アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

527 グランド上陸

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 「すごいなピーちゃんって。なぁドン君」

 「シャーーーッッ」

 「そんなに褒めないでよって言ってるわよ」

 「めちゃくちゃ速くて快適ですねデーツさん」

 「シャーーーッッ」

 「そうよ快速なのよって言ってるわよ」

 「そんなことどうでもいいわ!てかシルフィの解説、2人には聞こえませんから!」

 「アレク、あんた何いじけてるのよ!」

 「そりゃいじけるよ!みんなして『近寄るな臭い』って言われたら!」

 「だってあんた、本当に臭いんだもん」

 「「アレク(団長)風下に行ってくれよ(下さい)」」

 「う、うう‥‥酷い‥‥」




 みなさんこんにちは。
 王都サンディアゴの港を立ち、今俺たち3人はピーちゃんの背中(頭)に乗せてもらってグランドに向かっています。グランドは大河ロナウの中洲、海洋諸国の飛地です。

 事前にお願いした手紙にはピーちゃんが迎えに来るから着いたらピーちゃんを呼んでねと書いてありましたから呼びました。
 ピーちゃんはちゃんと来てくれたんだけど、まさかまた甘噛みされるとは思いもつかなかったんです。
 おかげで俺はピーちゃんの唾液っていうかよだれでベタベタです……。

 自分の身体がくせぇわ!


 「団長、ピーちゃんはホントめちゃくちゃ速いですね。広いし。」

 「シャーーーッッ」

 ピーちゃんの背中(頭)は自動車の座席くらいはふつうにある広々空間です。一応綱を咥えてくれてますが、落ちませんし、まったく揺れないんですよね。

 河の上をすーっと進むピーちゃん号。まったく揺れないから快適でした。
 ただピーちゃんに甘噛みされた俺の身体中から漂う生ぐさい臭い以外は。

 「シャーーーッッ」

 「もうすぐ着くわよって」



 「ピーちゃんありがとうね」

 「「ありがとうピーちゃん」」

 「シャーーーッッ。シャーーーッッ!」

 「途中で河賊を見つけたから、今からオヤツに食べに行くんだって」

 「あはははは」

 


 ふつうの川船なら港から楽に2日はかかるものだ。だけど快速ピーちゃん号はわずか3点鍾ほどでグランドに到着したんだ。

 「ちょっと待ってて」

 ドボーーーンッッ!

 グランド到着後、すぐに河に飛び込んで身体中を洗った俺です。


 「あーさっぱりした。じゃあ行くぞ」

 「団長重いです‥‥」

 「アレク重いよ‥‥」

 「うるさい!お前ら2人は俺に意地悪したから2人でキリキリ運べ!」

 「リアカー出してくれたらいいのに……。ブツブツ」

 「本当ですよ……。ブツブツ」

 なんかブツブツ言ってる2人が大きな木箱を運んでいる。リアカーを発現せずにデーツとドンの2人に運んでもらってるのはダンジョンでドロップした時計なんだ。グランドにも時計塔を建てたいからね。

 グランドの街は港からそのまま目抜き通りと繁華街が続いていた。そう、繁華街ができていたんだ。

 「なんかすげぇな‥‥」

 「人もいっぱいいますね」

 「屋台もいっぱいあるよ。お祭りみたいだ」

 グランドの港はわずか半年前とは比べられないくらいに賑やかだった。女子だけのグループも多くいるのが見えたから、観光地化計画は成功してるんじゃないかな。


 大河ロナウ河の中洲グランドは、貿易の中継基地としての可能性はあったんだよ。
 この立地条件の良さに、温泉もあれば元々有名だった「黒髪美人と蟹」の地グランドも観光地として化ける要素は十分あったんだよね。

 ウォーターカウカウ(水牛)の曳く観光牛車でのんびりと河辺を廻るのも楽しい。デグー一族の着物のような民族衣装もかわいいし、レンタルもできる。高床式倉庫みたいな建屋も見どころがある。
 もちろん蟹もデグーの郷土料理も美味い。お姉さんたちもきれい。

 だから1人旅を含めて女子旅も安心して来れるのもグランドの良さなんだよね。
 だってグランドは元海洋諸国主要5氏族の1つ、デグー一族の拠点だから治安の良さは言うまでもないからね。


 「あっ狐仮面だ!」

 「狐仮面よ!」

 「狐ちゃんだ!」

 「狐仮面ちゃん!」

 港に上陸してすぐに、こんなふうに声をかけられたんだ。てか俺、仮面付けたままだったよ。

 「アレク、お前有名なんだな!」

 「さすが団長です!」

 「あははは」

 なんか恥ずかしいな。

 「いいなアレク、また変態なところを見られるんじゃねぇぞ。
 2度とグランドにゃぁ来れねぇからな」

 「がってんでさぁシルフィ親分!」

 男前なシルフィ親分の言うとおりだな。
 うん、気をつけよう。


 俺たちが上陸したのはすぐに伝わったみたい。
 以前に歓待を受けた大きな高床式倉庫みたいなお店の前でアリアナ姫たちみんなが待っててくれたんだ。
 アリアナ姫、コジローさん、レベちゃん、マル爺がみんな笑顔でお出迎えしてくれたんだ。
 姫の隣で手を繋いでいるのは‥‥姫とイシルの妹だ。名前なんだっけか?忘れちゃったよ。そんなことより‥‥。

 「アレクちゃん!」

 「久しぶりでちゅねーくんかくんか。元気でちたか?くんかくんか。アレクお兄ちゃんを覚えてくれてまちたか?くんかくんか‥‥」

 「くすぐったいよ。やめてよキャッキャ‥‥」

 「なにがくすぐったいでちゅか?こうでちゅか?こうでちゅか?」

 「キャッキャ‥‥」

 「こうでちゅか?こうでちゅか?」

 「キャッキャ‥‥」

 「「「‥‥」」」
















 「ちょっと狐ちゃん!」

 「おいアレク!」

 「団長!」






















 「ハッ!み、み、み、みんな久しぶり!」

 「「「お、おぉ。久しぶり!」」」

 ササササッ!

 なんでみんな後退りしてんだ?
 
 「テメーさっき言ったばっかじゃねぇか!?このすっとこどっこい!」

 「さーせんシルフィ親分‥‥」



 そのまま高床式倉庫みたいな家の中でも1番大きな店に案内されたんだ。以前にも歓待してくれた所だね。

 「いらっしゃーい。狐仮面ちゃん久しぶりね。ちょっと背が伸びた?」

 「女将さん久しぶり」

 エロかわいい女将さんは相変わらずエロかわいかった。
 黒髪ロングの日本人的な美女。肩がむき出しの着物のような服。肩からみえる艶やかな肌と胸の谷間がとっても暴力的なお姉さんだ。

 「あっ!わかる?そう背が伸びたんだ」

 「ホント伸びてるわね」
 
 「えへへへーっ」

 今1番嬉しい褒め言葉だよ。
 実際今の俺は毎月1セルテずつ背が伸び続けてるからね。150セルテからようやく160セルテになったもんね。カウカウのミルクと脚に魔力を通すのは毎日欠かさない日課だし。


 「狐ちゃん、あんたが来るっていうからカウカウのミルクも用意してあるわよ。その前にあたしのちゅーはいかが?」

 「レベちゃん久しぶり!でもカウカウのミルクだけにしてね」

 「もうあんたったら照れちゃって!」

 「照れてねーわ!」

 「レベちゃんに紹介するよ」

 「こいつは帝都学園5年生のデーツ」

 「レベラオスよん。レベちゃんって呼んでね。よろしくねデーツちゃん」

 「ヨロシクオネガイシマス」

 「こいつ、緊張するといつもこうなんだ。オヤジは前皇帝のアレクサンダーだから血は受け継いでるはずだけどね」

 「そう。デーツちゃんお姉さんと握手しましょ」

 「ハイ」

 デーツがレベちゃんとしっかり握手したんだ。

 「あら!なるほどね」

 「でねレベちゃん。こいつはオヤジに負けたくないと意地張って剣ばっか修練してたんだ」

 「あらもったいない」

 「だよね。それで今、俺が毎日体術を教えてるけど俺体格差もあってこいつに教えきれないんだよね。
 だからたった1ヶ月なんだけど、こいつをしごいてやってくれないかな?」

 「いいわよ狐ちゃん。デーツちゃんはどう?お姉さんにしごかれたい?」

 そう言ったレベちゃんの目は獲物を狙うピーちゃんの目だったよ……。

 「ヨロシクオネガイシマス」

 「いいわよん。ごちそうさま!」

 ごちそうさまの意味がわかんねぇよ!でもデーツの何かのきっかけになればいいな。レベちゃんもこいつの潜在能力の高さにはびっくりしてたもんな。

 そのままマル爺とも久しぶりに再会したんだ。

 「マル爺!」

 「おぉ狐仮面君。大きくなったわい。もうすぐ爺が見下ろされるわい」

 「マル爺のおかげで魔力操作もよくできるようになったよ!」

 「それは重畳重畳」

 「マル爺、こいつはドン。海洋諸国人なんだ」

 「はじめまして。ドン・ガバスです」

 「はいはい、お子はガバス一族の次代を担う子じゃな」

 「いえ、将来もアレク団長の下で頑張っていきたいと思ってます。ドン・ガバスとしては近々アイランド一族の仲間になる、ガバスのドンです」

 「ホッホッホ。頭も良い子じゃの」

 マル爺とドンがしっかりと握手したんだ。

 「ほぉ。なるほどの」

 「マル爺、この1ヶ月、ドンを扱いてやってくれないかな?」

 「わかったよ狐仮面君。
 1ヶ月しかないから厳しいが、良いかなドン君」

 「はい。よろしくお願いします師匠!」

 よかった。これで夏休み1ヶ月、こいつらの師匠が決まったな。あとは俺も。
 
 「コジローさん、レベちゃん、マル爺。毎日じゃなくていいから俺にも稽古つけてください」

 「ああ。いいぜアレク」

 「まあ欲張りな狐ちゃんね!」

 「ホッホッホ。よきかなよきかな」

 俺、マル爺からは契約魔法も習いたいんだよね。来年の秋には使いたいし。

 「さぁ何はともあれ歓迎会よ。明日からは3人とも1ヶ月修行になるんだから、今日は楽しむわよー」

 「「「おぉ~!」」」

 「デーツ君は飲める?」

 「チョットダケナラ」

 「ドン君は‥‥もちろん」

 「飲めます。姉さん」

 「あら姉さん?」

 「はい。アレク団長の兄貴の奥さんですから俺にとっては姉さんです!」

 「あら。かわいいこと言ってくれるわねガバスの若頭も」

 「狐ちゃんは‥‥」

 「もちろんカウカウのミルクで!」






 わははははは
 フフフフフフ
 ガハハハハハ
 はははははは





 「姫は本島に行かなかったの?」

 「行ってるわよ。グランドと本島を行ったり来たりよ。しばらくはこんな感じね」

 「そうなんだ」

 「狐ちゃんの帝国での活躍は、カクサーン様からスケサーン様に伝わってるからキムも知ってるわよ。
 デーツ君の妹かわいいんだって?」

 「うん。アリサっていうんだけどね、めちゃくちゃかわいい妹なんだ。俺の自慢の妹さ」

 「そう。よかったわね」

 そう言いながら姫が俺の頭を撫でたんだ。
 ん?なんで?

 「姫、時計持ってきたからさ。明日は
‥‥」



 楽しい宴席だったよ。グランドの蟹はやっぱり美味かったし。

 「コジローさん」

 「なんだアレク」

 「明日、ナジローさんの墓に連れてってください」

 「‥‥ああ。そんじゃついでに家に寄れ。デグーの家庭料理っていうの、嫁さんが作るから昼飯ご馳走するからな」

 「あざーす」

 「それと娘も‥‥ああ娘は見るだけな」

 えーっ!なんでだよ!コジローさんの娘に会うのも楽しみにしてたんだよ俺は!

 「アレク‥‥お前筋金入りの変態だな‥‥」

 なんだよ筋金入りの変態って!


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