アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

555 賢人会と米

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 「食後は米で作ったデザートの外郎(ういろう)だよ」

 食後、ういろうをデザートに思い思い過ごした。デーツは半分夢の国だな。
 クロエはバブ婆ちゃんに初級学校の友だちの話を一生懸命している。アリサはマリアンヌ先輩と3人で、こちらも楽しそうだ。
 俺はエリザベスさんとお料理談義をしていたし、おっさん2人もなにやら密談をしていたよ。
 


 「(大殿、ローズ殿がかなりくいついてますな。冒険者ギルドのテーラー殿も交えてなにやら画策しておるらしいですぞ)」

 「(あの婆さんは策士だからな。昔はよく扱かれたよな)」

 「(ははは。全盛期は過ぎてたとはいえ、あの剣技はさすが剣姫といわせるものでしたからな)」

 「(孫娘、たしかフリージアだったか)」

 「(はい)」

 「(昔のあの婆さんみたく、美しさもかなりらしいな。その上に剣技か)」

 「(ええ。ローズ殿曰く、自身に継ぐ2人めの女性騎士団長になると)」

 「(まあしかし、アレクがあれではな‥‥
 見てみろペイズリー。あの馬鹿の中ではアリサはすっかりクロエと同じ妹の位置だ)」

 「ほらアリサ口の端にういろう付いてるぞ」

 ぺろっ

 「な、な、な、なにすんのよ!お兄ちゃんの変態!」

 バチーンッッ!

 「う、うう‥‥」

 「(なっ、あいつの中でアリサはクロエと同じ妹なんだよ。しかも最愛のな)」

 「(クックック。ですな)」

 「(まあ静観するしかなかろう。それでハニートラップにかかれば仕方あるまい)」

 「(なんとも‥‥歯痒いですな)」



 「そうだ!アリサ、クロエ。今度の休養日、魚を獲りにいくか?」

 「「魚?」」

 「ああ。米を握ったおにぎりに魚の切身を入れたらうまいんだぞ」

 「「行く!」」

 「デーツお前も行くんだからな!」

 「えっ?俺絵を描きたいし‥‥」

 「ダメですー。兄妹みんなで行くんですー。だから弟のお前に拒否権はありませんー」

 リア充のデーツにリアカーを引っ張らすんだ、ぜったい!

 「クソッ」


―――――――――――――――


 【  賢人会side  】

 シュークリームを食べながら、参加の者たちが活発な議論を戦わす。

 既に実務を退いた高齢者から現役の文官に武官まで。

 「人口はどうじゃ?」

 「冒険者の数は増えておるのか?」

 「周囲への備えはどうだ?」

 「魔獣は増えておるのか、減っておるのか?」

 その姿はつい先日までの賢人会にはなかった姿。国の施政者と助言者を結ぶ理想的な姿であった。
 


 「お待たせー爺ちゃん婆ちゃん」

 「「「おぉアレク坊」」」
 
 あっ!ゴリラの末っ子もいるよ!3兄弟揃ってるよ!

 「お前は本当に。恐れ知らずというか大馬鹿者だな!」

 「痛い痛い痛い!頭ぐりぐりしないでオヤジ!」

 今日は現役の偉い人も何人もきてるみたい。俺がリクエストしていた農業省の人もいるのかな。てか毎回人が増えてない?

 「朝メシは少しにしてきてくれたんだよね?」

 「さっきのしゅうくりいむだけじゃよ。年寄りとはいえさすがに腹が減るわい。しゅうくりいむは、もっとないのかえアレク坊?」

 「「「なにを食わしてくれるのかの?」」」

 「今日食ってもらうのはおにぎりだよ」

 「「「おにぎり?」」」

 「うん。大昔に主食だったお米を握ったものだよ」

 「まさかコメか!?アレク君!?」

 「うん。さすがジンさんだ」

 「「「なんじゃ老師?」」」

 「コメはな、神話の時代、主食と言われておったものじゃよ。たしかイネの実だったかのアレク君?」

 「うん。そのとおりだよ。米は一昨年の学園ダンジョンで俺が見つけたんだ。で、去年は俺の出身の村とわずかな村で栽培して今年はもっと収穫できてるはずだよ。来年はさらに作付面積も広くしてるからね。
 ああ帝国にはもちろん種籾を送るから、来年の春には植えられるよ。
 
 今日みんなに食べてもらうのは春にオヤジの家の庭に俺たちが植えたものだよ。
 ちなみに見た目はこんな感じ」

 「ほぉ麦とは違うものなんじゃなアレク坊」

 「そうだね。
 ジンさんが言ったように稲の実を米っていうんだ。そんでその実の米を炊いたものがご飯だよ」

 「ご飯ってあのご飯かえアレク坊?」

 「そうだよ婆ちゃん。お米のご飯から派生して食事全般をご飯っていうんだ。まぁ昔の言葉だけが今に残ったんだろうね。
 ああ、あといただきますはお米の生命をいただきますから言葉ができたみたいだよ」

 「アレク坊は老師並に古文書の研究をしとるの」

 「あははは。じゃあ食べてもらうね」

 「食べてもらうのはおにぎり。お米を炊いたもの、ご飯を握ったものがおにぎりだよ。

 今日のおにぎりは中にサーモ(鮭)の干物を挟んであるよ。
 作ったのは今朝。俺が学校に行く前。まあ食べてみてよ。
 ただ、お代わりはないからね。ゆっくり噛み締めてよ」

 「「「いただきます」」」

 もぐもぐもぐ‥‥
 モグモグモグ‥‥
 もぐもぐもぐ‥‥














 「「「うまい!」」」

 全員が絶賛していたよ。小麦で作る主食といったら堅いバゲットしかないんだからね。そりゃそうか。

 「でね、種籾は春に俺の村から送るからさ」

 「栽培はどうなんじゃ?」

 「大丈夫だよ。オヤジの息子のデーツとペイズリーさんの娘のマリアンヌ先輩に伝えてあるからさ。
 あとは農業庁の偉い人も一緒になって栽培してよ。村での栽培記録は本にしたから送るよ。あとは双方が手紙のやりとりをしながら作ってよ」

 「「「‥‥」」」

 「米は麦のあとに連作障害もなく作付できるからね。
 10年もすれば帝国の誰もが食べられるはずだよ。
 食糧事情はさらに良くなるし、米の輸出もできるはずだから帝国の農業大国への道も開けるよね」

 「それで農業大国の道を模索しろと‥‥」

 「昔の記録をみてると、米そのものを税として収めていたって記録もあるんだよね。

 俺さ、いずれは中原から魔獣はいなくなると思うんだよね。人口は絶対増えるから。
 そしたらさ、冒険者を含めてメシに困るじゃん。だったら今のうちから準備できることってあると思うんだ。

 なにかあったとき、帝国や大国、王国ではヴィヨルドくらいかな。生き残れるのはって俺、思うんだ」



















 「惜しい!アレク坊!アレク坊が変態であることが惜しいわい!」

 「皇帝の爺ちゃん、変態は関係ねぇわ!だいたい俺変態じゃねーし!」

 ワハハハハハ
 わははははは
 がははははは
 フフフフフフ
 ふふふふふふ

 「じゃあ俺帰るねー」
















 「アレク坊は春には王国に帰るんじゃろ?」

 「そうなりますわな」

 「わしは提案するぞ!」

 「「「わしもじゃ!私もじゃ!」」」

 「このまま王国に帰ってアレク坊との縁が切れてよいのか?」

 「もったいないじゃろ!」

 「「「そうじゃ!そうじゃ!」」」

 「というかの‥‥」

 「なんじゃいゴリラ3兄弟の長男?」

 「わしはな、アレク坊が次はなにをしてくれるのか楽しみでならんのじゃ」

 「「私もだわ」」

 「「わしもじゃ」」

 「次はなにを食べさせてくれるのかと、この賢人会が楽しみなんじゃ」

 「「「そうじゃな‥‥」」」

 「アレク坊をみてるとなぜかワクワクするんじやわい」

 「のおゴリラの次男。お主の娘となんとかならんのか?」

 「あーだめだな。娘のアリサはその気なんだがな。あいつは‥‥アレクは本物の馬鹿だからな、アリサを妹として認識しとるわ」

 「やはり誰かの孫娘を使ってハニトラかの?」

 「「それじゃあわしの孫娘はどうじゃ?」」

 「「わしんとこは?」」

 「「私の孫娘も!」」






 「1つ、わしから提案がある」
 
 「「「老師?」」」


―――――――――――――――


―――――――――――――――


 「チューラットさん尻尾が!」

「あっ!熱っっ!」


―――――――――――――――


 「ただいまー」

 「お帰りなさい」

 「今日はさ、集中しすぎて尻尾が火傷するまで気がつかなかったよ」

 「まあ!」

 「ほらみてくれよ」

 見るとチューラットの尻尾の先が赤く火脹れていた。

 「まあチューラットったら」

 わはははは
 フフフフフ


―――――――――――――――



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