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第2章 幼年編
579 叙爵
しおりを挟むそれはアレクの勝ちが決まった直後のことである。
「学園長お願いがあります」
「おやおや3年のトン君、ギンさん、1年のハチ君、いいところに会いに来てくれましたね」
「「「?」」」
「アレク君の優勝を祝って明日の授業は急遽お休みにしようかと思いましてね。早速狂犬団の連絡網で皆さんに連絡をお願いしようかと思ってたところなんだよ」
「やったっす!」
「「ハチ!」」
「ハッ!ごめんなさいっす」
「先生、今回遠方からお越しの生徒と先生方を含めて歓迎のパーティーを学園主催でやってはいけませんか?」
「それはたいへんいいお話ですが、さすがに急には‥‥」
「実は今回の決勝リーグに入る前からアレク団長が勝つことを前提に学園内狂犬団で検討し、準備もしていました」
「なんと!それはすごい。さすがは狂犬団ですな」
「えへへ。それほどでもないっす」
「「ハチ!」」
「ハッ!ごめんなさいっす」
「しかしその案自体には大賛成ですがお金もかかることでしょう」
「学園長大丈夫っす。団長はみんなに使うお金ならどんどん使えって言うっす。だから家も潤うし父ちゃんも大喜びっす」
「「ハチ‥‥」」
「わはははは。そうですかそうですか。では学園からも予備費を幾らか融通しましょう。会場は学園の競技場を使ってもらいましょうか」
「「「ありがとうございます学園長!」」」
「では学園長先生から各校の先生方にご連絡をお願いします。あと今日、明日の宿舎に関してご必要であれば青雲館にお越しくださいと」
「何から何までよく考えてますね、狂犬団は」
「いえ、団長ならどうするかと我々はいつも考えてますから。
きっと団長ならもっとすごいことを考えてると思います」
「そうですね」
「僕もなんか儲かることを考えてるっす」
「「「ハチ(ハチ君)‥‥」」」
そんなわけで、俺が知らない間に決勝リーグに出場の各校には、この後のパーティーの連絡がいってたんだ。
自分たちで行動できる。ますます狂犬団は組織として良くなったと思うよ。
で、決勝戦のあと。そのまま表彰式になったんだ。
誰か偉い人から祝辞かなって思ってたら、いきなり現皇帝アーサー陛下だったよ。
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
「帝国内未成年者武闘祭、その第1回ということもあり、優勝者には爵位を授ける‥‥」
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
「優勝のアレクには名誉帝国民の称号と爵位として準男爵を与える。これで名実ともに帝都民だ」
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
ワーワーワーワー
3男ゴリラがそう言ったよ。
俺がもらったのは準男爵。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の下にある準男爵だ。これは、向こうの世界ではイギリス式に近いものだよね。
ロイズ帝国に多くの範をとる王国でもたしかこの制度だったな。
去年のダンジョン。6年の先輩たちの親は文官の法衣貴族(法服貴族)として準男爵の称号を持ってたはずだ。俺もそこまできたんだな。
名誉帝国民、準男爵の称号とともに金メダルみたいなものを首にかけてくれる3男ゴリラ。
「俺みたいなのがもらっていいの?」
「黙ってもらっとけ。そのほうが王国に帰ってからお前のためにもなるだろ」
えーやっぱ3男ゴリラも俺のこと知ってんのかよ!
「当たり前だろ。お前俺のことなんだと思ってる?中原最大最強のロイズ帝国現皇帝だぞ俺は」
と、ゴリラ3兄弟の3男が言ったんだ。
「口の減らないガキだな!俺らがゴリラならお前はまだ子猿だよ!」
あゝたしかにそうかも。悔しいけどまだまだゴリラたちにはぜんぜん及ばないもんな。
「ゴリラゴリラとどの口が言うんだよ!この子猿がー!」
「痛い痛い痛い、頭ぐりぐりしないで!」
「「「‥‥」」」
しーーーーーん
ワハハハハ
わはははは
フフフフフ
シーンとする円形闘技場の中、オヤジとジンさん、ローズ婆ちゃん3人の笑い声だけが響いていた。
「あとな、お前なにがほしい?」
「くれんの?」
「一応俺この国で1番偉いからな。でもアレク、お前金は要らんのだろ?」
「うん。毎日食えて家族や仲間がいればそんで充分だよ」
「わはははは。そりゃそうだ。じゃあなにがほしい?」
「うんとね、土地がほしい」
「土地?」
「うん。学園から普通の人が歩いて1日くらいで着く場所に土地が欲しいな」
「なにすんだ?」
「うん。帝都学園生が休みになったら行けれる合宿所を作りたいんだ。
あとさ、賢人会の爺ちゃんや婆ちゃんたちがのんびりできる保養所?そんなのも作りたいな。
ああ、あと軍人さんや冒険者さんたちで怪我した人たちの障害者施設みたいなのも作りたいな」
「子猿‥‥お前は本当に‥‥
いっそのこと王国に帰らずにこのまま帝国に居るか?」
「居たいけどね。まだやらなきゃいけないことがあるからさ。だけど‥‥いつか絶対に戻ってくるよ」
「そうか。よし、その土地の件、すぐになんとかしよう。2、3日したら返事するからな」
「ありがとうございますゴリラ陛下?」
「っつたくお前はホントに‥‥」
「痛い痛い痛い‥‥」
―――――――――――――――
「さぁ帰るかシルフィ」
「そうね」
「「「お兄ちゃん!(アレク君!、団長)」」」
式も終わり、アリサ、フリージア、ジーン、ローズ婆ちゃん、コウメが待っててくれたんだ。
「フリージアすっかり良くなったみたいだな。よかったよ」
「アレク様が私の生命を救ってくれたとローズお婆ちゃんから聞きました」
「ア、アレク様?ハァ?」
そう言ったフリージアが俺の手を両手で覆って自分の胸の前に置いたんだ。
「生き返ったからには私の生命はアレク様のものです。どうぞお好きになさってください。たとえ奴隷でも‥‥いえ、性奴隷でもかまいません」
「な、な、なに言ってんの?フリージア!」
「本気です私!」
せ、せ、性奴隷って‥‥あ、あ、あんなことやこんなこと‥‥あ、あ、頭の中を性の文字が駆けめぐる……。
あ、あ、あ‥‥‥‥
ブッシューーーーーーーーーーーッッッ!
過去1大量噴出だよ……。
あゝこれが走馬灯のように‥‥ってやつだな。
ドサッッッ
「お兄ちゃん!」
「アレク君!」
「団長!」
「ど、どうしよう!血が止まらない!回復魔法が効かないわ!早く早く、誰かハイポーションを!エリクサーが要るかも!?」
微かにコウメの悲鳴が聞こえた気がする。
「ほっときゃいいのよコウメ。この変態はもう1回死んだほうがいいのよ」
シルフィが毒付いているのも微かに聞こえた。
死にかけた。本当に死にかけたんだ。
――――――――――
「帰ろうかマリー」
「そうねデーツ」
「このまま学園でアレク君のパーティーをやるって」
「‥‥俺はいいかな」
「‥‥そう。じゃあ帰ろうか」
「ああ」
▼
「アレクは強かったな」
「そうね。次はデーツもよ。頑張ってね」
「う、うん」
でも‥‥このままハッピーエンドにはならなかったんだ。っていうか、デーツが変わる契機になったんだ。
円形闘技場からの帰り道。
多くの生徒はパーティーに参加のため学園に向かい、多くの観客は居住区へ向かったんだ。
だから家のある高級街を歩く人は少なかったんだよね。そこもいけなかった。
デーツとマリアンヌ先輩の2人が人気の少ない路地を歩いていたとき。
(この男、あのガキに繋がる魔力の匂いがするな)
(せっかく育てた卵を割られ、カラスまで奪われたからな。このままじゃわしの気が済まん。フルカス様にも申し訳が立たん。せめてこのガキをやっとくか‥‥)
「ちょっと待てやガキ」
「「えっ?!」」
――――――――――
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