アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
554 / 722
第2章 幼年編

555 賢人会と米

しおりを挟む


 「食後は米で作ったデザートの外郎(ういろう)だよ」

 食後、ういろうをデザートに思い思い過ごした。デーツは半分夢の国だな。
 クロエはバブ婆ちゃんに初級学校の友だちの話を一生懸命している。アリサはマリアンヌ先輩と3人で、こちらも楽しそうだ。
 俺はエリザベスさんとお料理談義をしていたし、おっさん2人もなにやら密談をしていたよ。
 


 「(大殿、ローズ殿がかなりくいついてますな。冒険者ギルドのテーラー殿も交えてなにやら画策しておるらしいですぞ)」

 「(あの婆さんは策士だからな。昔はよく扱かれたよな)」

 「(ははは。全盛期は過ぎてたとはいえ、あの剣技はさすが剣姫といわせるものでしたからな)」

 「(孫娘、たしかフリージアだったか)」

 「(はい)」

 「(昔のあの婆さんみたく、美しさもかなりらしいな。その上に剣技か)」

 「(ええ。ローズ殿曰く、自身に継ぐ2人めの女性騎士団長になると)」

 「(まあしかし、アレクがあれではな‥‥
 見てみろペイズリー。あの馬鹿の中ではアリサはすっかりクロエと同じ妹の位置だ)」

 「ほらアリサ口の端にういろう付いてるぞ」

 ぺろっ

 「な、な、な、なにすんのよ!お兄ちゃんの変態!」

 バチーンッッ!

 「う、うう‥‥」

 「(なっ、あいつの中でアリサはクロエと同じ妹なんだよ。しかも最愛のな)」

 「(クックック。ですな)」

 「(まあ静観するしかなかろう。それでハニートラップにかかれば仕方あるまい)」

 「(なんとも‥‥歯痒いですな)」



 「そうだ!アリサ、クロエ。今度の休養日、魚を獲りにいくか?」

 「「魚?」」

 「ああ。米を握ったおにぎりに魚の切身を入れたらうまいんだぞ」

 「「行く!」」

 「デーツお前も行くんだからな!」

 「えっ?俺絵を描きたいし‥‥」

 「ダメですー。兄妹みんなで行くんですー。だから弟のお前に拒否権はありませんー」

 リア充のデーツにリアカーを引っ張らすんだ、ぜったい!

 「クソッ」


―――――――――――――――


 【  賢人会side  】

 シュークリームを食べながら、参加の者たちが活発な議論を戦わす。

 既に実務を退いた高齢者から現役の文官に武官まで。

 「人口はどうじゃ?」

 「冒険者の数は増えておるのか?」

 「周囲への備えはどうだ?」

 「魔獣は増えておるのか、減っておるのか?」

 その姿はつい先日までの賢人会にはなかった姿。国の施政者と助言者を結ぶ理想的な姿であった。
 


 「お待たせー爺ちゃん婆ちゃん」

 「「「おぉアレク坊」」」
 
 あっ!ゴリラの末っ子もいるよ!3兄弟揃ってるよ!

 「お前は本当に。恐れ知らずというか大馬鹿者だな!」

 「痛い痛い痛い!頭ぐりぐりしないでオヤジ!」

 今日は現役の偉い人も何人もきてるみたい。俺がリクエストしていた農業省の人もいるのかな。てか毎回人が増えてない?

 「朝メシは少しにしてきてくれたんだよね?」

 「さっきのしゅうくりいむだけじゃよ。年寄りとはいえさすがに腹が減るわい。しゅうくりいむは、もっとないのかえアレク坊?」

 「「「なにを食わしてくれるのかの?」」」

 「今日食ってもらうのはおにぎりだよ」

 「「「おにぎり?」」」

 「うん。大昔に主食だったお米を握ったものだよ」

 「まさかコメか!?アレク君!?」

 「うん。さすがジンさんだ」

 「「「なんじゃ老師?」」」

 「コメはな、神話の時代、主食と言われておったものじゃよ。たしかイネの実だったかのアレク君?」

 「うん。そのとおりだよ。米は一昨年の学園ダンジョンで俺が見つけたんだ。で、去年は俺の出身の村とわずかな村で栽培して今年はもっと収穫できてるはずだよ。来年はさらに作付面積も広くしてるからね。
 ああ帝国にはもちろん種籾を送るから、来年の春には植えられるよ。
 
 今日みんなに食べてもらうのは春にオヤジの家の庭に俺たちが植えたものだよ。
 ちなみに見た目はこんな感じ」

 「ほぉ麦とは違うものなんじゃなアレク坊」

 「そうだね。
 ジンさんが言ったように稲の実を米っていうんだ。そんでその実の米を炊いたものがご飯だよ」

 「ご飯ってあのご飯かえアレク坊?」

 「そうだよ婆ちゃん。お米のご飯から派生して食事全般をご飯っていうんだ。まぁ昔の言葉だけが今に残ったんだろうね。
 ああ、あといただきますはお米の生命をいただきますから言葉ができたみたいだよ」

 「アレク坊は老師並に古文書の研究をしとるの」

 「あははは。じゃあ食べてもらうね」

 「食べてもらうのはおにぎり。お米を炊いたもの、ご飯を握ったものがおにぎりだよ。

 今日のおにぎりは中にサーモ(鮭)の干物を挟んであるよ。
 作ったのは今朝。俺が学校に行く前。まあ食べてみてよ。
 ただ、お代わりはないからね。ゆっくり噛み締めてよ」

 「「「いただきます」」」

 もぐもぐもぐ‥‥
 モグモグモグ‥‥
 もぐもぐもぐ‥‥














 「「「うまい!」」」

 全員が絶賛していたよ。小麦で作る主食といったら堅いバゲットしかないんだからね。そりゃそうか。

 「でね、種籾は春に俺の村から送るからさ」

 「栽培はどうなんじゃ?」

 「大丈夫だよ。オヤジの息子のデーツとペイズリーさんの娘のマリアンヌ先輩に伝えてあるからさ。
 あとは農業庁の偉い人も一緒になって栽培してよ。村での栽培記録は本にしたから送るよ。あとは双方が手紙のやりとりをしながら作ってよ」

 「「「‥‥」」」

 「米は麦のあとに連作障害もなく作付できるからね。
 10年もすれば帝国の誰もが食べられるはずだよ。
 食糧事情はさらに良くなるし、米の輸出もできるはずだから帝国の農業大国への道も開けるよね」

 「それで農業大国の道を模索しろと‥‥」

 「昔の記録をみてると、米そのものを税として収めていたって記録もあるんだよね。

 俺さ、いずれは中原から魔獣はいなくなると思うんだよね。人口は絶対増えるから。
 そしたらさ、冒険者を含めてメシに困るじゃん。だったら今のうちから準備できることってあると思うんだ。

 なにかあったとき、帝国や大国、王国ではヴィヨルドくらいかな。生き残れるのはって俺、思うんだ」



















 「惜しい!アレク坊!アレク坊が変態であることが惜しいわい!」

 「皇帝の爺ちゃん、変態は関係ねぇわ!だいたい俺変態じゃねーし!」

 ワハハハハハ
 わははははは
 がははははは
 フフフフフフ
 ふふふふふふ

 「じゃあ俺帰るねー」
















 「アレク坊は春には王国に帰るんじゃろ?」

 「そうなりますわな」

 「わしは提案するぞ!」

 「「「わしもじゃ!私もじゃ!」」」

 「このまま王国に帰ってアレク坊との縁が切れてよいのか?」

 「もったいないじゃろ!」

 「「「そうじゃ!そうじゃ!」」」

 「というかの‥‥」

 「なんじゃいゴリラ3兄弟の長男?」

 「わしはな、アレク坊が次はなにをしてくれるのか楽しみでならんのじゃ」

 「「私もだわ」」

 「「わしもじゃ」」

 「次はなにを食べさせてくれるのかと、この賢人会が楽しみなんじゃ」

 「「「そうじゃな‥‥」」」

 「アレク坊をみてるとなぜかワクワクするんじやわい」

 「のおゴリラの次男。お主の娘となんとかならんのか?」

 「あーだめだな。娘のアリサはその気なんだがな。あいつは‥‥アレクは本物の馬鹿だからな、アリサを妹として認識しとるわ」

 「やはり誰かの孫娘を使ってハニトラかの?」

 「「それじゃあわしの孫娘はどうじゃ?」」

 「「わしんとこは?」」

 「「私の孫娘も!」」






 「1つ、わしから提案がある」
 
 「「「老師?」」」


―――――――――――――――


―――――――――――――――


 「チューラットさん尻尾が!」

「あっ!熱っっ!」


―――――――――――――――


 「ただいまー」

 「お帰りなさい」

 「今日はさ、集中しすぎて尻尾が火傷するまで気がつかなかったよ」

 「まあ!」

 「ほらみてくれよ」

 見るとチューラットの尻尾の先が赤く火脹れていた。

 「まあチューラットったら」

 わはははは
 フフフフフ


―――――――――――――――



いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...