アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
529 / 722
第2章 幼年編

530 警ら

しおりを挟む


 「じゃあ教会ごと建替えるからね。祭壇から卓椅子、什器、使える木製品は全部出してあるんだよね?沈めるよ?」

 「いいわよ」

 アリアナ姫が声を上げる。姫はキム先輩たちがいない、ここグランドで1番偉い決定権者なんだ。

 「「「いつでもいいよー狐仮面!」」」

 「「「どんとこーい狐仮面!」」」


 手伝いにきてくれてる元デグー一族の大人100人はいつでもいいぞと準備万端だ。


 俺が新教会を発現したら、後は祭壇から諸々をすぐに配置して元通りの教会活動もできるようになるんだよね。

 でも実際の神父様とシスターには教会の改築に時間がかかるからと、王都の教会へ教義の研鑽に充ててほしいと1か月ほどを不在にしてもらっているんだ。俺のグランド行きが決まったすぐにね。

 その理由は、神父様とシスターが海洋諸国人じゃないからなんだ。

 グランドの住民(デグー一族)が決して神父様たちを信用してないわけじゃないんだよ。不信感も持っていないどころか親しく付き合っているんだからね。

 だけど帝都には悪党神父もいたからね。だから決して疑ってはいないんだけど、狐仮面の土魔法によって1夜にして教会が建て替わったなんてことを知られてはマズいだろうと、姫やマル爺、コジローさんたちの考えで少し不在にしてもらったんだ。
 だからここにいる100人はみんなデグー一族。身内ばかりなんだよね。

 1年ダンジョンで連夜の野営食堂の発現から、俺の大規模建築の発現もすっかり慣れたよ。
 ヴィンサンダー領での教会の時計台も(大)(中)(小)の3パターンも発現してきてるから、もう余裕かな。

 今日はうちのデニーホッパー村と同じ札幌の時計台、(大)パターンの発現。

 収容人数500人が可能な石造りの高床式倉庫みたいな仕様。

 ここのグランドは数年に1度の大水で沈むことがあるから、家屋はみんな高床式倉庫みたいなんだよね。
 だから元の教会も木柱で地面から1.5メルほど上げてあるんだ。

 俺はもう少し高く2.5メルくらい嵩上げして、石柱で発現しようと思ってるんだ。
 そしたら、普段は床下にあたる1階部分も風通しもいいし、何か活用できるかもしれないもんね。

 
 前日のうちに土塀で覆って観光客さんの人目にもふれないようにしてあるよ。
 これで一晩で教会が建て替わってもバレないだろうって思ってるんだけどね。

 そうそう、姫とマル爺、コジローさんとレベちゃんだけには万が一用の「仕掛け」は話してあるよ。使うことがないのが1番だけど。



 「ノーム頼むよー」

 「「「おいさ おいさ」」」

 「じゃあ沈めるからねー」

 ズズズーーッッ!

 「「「おぉ~!」」」

 「「「マジか‥‥」」」

 教会が蟻地獄に引き摺り込まれるように消えていったよ。

 「次、新教会建てるよー。ノームも行くよー。新教会カモーン!」

 ズズッ  ズズズーーーーッッ!


 ―――――――――――――――


 「姫、お願いがあるんだ」

 「なに?狐ちゃん」
 
 「ゴームの木のことだよ」

 「ゴームのなに?
 狐ちゃんに言ったように、ゴム工房はものすぐ順調なんだから」

 「うん。それは嬉しいよ。
 でもさ‥‥たぶん、もうすでに他国や王国のどっかの領からのスパイや盗賊団、草はけっこう入ってきてるよね?」

 「そんなことないわ」

 アリアナ姫はそう言ったけど、目が泳いでたのは俺でさえもわかったよ。

 「だってピーちゃんもいるんですもん」

 「うん。俺もピーちゃんに送ってもらったとき、ピーちゃんはこれから河賊をオヤツに食べるって言ってたよ」

 「でしょ」

 「‥‥俺に言いたくないっていうか、俺を巻き込みたくないって思ってくれてる姫やキム先輩たちの気持ちは十分ありがたいよ」

 「‥‥」

 「だけどさ、ゴムの需要は俺が考えてたよりもずっとあるんだってわかったんだ。
 だってね、グランドから離れてる帝国でさえ戦闘靴を欲しいって人は信じられないくらいいっぱいいるよ?」

 「いっぱい売れるからうれしいわ狐ちゃん」

 「‥‥だからね姫、言い出した俺にも責任はあるって思ってるんだよ。
 去年の冬休みだってベルーシュの船が襲ってきたとき、俺が雷魔法を発現した後、キム先輩は下に行って見なくていいって言ってくれたんだよね」

 「‥‥」

 「俺ね‥‥姫やキム先輩たちが言ってくれた意味もわかってたんだ。俺自身の甘さも充分にね……」

 「だからさ、この夏休み、観光地で明るい雰囲気のグランドと、目に見えないけどいろいろある難しい部分も見なくちゃいけない、知らなきゃいけないって思ってこの夏休みにやってきたんだ」

 「狐ちゃん‥‥」

 「いずれ俺も姫たちと同じ立場になると思うんだ。だからさ、島の警らに俺も同行させてよ」







 「わかったわ。正直に言うとね、河賊はとても増えたわ。ゴームなのかグランドそのものなのかわからないけど、明らかに狙ってくる賊ばかりが増えたのよね」

 「やっぱり‥‥」

 「今のところ、デグー一族からの死者はで出てないけど‥‥たぶん遅かれ早かれ被害者も出ると思うわ」

 「じゃあさ、やれること、防げることも考えていこうよ。ガキの俺が言うことなんか大したことないけど」

 「ありがとうね狐ちゃん‥‥お礼にチューしてあげたいけどキムに怒られるから妹を抱っこさせたげるね。てかレベちゃんのチューのがいいかしら」

 「なんの罰ゲームだよ!」

 フフフフフフ
 あははははは



 ▼

 

 「狐仮面君よろしくね」

 「「「よろしく!」」」

 そう言って握手をしたのは猫の仮面を付けた女の人を頭のデグーの草の人たちだった。
 なんかいい匂いがする女の人だな。

 「今夜は深夜2点鐘が干潮なのよ。満月だから灯りも必要ないから賊は必ずやってくるわ。私たちの担当はグランドの南端よ」

 グランドへの上陸は東西南北4方向の港と北端、南端の浅瀬。
 疾しい人は北端、南端の浅瀬からやってくることが多いんだって。

 「捕獲、尋問ののち先方から賠償金が出る奴は釈放してるわ」

 「出ない奴は?」

 「ふふふ」

 猫仮面の女の人が妖艶な声を上げたんだ。

 コワッ!

 「じゃあ狐ちゃん行くわよ」

 「うん」



 ―――――――――――――――


 いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...