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第2章 幼年編
547 青雲館オープン
しおりを挟む9月に入ってすぐに。
青雲館がついに本オープンしたんだ。
「準備はいいわね」
「「「はい!」」」
「青雲館、ただいまより開館いたします」
サラさんの発声が拡声魔法にのって青雲館内外に響く。
ドーンッ ドーンッ!
どーんっ どーんっ!
ドーンッ ドーンッ!
空に花火も上がる。
花火はアリサをはじめ火魔法を発現できる団員のものだから費用もかからないんだ。
「「「ほぉ~これがな」」」
「「「これは下手な宿屋よりもすごいな」」」
「「「さすがアレク坊じゃわい」」」
「「「そうじゃのぉ」」」
本館3階に集まってくれたのはたくさんの人たち。当初は各区の神父様やシスターの教会関係者や初級学校の先生たち30人くらいを想定してたんだけどね。
「(団長あの人ってまさか‥‥)」
「(うん、先先代の皇帝の爺ちゃん)」
「(団長あの人って‥‥)」
「(うん、冒険者ギルドのテーラー顧問)」
「(団長あのご婦人って‥‥)」
「(うん、女性初の帝都騎士団長だった婆ちゃん)」
「(‥‥)」
「(キース君どうしたの?)」
「(‥‥)」
来賓が多いことといったら。帝国文科省の教育関係者の偉い人をはじめ、大人ばかりが100人を超えて集まってくれたんだ。
そう、先先代皇帝陛下を筆頭に賢人会の爺ちゃん婆ちゃんたちがみんな来てくれたんだ。
「団長、偉い爺ちゃんや婆ちゃんたちが祝金をくれたっす」
「へぇーさすがだよなぁ」
「うへへっ。ガッポガッポっす」
ハチの目が$になっていたけど……。
「ハチ、父ちゃんも来てるじゃん」
「当然っす。父ちゃんからもたくさんふんだくってやったっす」
「大丈夫かお前ら親子?」
金儲け大好きなハチの父ちゃんもミカサ会長同様に正しいお金の使い方ができるんだよな。
プレオープンは既に夏休み前にしてるよ。
行くあてのない子どもたちを7月から受け入れてたんだけど、これからは常時受け入れが可能なんだ。最大数250人くらいまではね。
カリキュラム。成人になるまでのプログラムも整ってるし、衣食住の心配もない。
もちろん心の支えとなる教官のサポートもある。メアリさん他、元女神教シスター2人による祭祀も許可されたから青雲館内には教会も設置したからね。
貧民街出身の子どもや浮浪児が成績優秀になれば、ゆくゆく帝都学園にさえ入学できるようになればいいな。
式典のあと。
食堂で子どもたちが食べるものと変わらないものをみなさんに提供したんだ。
「アレク君これは冒険者よりもいいものだな」
「テーラーさん、あははは」
サラさんの周りには教育関係者たちが、メアリさんの周りには各地区のシスターたちが集まっていたよ。
「「「サラさん(メアリさん)、これなら安心して子どもたちを任せられるよ(わ)」」」
「「ありがとうございます。どうぞ安心して子どもたちを送ってください」」
「メルル先輩、いよいよだね」
「ええ。ついにここまで来たっていうか、これからだよねアレク君」
「そうだね」
【 元6年10組50位side 】
「なぁお前ら、そろそろあの女にも飽きてね?」
「「「だな」」」
「しかもよアイツ、腹出てきてねぇか?孕んじまったか?」
「やっぱタネは犬ころかネズミじゃねぇか?早すぎんだろワハハハハ」
「俺ら馬や猿なら年1だからな。犬やネズミなら年3や年4もあるからなワハハハハ」
「まぁよタネが誰であれ、ぼちぼちじゃね?」
「ああ。ややこしくなる前にゴブリンの巣にでも捨ててくるか」
「「「だなぁ」」」
「なぁあの女、俺にくれねぇか?」
「なんだネズミ?どうしたよ?」
「捨てるんならあの女、俺にくれよ」
「いいけど、オメーも変わってるな」
「そりゃネズミの性格じゃねぇか?
なにせいつまでも同じ穴に住みたがるからなワハハハハ」
「「「なるほどなワハハハハ」」」
「いいぜネズミ。連れてけよ。その代わり飽きて捨てるのもテメー1人でやれよ」
「わかった。ありがとよ」
▼
「女、起きろ」
「はい‥‥」
「この服を着ろ」
「まさかゴブリンの巣?!
イヤ、それだけはやめて!ゴブリンの巣に捨てるくらいならこの場で殺して!」
「‥‥殺さねぇよ。オメーはこれから俺の家にきてもらう」
「えっ?」
「このまま捨てるか俺ん家に来るかどっちか選べよ」
「どういうこと?」
「こ、こ、こんなこと言っても信じねぇだろうけど、俺はオメーが気に入ったんだよ。てか惚れてんだよ!」
「えっ?だってこの2月3月の私の姿を知ってるでしょ!?お腹には誰の子ともわからない子どもまで妊娠してるし‥‥」
「ああ知ってるよ。俺もオメーに世話になった1人だからな」
「アンタ‥‥バカなの?」
「ああ。俺は見てのとおり腕っぷしも弱いし、頭も悪いネズミ獣人なんだよ!そんでも俺はお前が気に入ってんだよ!お前に惚れてんだよ!」
「‥‥バカね」
「どうするよ?」
「連れてって」
「そうか!」
「私はマイ。あなたは?」
「俺はチューラット」
「チューとラットでチューラット?」
「ああ」
「まんまね」
「わかりやすいだろ」
「ふふふ」
「お前の笑顔初めて見たぞ。やっぱお前はかわいいな」
「ばか」
こうして人族の女は港区の貧民街でも最も劣悪な環境下でネズミ獣人と居を構えることになる。
6年10組50番マイ
歯が抜け痩せ細った身体からは学園生当時の面影は皆無。
「オギャーッ!」
貧民街に寒風吹き荒ぶころ。荒屋に1人の赤ちゃんが産まれた。それは人族とネズミ獣人のミックス。
父チューラット、母マイの子どもである。
「あんた!」
「マイ!」
「俺たちの子どもだ!」
「ええ!」
「この子が大きく育つように。俺も真っ当な仕事をしなきゃな」
「ええ!」
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