「(カラス、俺の精霊のシルフィがお前のカラスを借りるって)」

 「(おっ、おお)」

 すると1羽のカラスがテーブルの上にのって話をしだしたんだ。

 「カァァァ。最後に聞きなさいヒューマン。カァァァ」

 「シルフィ殿に傾聴!」

 えっ?
 いきなり立ち上がったのは騎士団長のメイズさんだ。
 メイズさんなにそれ?

 ガタッ!
 ガタガタガタッ!

 なんの疑問も抱くことなく、みんなが直立不動の姿勢となったんだ。
 なんだよそれ!

 「カァァァ。まずは誰も傷つかなかったし、大きな被害も出なかったことが喜ばしいわ。あなたたちのがんばりねカァァァ」

 「カァァァ。この中で1番強者の3人なら充分闘えることもわかったでしょ。カァァァ」

 「カァァァ。でもね。3人が相手をしたのは眷属よ。悪魔のランクでいうと最底辺の奴らよカァァァ」

 「カァァァ。それとね。あの爆発、眷属の自爆は私も驚いたわ。しかも記憶の中の爆発よりも大きくなっていたわ。もしアレクの魔法がなかったら‥‥カァァァ」

 「カァァァ。私自身にも言えるけど、できないことを数えるのはやめましょう。カァァァ」

 「カァァァ。これから先、出来ることを毎年増やしていくしかないわカァァァ」

 「カァァァ。これから永く続く悪魔との闘い。
 先頭に立つのは誰かわかるわよね?カァァァ」

 「カァァァ。古代よりすべての人々の希望はどんな困難にも諦めない強者がいる国のことよ。
 今の世界ではあなたたちロイズ帝国なのよカァァァ」

 「カァァァ。日夜精進しなさいカァァァ」















 「「「はいっ!」」」

 
――――――――――


 ロイズ帝国は皇帝の下に28の州が集まる。アメリカ合衆国に近い連邦制を採用している。

 この日、帝都と28州を代表する為政者に「ことに備えよ」との通達がなされた。


――――――――――


 「さっ、オヤジ帰ろうぜ」

 「お、おお」






 やっぱね。平和が1番、わが家が1番なんだよ。


 「ほらアリサ、口の端にパン屑付いてるぞ」

 ぺろっ

 「お、お、お兄ちゃんのヘンタイ!」

 バキッッ!


 「アレク、私にも付いてないかね?ほら、ここさね」

 「バブ婆ちゃん、なんの罰ゲームだよ!」

 ヒッヒッヒッ
 わははははは


 「クロエー風呂行くぞー」

 「はーいアレクお兄ちゃん」


 「今日は学校どうだった?」

 「あのねサクラちゃんがね‥‥」


――――――――――


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