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第2章 幼年編
533 救出に向けて
しおりを挟む緑色をしたガタロみたいな奴が言ったんだ。
「えっ?!ガタロが喋った?」
「俺たち海人族はガタロとは違う!
容姿と背格好が似て見えるのは仕方ない。が、奴らには魔石があるが俺たち海人族には魔石はない。
だいたいガタロは裸だが俺たち海人族はふだんは服を着ている。
ガタロは「グワッグワッ」と言うばかりで言葉を理解しない。人を襲うばかりだ。
でも俺たちは中原の言葉を理解し使用するし、好んで人は襲わない。俺たちは‥‥」
「ごめん!知らないとはいえ、お前に嫌な思いをさせた。俺が悪かった」
頭を下げて謝ったんだ。
「「「えっ!?」」」
俺が謝ったのには海人族はもちろんデグー一族にも意外だったらしい。
「フフフ」
なぜかシルフィだけは笑っていたけど。
「俺はアレク。よろしくな」
「‥‥ジョングだ」
そのままジョングと握手したんだ。
(なるほどね)
たしかにガタロじゃないな。そこからは人特有の魔力の流れを感じることができたんだ。そしてジョングはごくわずかながら体内に魔力をまとっていたんだ。
「ジョング、お前水中移動はもっと速くできるし、水魔法も発現できるよな」
「アレクはわかるのか?」
「ああ、ちょっぴりな」
「「う、ううっ‥‥」」
「目を覚ましたか?」
「「「ジョング様?!」」」
少しづつ何人かの海人族が目を覚ましだしていたよ。
「ジョング、さっきお前らは遠慮したな」
そうなんだ。ガタロなら姿を現したと同時に、或いは姿を表す前に水鉄砲くらいの攻撃はしても不思議じゃないんだよね。
だけど、ガタロより攻撃力のあるジョングたち海人族は攻撃に「手ごころ」を加えていたんだ。
「命令とはいえ、悪くもない人を傷つけたくはないからな‥‥」
「「「!」」」
これには猫のお姉さんをはじめ、草さんたちみんなが驚いていたよ。
薄々ジョングたちが襲ってきた理由もわかってきたぞ。きっと脅迫されてるな。
「で‥‥誰が捕まってるんだ?」
「アレクはそこまでわかるのか!」
「いや、誰だってわかるだろ」
「実は今の人族たちに私たち一族の子どもが捕まってるんだ。だから言うことを聞かないと子どもたちが‥‥だから命令に逆らうことはできなかった‥‥」
「あの船か?」
月明かりの下、朧げに見えるあの船を指差して言ったんだ。
コクコクと頷くジョングの顔からは子どもを心配する親の悲痛な顔しか見えなかった。
「あの船の船底に俺たちの子どもたちが10人捕まっている‥‥」
「わかった。じゃあジョング、子どもを助ければ良いんだな」
「助けてくれるのかアレク?!」
「「「おおっ!」」」
目を覚ました海人族もみんな喜んでいたよ。
「ああ。人質とるような奴とお前らなら、どっちと友だちになるのかは言うまでもないからな」
「「「トモダチ‥‥」」」
目を覚ました海人族たちがみな、俺とジョングの話を聞いていたんだ。
「猫のお姉さん、そんなわけで俺あの船潰すことになったけどいいかな?」
「フフフ。潰すか。狐君だもんね。
でも‥‥明るくなる朝まで待ってくれない?どうせなら1人も取り逃したくもないのよ。だから、こっちも数を揃えるわ」
「わかったよ」
「ジョング」
「なんだアレク」
「そんな事情だからさ、何人かの海人族は逃げきれたって嘘ついて船に戻っててくれよ」
「あ、ああ。わかった」
「長、俺たちが戻ってます」
そう言った海人族の男5、6人が声を上げてくれた。
「海人族さん、俺ジョングと約束したから必ず子どもたちを助けるよ。少しの間、待っててくれないかな」
コクコク
こくこく
コクコク
「じゃあ一旦姫にも伝えにいくか。ジョング、ついてきてくれるか?」
「もちろんだアレク」
「あんたたちは海人族さんたちとここにいて」
「「「わかりやしたお頭」」」
「あっ、ちょっと待って。ジョング悪いけど、これ着てくれよ」
「ああ」
悪い奴らを服を拝借したんだ。1番小柄できれいそうなのをジョングに着てもらったよ。それでも大人の服を子どもが着るみたいな感じだったけどね。
「もし船が錨を上げるようなら教えて。狐君とすぐに戻るから」
「そうだね。草さん、俺問答無用ですぐに船をぶっ壊すから」
「「「(すぐにぶっ壊す‥‥)」」」
「「「問答無用‥‥」」」
「「「(狐仮面さんだもんな‥‥)」」」
「ほらアレク、あんたもう戦闘狂って思われてるわよ。変態バーサーカーね!」
なんだよ変態バーサーカーって!
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