アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
561 / 722
第2章 幼年編

562 武闘祭出場校

しおりを挟む


 【  ●●●●side  】

 「くそっ!思い出すだけで腹が立つ!」

 「そうだよビックスさん。あんたほどの男がなんで騎士団をやめされられるんだよ」

 「そうだろ。そのとおりなんだよ。なんで俺ほどの男が‥‥‥‥‥‥」

 「眠ったな。ヨシ。この調子だ。どんどん怒りを膨らませろ」

 「へい」

 「なんでなんでなんで。違う、違う、違う‥‥。くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い‥‥」

 「まだだ。まだまだだよビックスさんよ。クックック」


――――――――――


 【  アレク・フリージアside  】

 「フリージア目線だよ、目線」

 「目線がなにアレク君?」

 「フリージアはさ、いい意味でもそうでない意味でも素直なんだよ。だから狙う対象をじっくり見てレイピアを振るうだろ。それは強くなった相手にとって御しやすくなるだけだぞ」

 「ん?」

 「右向いてて左狙われたらどうだ?」

 「あっ!たしかにそうだわ」

 「明後日向きながらこっち突いてくる奴なんかふつうにいるぞ。逆にフリージアもそうならなきゃダメだぞ」

 「ハァハァ‥‥ホントねアレク君!
 あ~疲れた。汗びっしょりよ」

 そう言いながら何気に胸元の汗を拭うフリージア。

 じーーーーーっ

目線どころか身体が固まるアレクにアリサの短刀の柄が頭を襲う。

 ガーーーンッッ!

 「お兄ちゃんどこじっと見てるのよ!」

 「痛っ!すいません‥‥」

 3人のその様子を影から見守るローズがまたしても呟いた。

 (なにタラタラやってるのよ‥‥)







 「フリージア、最初に比べたら格段によくなったわ。アレク坊のおかげだね」

 「うん。ローズお婆ちゃん!」

 「フリージアはまだアレク坊に勝つつもりなのかしら?」

 「うーん‥‥たぶん、いいえ、絶対にアレク君には勝てないわ。
 でもねローズお婆ちゃん、私アレク君と決勝を闘いたいわ」

 「そうねフリージア。がんばりなさい」

 「うん!」


――――――――――


 わーわーわーわー
 ワイワイワイワイ
 ワーワーワーワー
 わいわいわいわい


 ロイズ帝国帝都スタッズ内。
 凡そ2週間。未成年者武闘祭の予選が始まった。

 先に開催されたヴィヨルド領の武闘祭に倣い、1日1戦は未成年者の身体を気遣ってのものである。

 聖職者に冒険者。回復職のサポート体制は万全。ハイポーションからエリクサーなど。高価な回復薬の準備も十分。

 わーわーわーわー
 ワイワイワイワイ
 ワーワーワーワー
 わいわいわいわい
 

 帝都スタッズの円形闘技場。

 収容人数50,000人ともいわれたローマのコロッセオよりもひと回り大きなそれは収容人数も75,000人ほど。予選から既に満席である。

 この世界の人々の視力が良いことはもちろんなのだが、娯楽に飢えた人々にとって未成年者といえど、武闘祭は格好の娯楽を提供するものだった。


 「「ハチ!」」

 「「ハチ!お前家業を忘れて何してやがる!」」

 「家業は兄ちゃんたちががんばればいいんす。僕は僕で狂犬団が儲かれば巡り巡ってミカサ商会も儲かるからそれでいいんす!」

 ピューっと家から走り去る末っ子の後ろ姿を恨みがましく見つめる兄2人。

 「イチ、サン。ハチの好きにやらせればいいんだ」

 「だって父ちゃん!?」

 「ハチの言うとおりだ。狂犬団が組織として確立すればミカサ商会にとっても大きな得意先様になるんだからな」

 (あの子狸、いったい誰に似たのやら‥‥)


 「みんないいっすね。この2週間ほどが狂犬団売り子部隊にとってかきいれどきなんすよ」

 「「「そうすねハチさん!」」」

 「2週間で半年分は稼ぐっす!」

 「「「おおー!」」」

 円形闘技場内にいつのまにか狂犬団販売店を設置させたハチがさらに数多くの売り子を前に陣頭指揮を執っている。

 「ドン様、トン様売り子部隊って‥‥」

 「おギン気にすんなよ。いいんじゃね、ねぇ兄ちゃん?」

 心配するギンを始めとする狂犬団の幹部連を前に、ドンは笑いながらハチを擁護した。

 「フッ。金儲けだけは俺らの誰よりできるのがハチだからな」

 「いいっすか。学園価格の3倍でも飛ぶように売れるはずっすよ。だから売りまくるっすよ」

 「「「おおーっ!」」」

 「しっかり稼ぐっすよー」

 「「「おおー!」」」


 円形闘技場に溢れる観客をターゲットにした売り子チームの編成。
 それは屋台を構える「待ち」の営業スタイルから観客席まで届ける「攻め」のスタイルの構築。
 しかも他店の肉串にはない豊富な品揃え。

 よって市中価格よりははるかに高い価格の商品、学園内購買価格の3倍でも十分に完売できると踏んだハチのそろばん勘定であった。
 

――――――――――


 「明日からの決勝戦。俺たちもいよいよ出番だな」

 「そうね」

 「決勝で会えるといいなフリージア」

 「ええアレク君」

 「今のお前なら油断しなきゃ結構やれるからな。がんばれよ」

 「がんばってねフリージアさん」

 「アレク君にアリサちゃん。本当にありがとうね。結局あの日から毎日のように修練に付き合ってもらったわ」

 「気にすんな。フリージアももう友だちだからな」

 「お兄ちゃんの言うとおりよ」

 「ありがとう!ハァハァ、でも疲れた。今日も汗でびっしょりよ」

 そう言いながら毎度のお約束のように胸元の汗を拭うフリージア。

 じーーーーーっ

 目線どころか身体が固まるアレクもお約束。
 そして。アリサの短刀の柄がアレクの頭を襲うのもお約束。

 ガーーーンッッ!

 「お兄ちゃん!毎日毎日どこ見てるのよ!」

 「すいません‥‥」

 (あの子ったら‥‥)

 ローズのぼやきもまたお約束である。


――――――――――


 「いよいよ出揃ったな。決勝戦の出場校が」

 「予選免除校は6校、予選会からの勝ち上がり4校だよな」

 「はい。まあ当然といえば当然ですね」

 「予選を勝ち抜いた4校の学校名は?」

 「えーっとですね、自治領アブルサムのアブルサム学校、辺境コートのコート学園、辺境ティティカカのティティカカ学園、ティンギュー村のティンギュー学園です」

 「合計10校だな」

 「はい。10校からの決勝トーナメントとなります」

 「①枠は帝都学園。これ以外は実行委員会立ち会いの下、抽選で決定だ」

 
 あとから聞いたんだけどね、帝都学園、つまり俺は準決勝不戦勝の枠に入ってたんだって。帝都学園とあたる学園は道を断たれるのがかわいそうっていのがその理由なんだって。それだけ帝都学園の武は広く認知されてたってわけなんだよね。


 未成年者武闘祭決勝出場校

    ①  帝都学園
 ②  帝都騎士団養成校
 ③  陸軍兵学校
 ④  帝都学校(アポロ校)
 ⑤  魔法軍学校
 ⑥  モンク僧養成学校
 ⑦  自治領アブルサム学校
 ⑧  北の辺境コートのコート学園
 ⑨  東の辺境ティティカカのティティカカ学園
 ⑩  ティンギュー村のティンギュー学園


 ④の帝都学校は帝都学園と紛らわしいことから、居住区アポロに在る学校ってことでアポロ校って呼ばれてるんだって。



 ◎  武闘祭ルール

 未成年者(~15歳)限定。
 剣術、体術、魔法術。どれを使ってもいい。武装具もなにを使用してもいい。
 
 勝敗は審判団(主審及び副審2名)の審判によるものとする。
 闘技場の敷地を離れた場合、続行不可と認められた場合、自身の申告等により決する。
 なお不幸にして死亡に至らしめた当事者の責は問わない。



 魔法衣の着用もない真剣勝負。
 唯一危険防止の胸あて装備は推奨されているけど、やっぱゾクゾクするようなガチ勝負だもんな。

 「楽しみねーアレク」

 「だよねーシルフィ」

 「がんばるぞー」

 「「おぉー!」」

 
 このときの俺は単純に武闘祭参加を楽しんでたんだ。のちにまさかの事態があることも知らずに。


――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...