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第2章 幼年編
575 最強の未成年者登場
しおりを挟む「明日の未成年者武闘祭、陸海騎魔各軍から精鋭を警備につけよとのお達しだ。
演習を兼ねて各軍の連携も図るからな。しっかりやれよ」
「「「はい!」」」
それは陸海騎魔各軍のトップ及び副官を集めた非公式の会談でも話された演習の意図。
「よいか。国家的案件故詳しくは語れん。がこの警備演習が帝国の国家存亡の危機に繋がるものと覚えよ」
「「「はっ!」」」
――――――――――
家に帰っての夜ごはん。
「お兄ちゃん明日は大丈夫よね?私、正直言ってあのメヒコの脚捌きもレイピアの刺突もぜんぜん見えなかった‥‥」
「だろうな。メヒコそのものはどう思った?」
「わからないわ。最初は魔力も感じなかったし、なんの印象もなかったけど‥‥気づいたら鳥肌が立っていたの。今思い出してもほら」
アリサの綺麗な細腕に鳥肌が立っていた。メヒコの闇堕ちという理由はわからなくてもアリサの、人としての本能が最上級のアラートを告げているんだろうな。
「そんでもアリサ、お前も強くならないといけないからな。明日はフリージアたちと一緒に近くで見るか?危ないけどな?」
ちょっぴり悩むだろうなって思ったんだよね。でも違ってたんだ。アリサは悩むことなく即返事してくれたんだ。
「うん!」
「私もフリージアさんたちと一緒にお兄ちゃんの側で応援する!」
「ア、アレクいいのか?」
「オヤジは過保護過ぎだって。安全もなにも、だいたいかわいいアリサに小石が跳ねてあたろうもんなら俺が絶対許さない!」
「お、お、お兄ちゃんの変態!」
バチーンッッ!
「お兄ちゃんまたアリサお姉ちゃんに変態なことしたの?お腹の匂いを嗅ぐのはクロエもくすぐったいから嫌よ」
ヒッヒッヒッ
ガハハハハハ
「はい‥‥クロエさんの仰るとおりです‥‥」
「まあなんだ。明日は俺とアーサーも観てるから安心して闘ってこい」
「あれ?オヤジも弟ゴリラと来るんだ。ガキの大会なのに?」
「ガキの大会で家の変態が悪いことしねぇように見張りにいくんだよ!」
ヒッヒッヒッ
クックックッ
「アレクお兄ちゃん知らない人のお腹の匂いまで嗅いでちゃダメなんだよ!父さまにも迷惑かけるし、お家の恥だからね。
嫌だけど1日1回くらいならクロエも我慢してあげる」
「クロエ様はお優しいお子じゃわい。ヒッヒッヒッヒッ」
「さーせん‥‥」
オヤジが目線で俺だけに語っている。闇堕ちした人間への警戒度は半端ねぇな。明日は俺も気合い入れなきゃな。
「お兄ちゃんちゃんとしなきゃダメなんだよ」
「はい‥‥」
「フッ」
「あーデーツ!テメー弟のくせに笑いやがったな!」
―――――――――――――――
ざわざわざわざわ
ザワザワザワザワ
ざわざわざわざわ
円形闘技場内のボルテージはこれまでで1番。ダントツに最大値だった。耳が痛いくらい。
決勝戦故に高まったボルテージなのか、危険な悪魔の気配が肌感として群衆に伝わったからなのかはわからない。
「アレクの変態さも伝わったのよ。フフフ」
「あー言ったなシルフィ!」
フフフフフ
ワハハハハ
どんな時でも肩の力を抜いてリラックス。誰にも負けない俺たちのいつもの調子が戻ってきたよ。
「さあアレクけちょんけちょんにやってやるわよー!」
シュッシュッとシャドーボクシングの構えをするシルフィ。
「あとね、今度黒いレオタードと仮面も作ってよ。度ロン女サマみたく」
どこ向かってんだよシルフィ……。
――――――――――
円形闘技場東の出入口から俺は登場する。その決勝戦を前に。対面の西の出入口にはメヒコが見える。
「お兄ちゃん‥‥」
「アレク君お願い‥‥」
「アレク君‥‥」
やっぱり不安いっぱいの3人。口数も少ないな。アリサなんか泣きそうになってるし。
「心配するなアリサ。兄ちゃんがお前に嘘ついたこと、1回でもあるか?」
「ない。ないけど‥‥」
「俺の全力をみせてやるよ」
「うん‥‥」
1人ずつ握手をしていく。
「アリサ、お前は特に俺の脚捌きをよく見てろよ」
「うん‥‥」
ぎゅっ
ギュッ
「えっ!!」
ヘナヘナヘナ~……。
「フリージアの仇は俺がとるからな」
「うん‥‥」
ぎゅっ
ギュッ
「えっ!!」
ヘナヘナヘナ~……。
「ジーン、鞭杆(ベンガン)に俺くらいの動きが加わればお前は男よりも強くなるぞ」
「うん‥‥」
ぎゅっ
ギュッ
「えっ!!」
ヘナヘナヘナ~……。
俺の魔力にあてられてヘナヘナと腰が抜けたように尻もちをつく3人。
「じゃあいってくる」
「「「お兄ちゃん!(アレク君!)」」」
なんてカッコいいんだろう……。これぞ未成年者最強の漢だわ。
「2週にわたり続いた帝国最強の未成年者を決める大会。ついに最終日の決勝戦を迎えることとなりました」
ざわざわざわざわ
わーわーわーわー
ワーワーワーワー
ザワザワザワザワ
「それでは決勝戦。両雄に出場してもらいましょう」
「東の辺境ティティカカのティティカカ学園メヒコ君です」
「「「‥‥」」」
しーーーーーん
「テメーやりすぎなんだよ!」
「なめんなよー!」
ざわざわざわざわ
わーわーわーわー
ワーワーワーワー
ザワザワザワザワ
静寂の後に訪れる怒号の嵐。対戦相手を全員屠ってんだもんな。そりゃヒール役も仕方ない。
「お待たせしました。帝都学園最強、中原最強の未成年者、狂犬団団長アレク君の登場です!」
ウオオオォォーーーーーッッ!
狂犬、狂犬、狂犬、狂犬、狂犬‥‥
変態、変態、変態、変態、変態‥‥
ウオオオォォーーーーーッッ!
「はい、アレク君出てください」
「は、は、はいーっ」
ギギッ ギギッ ギギッ ギギッ‥‥
「お兄ちゃん‥‥また両手両脚一緒に出てる」
「顔引き攣ってるわ」
「「「はぁ‥‥」」」
――――――――――
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