アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

587 先陣

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 【   ◯◯◯◯side  】

 「さてフルカス、そろそろ去ぬるぞよ」
 
 「‥‥フルフル様、やはりこのままでは口惜しう存じまする。さらには先の果実よりもさらに甘美な卵まで見つかりました故。
 私の腹心、カパルをこちらに残しとう存じまする。勝手を言い、申し訳ございませぬ‥‥」

 「‥‥そうかえ。ぬしが決めたのであればの。
 もうまろは何も言わないでおじゃる。
 フルカスよ、カパルによしなにとな」

 「ははフルカス様。近々カパルより吉報をお届け致しまする」

 「ふむ。ではまろたちは去ぬかの」

 「はは」

 フッッ‥‥

 帝都内、某所より。
 刹那。2人の気配が消えた。転移の魔法陣である。


――――――――――


 仮死状態のカラス(鳥)を生き返らせて、その後をみんなで追うことに決めたんだ。あわよくば、使役してる悪魔も捕縛できるからね。

 「カラスを起こしたら、すぐに行動開始じゃ」

 「「「おお!」」」























 「「「老師?」」」

 「よいか。アレクサンダーとアーサーはわしの横におれ。ここに残るんじゃ」

 「「老師なんでだ!?(なんでだよ老師!?)」」

 参戦する気まんまんの2人は半ば怒ったようにジンさんに抗議したんだ。

 でもジンさんはそれを叱責したんだ。それはそれは懇切丁寧に、説き伏せるように叱責したんだ。

 「現在の帝都には強烈な凶々しい気配はない。ゆえにカラスが向かった先に柱となる悪魔はおそらくおらんよ。それは慎重な奴等ゆえにな。
 ただ1,000に1つ、悪魔が残っておって、お主らどちらかが死んでみい。どうなる?」

 「「そ、それは‥‥」」

 「悪魔の魔法にはエリクサーでさえ効かぬものもあるぞ?万が一死ねばどうする!」

 ジンさんの叱責が2人に響いたみたいだ。

 「その報は隠し通せぬぞ?国内は元より周辺諸国も黙っちゃいまい。それが原因で騒ぎになってみい!悪魔どころじゃないわの。
 主らは帝国500年の歴史をそんなつまらぬことで無に帰すつもりか」

 「「‥‥」」」

 あー次男ゴリラも3男のゴリラも凹んでるよ……。

 「わかったの。いずれ‥‥嫌でもお主らは先頭に立って腕をふるってもらうことになるわ。それは良くないことなのじゃがの。
 ただ今日は別じゃ。今日はここでわしと待機をしてもらう」
 
















 「「わかった‥‥」」

 そんな流れのなか。シルフィが言った‥‥。ていうかシルフィが1羽のカラスを先に起こして、そのカラスが喋りだしたんだ。
 えっ?シルフィこんなこともできたのかよ?!

 「カァァァ。聞きなさい、ヒューマン」

 「「カ、カラスが!?」」

 「「喋った!?」」

 「カァァァ。悪魔と闘うときは1対1という考えは捨てなさい。強者が2人3人いても負けることはよくあるんだからね。カァァァ」

 「「「‥‥」」」

 「カァァァ。あと誤解しないでよ。アレクが好きな国だから手助けするんだからね。カァァァ」

 「「それはどういう‥‥」」

 「カァァァ。春にはアレクはいなくなるわよ。今のままじゃダメ。魔法士も足りてない。
 だから皆がもっと強くならなきゃ国が滅びるってことを理解しなさい。事実、過去に滅びた国は悪魔より弱かったんだから。カァァァ」

 「「「‥‥」」」

 「カァァァ。ただアンタたちは真摯な目がいいわ。もっと強くなるように努力しなさい。他の氏族とも協力しなさい。あなたたちなら負けないわ。カァァァ」

 いきなり話し出したカラスに度肝を抜かれた強者たちだったよ。だけど、最後にはシルフィの話を真剣に聞いていたよ。









 「(ちょっとシルフィ‥‥)」

 俺とシルフィ、2人の会話は周りの人には聞こえないよ。だけど、なんとなく小声になったんだ。

 「(なんだよシルフィ!カラスが喋るって?!)」

 「クスクスクス‥‥わかったアレク?」

 「(そんなのわかるわ!)」

 「カァァァ伝令アリ!
 鎹ガラスみたいでしょ。あのカラスたちみんな名前がついてるのよ。知ってた?」

 「(知らねぇよ!)」

 マジか?知らんかったー。

 「でもさ、カラスが話すのカッコよくない?
 あっ、アレク私にも竹の筒と着物作ってよ!むーむーって言うんだから」

 「(パクるの‥‥やめようよシルフィ‥‥)」







 「ではカラスの後を追うのは騎士団長のメイズ、陸軍大将のサム、冒険者のタムラの3人プラスアレク君の4人じゃ。3人の後方からアレク君が魔法で支援する。
 後の者は4人を囲むように、左右の翼となりて100メルほどの距離を開けて移動せよ。ちょうど網をかける要領じゃの」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「あとの。全員エリクサーを持っていくんじゃぞ」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「諄いようじゃが、網の先端は開けたままにするんじゃぞ。眷属はいいが、もし悪魔と会敵した場合、洒落にならんからの」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「いいの。左右の翼を閉じていいときは、メイズたちの指示があってからじゃ」

 コクコク
 こくこく
 コクコク



 騎士団長のメイズさん。金髪碧眼。190セルテと細身長身はいかにも騎士団長らしいな。スマートな体格はカッコいいな。
 腰に下げているのはレイピアだな。

  「よろしくなアレク君」

 「はい。よろしくお願いしますメイズさん」

 「(フリージアが世話になったね)」

 「いえ。こちらこそです」


 陸軍大将のサムさん。200セルテ弱。スキンヘッドの筋骨隆々な体格は、ゴリラ兄弟に1番近い雰囲気があった。
 背負った両手剣が小さく見えるし。抜きん出て強い3人の中でも、たぶん1番強くないかな。

 「坊主頼んだぞ」

 「はい。サムさん」

 「ランディがいつも世話になってるな」

 「俺のほうこそ世話になってます」

 「(聞いたぞ。うまいらあめんってのがあるって)」

 「(あははは)」

 「(この件が終わったら3人で食いに行くかガハハハハハ)」

 「(はい!)」


 冒険者のタムラさん。180セルテ。グレーの長髪を背中で結っている。敏捷さを感じるな。迷彩服を着てるのにはびっくりしたよ。
 腰にさげた刀は見たことのないくらい、半月くらい反った刀だった。まるで駱駝に乗った中東の戦士みたいだね。

 「アレク、期待してるぞ。
 テーラーのおやじが毎日うるせえんだよ。オメーをダンジョンに連れてけって」

 「あははは。でもダンジョンにはめっちゃ行きたいです」

 「オメー最上級鉄級だろ。だったら来年の春までに銀になっとけよ」

 「はい!」




 3人とも魔力を完全にコントロールしていたよ。
 騎士団長のメイズさん、陸軍大将のサムさん、冒険者のタムラさん。こりゃ今現在の俺より断然強いな。

 これなら悪魔だって大丈夫かな?


 「ではいくぞ」

 ジンさんが寝ているカラス2羽を起こしたんだ。先に起きてたカラスと3羽が一斉に窓から外に飛び立った。

 カーカー
 カーカー
 カーカー
 





――――――――――


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