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第2章 幼年編
578 決着
しおりを挟む「老師、あの馬鹿は大丈夫か?ガキを喰った卵の魔力ヤバくねぇか」
「おやっさんの言うとおりだな。魔力量はあの闇堕ちした小僧のほうが多いだろ?しかも‥‥卵は帝都騎士団員だな」
「なに大したことないわ。わはははは」
「「??」」
「まあ見とれ。お主らヒューマンは10年に1人の天才とか言うわの。じゃがアレク君はわしらエルフでさえも100年に1人の天才と言うよ。あゝ天才じゃないの、あの子は泥くさい努力家じゃの」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
息つぎさえも許してくれない連撃。元は帝都騎士団員であろう卵のたしかな剣技。
でも‥‥俺の王都流は、ディル師匠から直接手ほどきを受けてるんだ。そんな俺が負けるわけないだろ。てか負けたらまた師匠に叩かれるよ!
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
連撃を丁寧に受け流す。
メヒコに植え付けられた卵、その憎しみの源泉となった人はもう生きてないんだろうな。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
丁寧に丁寧に。
憎んで憎んで憎み続けて。最後は悪魔に騙されたのを知らないままに魂を卵にさせられたんだな。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
右、左、右‥‥
この卵になった人は、ジンさんやテンプル先生がいう輪廻の輪にはもう戻れないんだな……
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
右、左、右‥‥
でも後悔しても遅いんだよ。一歩間違えてたら俺もこうなってたのかもしれないな。でも宿主のメヒコはまだ戻れる‥‥
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
よし。目も慣れてきた‥‥
「メヒコ!目を覚ませ!まだ、今ならまだ間に合うぞ!」
「まさか!?あの馬鹿まだ魔力を出し尽くしてないのか?」
「老師?」
「だから今言うたじゃろ。あの子の全力の魔力量はこんなもんじゃないわ。ワハハハハ」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
呼吸も大丈夫‥‥
「卵に喰われるな!」
『うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!うるさい悪魔め!お前は甘い言葉で僕を誘ってるんだろ!そんな言葉に僕はごまかされないぞ!』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
メヒコの表情もよくわかるぞ‥‥
「メヒコ!目を覚ますんだ!このまま進んでもいいことなんか1つもないぞ。さらに辛いことしかないんだぞ。お前こそ甘い言葉に騙されるな!」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
おっ!ようやく聞いてくれてるな
『なんなんだよ?!』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
俺の話を聞け!
「たぶん、いや間違いなくお前はこのまま進んでも辛いし、停まっても辛いぞ」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
そうだ俺の話を聞くんだ
「ただな、辛いっていっても自分の人生じなんだぞ。誰か、絶対に、誰か1人はお前を応援してくれる味方がいるぞ」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
『味方?いるわけないだろ!まわりはみんな敵だらけだ!』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
「必ずいる。たとえお前が悪魔に騙されたと知ってもな」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
『うるさい、うるさい、うるさい!俺は騙されてない。悪魔はお前だ!お前こそ俺の剣で倒してやる!』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
「騙されるな!メヒコ、お前元々魔法使えたか?レイピア使えたか?片手剣使えたか?」
『えっ‥‥?!』
「使えないだろ」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
『‥‥』
「メヒコ、お前のほんとの武器はなんだ?父ちゃんや友だちからなんかもらってねぇのか?!」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
「今度は俺から攻めるからな。いくぞ。しっかり受けてみろ!」
【 メヒコside 】
あっ‥‥忘れてた。
僕は村1番の木こりだった父ちゃん自慢の息子だった。父ちゃんが村長に騙されて殺され、母ちゃんも家に転がり込んできた村長の息子にいいように使われて……。毎晩毎晩、僕は殴られ続けたんだ。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(なんだ、こいつはさっきから!?)
『学園の仲間はもちろん、先生たちでさえそんな村長たちに文句1つ言ってくれなかったのに』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(つ、強い!)
『結局家の山も先祖代々育ててきた堅くて良質な木材もその全部を手に入れたい村長が裏でいろいろ仕組んだってことを後で知ったんだ』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(と、止まらない?!)
『なにもかも奪われた僕に残ったのは憎しみだけだった……』
『どうしてこうなったのかな?僕はどうすればよかったのかな?
てかどうしようもないじゃないか!父ちゃんも殺されてしまったし。僕はなにも悪くない!悪いのは村長だ!村長の息子だ!そうだ!あいつらが悪魔なんだ。悪魔が悪いんだ!そうだ!悪魔が悪い!』
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(強い!なんだよこいつ!?こいつも同じ流派か?)
「悪魔に言われなかったか?お前は悪くないって。みんなが悪いんだって」
ガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(くっ!)
そうだ‥‥
ガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(く、くっ!)
「メヒコはなんも悪くない、悪いのは周りのみんなだ、みんなを唆したのは悪魔だって教えられなかったか?」
ガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(強い、強すぎる!)
ガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥
(くっ、破られる!)
『なんだ?さっきから俺の身体の中で誰が喋ってるんだ?』
「そろそろ気づけよメヒコ!」
『誰だ?さっきから僕の身体で何をしてる?』
(まだ自我を保ってやがる。お前は心も身体も俺のモノになるんだよ!)
メヒコの周りをさらに黒紫色の煙が立ちこめてきた。
「アレク、あの霧を斬って!」
「えっ?!だって俺聖魔法は‥‥」
「私が付与してあげるわ。だから大丈夫よ!」
「えーーっ!?シルフィ聖魔法発現できたんだ?」
「あたぼうよ。へらんめぇ!今日だけは特別大サービスでい!」
「あはははは。そうだったんだ‥‥」
「刀に聖魔法を付与するわ」
「わかったシルフィ!」
ザンッッッッ!
パアアァァァンッッッ!
風船が破裂するような音がして凶々しい気配も消えていったんだ。同時に。
(グアアァァァァーーーーーッッ!)
霧を斬ったと同時に断末魔の悲鳴も聞こえたんだ。
後に残ったのは、ガクッと膝をつくメヒコと言う名の子どもだけだった。そんなメヒコに声をかけられる。
「お兄ちゃん!」
『あっ!リラ!』
「妹か。メヒコ、味方いたじゃねぇか」
コクコク
『まだ‥‥僕には妹がいたんだ』
「そうだ。大事な味方だぞ。目覚ましたら、今度こそ妹を裏切るなよメヒコ」
「うん‥‥」
ドンッッ!
『ぐはっっ‥‥』
メヒコの鳩尾を刀の柄で打突。そのままメヒコは倒れた。闇堕ちも解けたよな。
あとはメヒコの話が真実かどうか騎士団の人たちが調べてくれるはずだ。
「もう闇堕ちはしないわ。大丈夫よアレク」
「わかったよシルフィ。ありがとう」
わーわーわーわー
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
「決着、決着です!圧倒的、圧倒的な勝利!帝都学園のアレク君、狂犬団の団長はやっぱり強かった!」
わーわーわーわー
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
「焦らせやがってアレクのやつ‥‥」
「おやっさんとこの息子、驚くほどに強い未成年ですな」
「だな」
「いずれ‥‥ゴリラ兄弟の道もありますなぁ」
「ねぇよ!」
わははははは
ワハハハハハ
「トン先輩、おギン先輩、すぐに学園長に許可をもらいにいくっす!」
「「そうだな(そうね)」」
「「準備万端っす!」」
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