アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

549 ラーメンチェーン

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 「ようやくギルドでお会いすることができましたなアレク君。それともアレク様がよろしいかな。ガハハハハ。
 では改めまして帝都商業ギルドのカサンドラ・ミョクマルですわい」

 商業ギルド長のカサンドラさんとは保険の打合せ等で何度も顔を合わすようにはなったんだけどね。

 「あははは。じゃあ俺も改めて、帝都学園3年のアレクです。
 カサンドラさん、ミョクマルということは‥‥?」

 「はいはい、ヴィヨルドのカミール・ミョクマルはわたしの従兄弟ですわい。
 ミョクマル一族は商いを生業としておりましてな。カミールは戦時にチャンスを求めて王国へと渡ったのですよガハハハハ」

 「そうだったんですか」

 帝都の商業ギルド長のカサンドラさんもヴィヨルドのカミールさんによく似た風貌の、でっぷりとした愛嬌のある人だった。
 顔はまんま‥‥まさかハチのホントの父ちゃんかよ!?

 「ハチ君は他人とは思えないくらい私に似てますな。ひょっとして私がどこぞで何かしでかした結果かもしれませんなガハハハハ」

 「あははは。それホントだったら怖いですよ」

 ガハハハハハ
 わははははは

 「ハチ君もまだまだ若いのになかなかの逸材ですぞ。ミカサ商会さんは人材の宝庫ですな」

 「あの仔狸がですか?!」

 ワハハハハハ
 ガハハハハハ

 「さてアレク君、今回は面接の代行と帝都で商いをする建屋を探すご依頼でしたな」

 「はい。食堂を開きたいと思ってまして。帝都の東西南北と中、港の各区に1つづつ食堂のできる物件を探してもらいたいことと、そこで働く人の募集並びに面接です」

 「それはまた‥‥」


 ラーメンチェーン店を作ることにしたんだ。
 帝国は中原で最大の小麦の生産地だからね。パン同様に小麦粉で作るラーメンは帝国の食材だけで賄えるからさ。

 250万都市の帝都スタッズの居住区だからラーメン屋さんの10軒や20軒は余裕じゃないかな。

 帝都の各地区ごとに違う味わいのラーメン屋があったら楽しくない?
 塩ラーメン、醤油ラーメン、豚骨ラーメンetc。各区を回ればそのたびに違う味のラーメンが食べられるなんて楽しいんじゃない?

 だからいよいよラーメン作りを始動させることにしたんだ。だってラーメンは俺大好きだし。

 ラーメンの麺作りに必須のかんすいは、灰汁でカバーできることもアーカイブで知ったし。

 じゃあなんでラーメンチェーン店かって?
 しかもFC展開のラーメンチェーン店を作ろうと思ったんだ。

 いちおうアレクグループみたいにアレク工房の名前もどっかには出るけど、基本的には個人経営のお店にしたいんだ。だから店を構えるための資金も出してもらうよ。
 これはね、言ってみれば覚悟のある店主にラーメン屋さんをやってもらいたいんだよね。でももちろんチェーン店同士が助けあってやってもらいたいからラーメンチェーン店でいく方針なんだ。

 「FC(フランチャイズ)かよ!考えたねアレク!」

 「そうなんだ。どうかなシルフィ?」

 「おもしろいじゃん!」

 トータルアドバイザーのシルフィのお墨付きだからいいんじゃないかな。


 FC店の店主さんたちには店舗経営が落ち着いたら、オリジナリティのあるラーメンを出してほしいな。
 一国一城の主みたいなもの?そんなラーメン屋さんのFC展開なんだ。


 「その仕組みもおもしろいですなぁアレク君」

 「でしょ。小麦粉や肉などの食材は本部で一括購入をするから安く購入できるし、チェーン店ってことでやりやすくなることが多いと思うんだよね」

 「ふむふむ。その上で出資させると」

 「うん。資金面でのリスクを負ってもらうから商売に真剣さも増すんじゃないかな」

 「なるほど!」


 それと今回のラーメン屋さんでは、ラーメンにつきもののカトラリー、箸を普及させたいんだ。
 だって箸が普及したら社会全体がもっと衛生的になるよね。だからラーメン屋さんの各店舗では箸を常備するし、ゆくゆくはマイ箸を推奨して、マイ箸持参の人にはサービスもつけたりしてね。

 「それで募集する従業員は?」
 
 「うん。ラーメン屋さんで働く人には、男女問わず安定した給与の支給を考えてる。それと独立支援制度を作る。どう?」

 「独立支援制度?」

 「うん。最初に出資するだけのお金はないけど、いつかは独立したい人には従業員とは別の給与体系にする。そしてその人が独立するための金銭的支援をするんだ。それが独立支援制度」

 「ほう。それは商業ギルドでもありそうでなかったですな。なかなかおもしろそうだわい」

 「でしょ。でさカサンドラさん‥‥」

 カサンドラさんとはいろいろと打合せをひたよ。それと製麺マシーンも商業ギルドで登録したんだ。

 その名も製麺マシーン300型(なんとなくそれっぽいでしょ)。
 これで細麺、中太麺、太麺と好きな麺が作れるよ。

 肝心のスープはブッヒーやコッケーの骨から抽出したものや魚介類、さらに合わせ技のダブルスープもいいよね。冒険者ギルドの解体場の魔獣の骨なんかも味が違ってておもしろいかもしれないよね。
 なにより味の決め手になるカエシの素、醤油もできたんだし。

 チャーシューはソーセージ工房で作ってるし。コッケーの卵は大きいけど煮卵にしてスライスすれば逆に映えるよね。刻みネギはまんまネギーで。当初は本部一括だけどゆくゆくは各店舗にやってもらえばいいかな。

 ラーメンの価格は各店舗統一にしてもらう。こうしたら価格競争にはならないからね。
 700(並)~1,000Gくらいでいいんじゃないかな。値段が高くなれば全のせとかチャーシュー増しとか特製にしてね。


―――――――――――――――


 【  マイ、チューラットside  】

 「マイ、すごい話を聞いてきたぞ!チャンスなんだ!」

 「そんな大声出さないで。やっと寝たこの子が起きるわ」

 「すまんすまん。あのな、アレク工房さんって聞いたことあるか?」

 「え、ええ‥‥」

 「あのな、そのアレク工房さんが帝都で新しく食堂を開くそうなんだ。らあめんとか言ってたな」

 「らあめん?」

 「ああ。すごくうまいらしいんだ。それでな、その食堂を帝都にいっぺんに6つ開くそうなんだ!」

 「食堂?チューラット、あんた料理なんてできないじゃない?」

 「ああ。俺はなんにもできないよ。ただな、その食堂で勤めることができたら、3年後には店が持てれるそうなんだよ!しかもその間も給金までくれるんだってよ!」

 「まあ!でもそんないい話‥‥」

 「ああ商業ギルドで試験があるんだってよ」

 「倍率も高そうね‥‥」

 「ばいりつ?なんだそれ?マイはときどき俺が知らねぇことを言うよな。頭がいいんだな」

 「‥‥。チューラット、それって試験を受けるための資格はあるの?」

 「それがないんだってよ!人族だろうが獣人族だろうが関係ないし、俺みたいに学校でさえ満足に行ってなかったって関係ねぇんだってさ!」

 「それはすごい話ね!」

 「だろ!俺はもちろんダメだとは思うんだけどよ、なんかやらなきゃいけないからな。
 そしてお前とチュータの3人で日の当たる真っ当なところで暮らしたいからな」

 「ええ!」

 「だからよ、ダメ元でその試験ってやつを受けてくるよ!」

 「わかったわ。がんばってねチューラット」

 「ああマイ」

―――――――――――――――

 「カサンドラさん、ラーメン屋で働いてもらう人の試験。
 学校出てなくても字が書けなくてもいいからね」

 「それはまたアレク君思いきったことをするんだね」

 「うん。だってさ魔法や剣術、仕事といっしょで才能もなくっていいんだよ。最初はできなくてもだんだん覚えればいいんだから」

 「じゃあ最低限必要なことは‥‥」

 「うん。真面目なこと。悪いことをしないこと。日々努力することくらいかな」

 「なんともアレク君らしいですなガハハハハハ」

 「帝都でさ、貧しかったり差別されてた獣人が成功できたら面白くない?
 強くなくても頭が良くなくても、ちゃんとやれば成功するって知ればみんなの希望になるじゃん」

 「こりゃたしかにミョクマルの奴がアレク君に期待するはずじやわい」

 「じゃあさカサンドラさんに任せるからいい人集めてよ」

 「任せてくださいよアレク君ガハハハハハ」


―――――――――――――――

 
 「ギルド長、こんな問題でどうですか?」

 『ラーメン屋は清潔第1です。材料から商品、店内に至るまできれいにしなければなりません』

 「これを問題文にして最初に人数を絞ったらどうでしょう?」

 「うん、いいね。じゃあその方向で頼みますよ」



―――――――――――――――


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