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第2章 幼年編
571 最悪の結末①
しおりを挟む「カー助、カー助」
カーカー カーカー
空中からカーカー鳴いてカラスが降りてきた。
「よーしよし。カー助よーしよし」
爺ちゃんに羽根を撫でられて気持ちよさそうに目を閉じるカー助。
まだ元気だったころ。
夏休みにには東北の爺ちゃん家に遊びに行くのが楽しみだったんだ。
その年の夏、爺ちゃんはカラスをペットのように放し飼いにしてたんだ。
爺ちゃんがカー助と呼ぶとどこからともなくカラスのカー助はやってくるんだ。
よく慣れたカー助は爺ちゃんの手から餌も食べたし、爺ちゃんが背中を撫でると気持ちよさそうな顔をしてたよ。
野良猫に襲われて怪我をしたカラスを爺ちゃんが助けたんだって。それ以来、餌も食べるし触らせてくれるくらいに慣れたんだって。
「自分の名前もちゃんと理解しとるからカー助は犬猫よりも賢いぞ」
「羽根が黒いから嫌われちょるが、こいで羽根が白かったら絶対もっと好かれとろうもん」
あの頃の俺はカラスの良さは分からなかった。だけど、気持ち悪いとも思わなかった。
次の年の夏休み。カー助はいなかった。爺ちゃんは話さなかったけど婆ちゃんに聞いたら近所の中学生が庭に入って慣れてるカー助をバットで殴ったんだって……。
俺はその時、人のほうが酷いって思ったよ。
なぜかそんな懐かしいことを思い出したよ。
試合開始前。
メヒコの近くに降り立ったカラス3羽が嘴をカチカチッって鳴らしたんだ。
「シルフィ、カラスの嘴のカチッって音がスイッチだよね?」
「そうね‥‥」
シルフィは何かを考えてるみたいだった。
「ちょっとジンのところに行ってくるわ」
「うん‥‥」
「準決勝の2試合め。東の辺境ティティカカのティティカカ学園メヒコ君 対 北の辺境コートのコート学園カラス君の対戦です」
やはり。メヒコはメイスはおろか何も持っていなかった。
今度ばかりは1撃では倒せないだろうな。最低でもカラス(鳥)がカラス(人)を守ってるから、そのガードをなんとかしなきゃならないし、だいたい今度ばかりはカラス(人)もけっこうやるからな。
【 ジンside 】
まだまったく魔力は感じんわ。
おっ。カラスが飛んできたの。
ふむ。誰も気にもとめんの。
「「「カチッ」」」
ゴオオオォォォッッッッ!
メヒコ君の体内から膨大な魔力が噴出したわい。間違いなく闇堕ちした悪き魔力じゃ。
なるほどの。
「ジン!」
「シルフィちゃん。アレク君の言うたとおりじゃわい」
「違うのよジン。カラス3羽を見て」
「して。カラスがどうかしたかの‥‥」
「シルフィちゃん!これは!?」
「ええ。どこかに映像を送ってるわ!」
――――――――――
「メヒコ君対カラス君、互いに礼」
ペコリ
‥‥
「それでは始‥」
ダーーーーンッッ!
そのままカラスが倒れたんだ。
カラス(人)は即死だった。
――――――――――
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