526 / 722
第2章 幼年編
527 グランド上陸
しおりを挟む「すごいなピーちゃんって。なぁドン君」
「シャーーーッッ」
「そんなに褒めないでよって言ってるわよ」
「めちゃくちゃ速くて快適ですねデーツさん」
「シャーーーッッ」
「そうよ快速なのよって言ってるわよ」
「そんなことどうでもいいわ!てかシルフィの解説、2人には聞こえませんから!」
「アレク、あんた何いじけてるのよ!」
「そりゃいじけるよ!みんなして『近寄るな臭い』って言われたら!」
「だってあんた、本当に臭いんだもん」
「「アレク(団長)風下に行ってくれよ(下さい)」」
「う、うう‥‥酷い‥‥」
みなさんこんにちは。
王都サンディアゴの港を立ち、今俺たち3人はピーちゃんの背中(頭)に乗せてもらってグランドに向かっています。グランドは大河ロナウの中洲、海洋諸国の飛地です。
事前にお願いした手紙にはピーちゃんが迎えに来るから着いたらピーちゃんを呼んでねと書いてありましたから呼びました。
ピーちゃんはちゃんと来てくれたんだけど、まさかまた甘噛みされるとは思いもつかなかったんです。
おかげで俺はピーちゃんの唾液っていうかよだれでベタベタです……。
自分の身体がくせぇわ!
「団長、ピーちゃんはホントめちゃくちゃ速いですね。広いし。」
「シャーーーッッ」
ピーちゃんの背中(頭)は自動車の座席くらいはふつうにある広々空間です。一応綱を咥えてくれてますが、落ちませんし、まったく揺れないんですよね。
河の上をすーっと進むピーちゃん号。まったく揺れないから快適でした。
ただピーちゃんに甘噛みされた俺の身体中から漂う生ぐさい臭い以外は。
「シャーーーッッ」
「もうすぐ着くわよって」
「ピーちゃんありがとうね」
「「ありがとうピーちゃん」」
「シャーーーッッ。シャーーーッッ!」
「途中で河賊を見つけたから、今からオヤツに食べに行くんだって」
「あはははは」
ふつうの川船なら港から楽に2日はかかるものだ。だけど快速ピーちゃん号はわずか3点鍾ほどでグランドに到着したんだ。
「ちょっと待ってて」
ドボーーーンッッ!
グランド到着後、すぐに河に飛び込んで身体中を洗った俺です。
「あーさっぱりした。じゃあ行くぞ」
「団長重いです‥‥」
「アレク重いよ‥‥」
「うるさい!お前ら2人は俺に意地悪したから2人でキリキリ運べ!」
「リアカー出してくれたらいいのに……。ブツブツ」
「本当ですよ……。ブツブツ」
なんかブツブツ言ってる2人が大きな木箱を運んでいる。リアカーを発現せずにデーツとドンの2人に運んでもらってるのはダンジョンでドロップした時計なんだ。グランドにも時計塔を建てたいからね。
グランドの街は港からそのまま目抜き通りと繁華街が続いていた。そう、繁華街ができていたんだ。
「なんかすげぇな‥‥」
「人もいっぱいいますね」
「屋台もいっぱいあるよ。お祭りみたいだ」
グランドの港はわずか半年前とは比べられないくらいに賑やかだった。女子だけのグループも多くいるのが見えたから、観光地化計画は成功してるんじゃないかな。
大河ロナウ河の中洲グランドは、貿易の中継基地としての可能性はあったんだよ。
この立地条件の良さに、温泉もあれば元々有名だった「黒髪美人と蟹」の地グランドも観光地として化ける要素は十分あったんだよね。
ウォーターカウカウ(水牛)の曳く観光牛車でのんびりと河辺を廻るのも楽しい。デグー一族の着物のような民族衣装もかわいいし、レンタルもできる。高床式倉庫みたいな建屋も見どころがある。
もちろん蟹もデグーの郷土料理も美味い。お姉さんたちもきれい。
だから1人旅を含めて女子旅も安心して来れるのもグランドの良さなんだよね。
だってグランドは元海洋諸国主要5氏族の1つ、デグー一族の拠点だから治安の良さは言うまでもないからね。
「あっ狐仮面だ!」
「狐仮面よ!」
「狐ちゃんだ!」
「狐仮面ちゃん!」
港に上陸してすぐに、こんなふうに声をかけられたんだ。てか俺、仮面付けたままだったよ。
「アレク、お前有名なんだな!」
「さすが団長です!」
「あははは」
なんか恥ずかしいな。
「いいなアレク、また変態なところを見られるんじゃねぇぞ。
2度とグランドにゃぁ来れねぇからな」
「がってんでさぁシルフィ親分!」
男前なシルフィ親分の言うとおりだな。
うん、気をつけよう。
俺たちが上陸したのはすぐに伝わったみたい。
以前に歓待を受けた大きな高床式倉庫みたいなお店の前でアリアナ姫たちみんなが待っててくれたんだ。
アリアナ姫、コジローさん、レベちゃん、マル爺がみんな笑顔でお出迎えしてくれたんだ。
姫の隣で手を繋いでいるのは‥‥姫とイシルの妹だ。名前なんだっけか?忘れちゃったよ。そんなことより‥‥。
「アレクちゃん!」
「久しぶりでちゅねーくんかくんか。元気でちたか?くんかくんか。アレクお兄ちゃんを覚えてくれてまちたか?くんかくんか‥‥」
「くすぐったいよ。やめてよキャッキャ‥‥」
「なにがくすぐったいでちゅか?こうでちゅか?こうでちゅか?」
「キャッキャ‥‥」
「こうでちゅか?こうでちゅか?」
「キャッキャ‥‥」
「「「‥‥」」」
「ちょっと狐ちゃん!」
「おいアレク!」
「団長!」
「ハッ!み、み、み、みんな久しぶり!」
「「「お、おぉ。久しぶり!」」」
ササササッ!
なんでみんな後退りしてんだ?
「テメーさっき言ったばっかじゃねぇか!?このすっとこどっこい!」
「さーせんシルフィ親分‥‥」
そのまま高床式倉庫みたいな家の中でも1番大きな店に案内されたんだ。以前にも歓待してくれた所だね。
「いらっしゃーい。狐仮面ちゃん久しぶりね。ちょっと背が伸びた?」
「女将さん久しぶり」
エロかわいい女将さんは相変わらずエロかわいかった。
黒髪ロングの日本人的な美女。肩がむき出しの着物のような服。肩からみえる艶やかな肌と胸の谷間がとっても暴力的なお姉さんだ。
「あっ!わかる?そう背が伸びたんだ」
「ホント伸びてるわね」
「えへへへーっ」
今1番嬉しい褒め言葉だよ。
実際今の俺は毎月1セルテずつ背が伸び続けてるからね。150セルテからようやく160セルテになったもんね。カウカウのミルクと脚に魔力を通すのは毎日欠かさない日課だし。
「狐ちゃん、あんたが来るっていうからカウカウのミルクも用意してあるわよ。その前にあたしのちゅーはいかが?」
「レベちゃん久しぶり!でもカウカウのミルクだけにしてね」
「もうあんたったら照れちゃって!」
「照れてねーわ!」
「レベちゃんに紹介するよ」
「こいつは帝都学園5年生のデーツ」
「レベラオスよん。レベちゃんって呼んでね。よろしくねデーツちゃん」
「ヨロシクオネガイシマス」
「こいつ、緊張するといつもこうなんだ。オヤジは前皇帝のアレクサンダーだから血は受け継いでるはずだけどね」
「そう。デーツちゃんお姉さんと握手しましょ」
「ハイ」
デーツがレベちゃんとしっかり握手したんだ。
「あら!なるほどね」
「でねレベちゃん。こいつはオヤジに負けたくないと意地張って剣ばっか修練してたんだ」
「あらもったいない」
「だよね。それで今、俺が毎日体術を教えてるけど俺体格差もあってこいつに教えきれないんだよね。
だからたった1ヶ月なんだけど、こいつをしごいてやってくれないかな?」
「いいわよ狐ちゃん。デーツちゃんはどう?お姉さんにしごかれたい?」
そう言ったレベちゃんの目は獲物を狙うピーちゃんの目だったよ……。
「ヨロシクオネガイシマス」
「いいわよん。ごちそうさま!」
ごちそうさまの意味がわかんねぇよ!でもデーツの何かのきっかけになればいいな。レベちゃんもこいつの潜在能力の高さにはびっくりしてたもんな。
そのままマル爺とも久しぶりに再会したんだ。
「マル爺!」
「おぉ狐仮面君。大きくなったわい。もうすぐ爺が見下ろされるわい」
「マル爺のおかげで魔力操作もよくできるようになったよ!」
「それは重畳重畳」
「マル爺、こいつはドン。海洋諸国人なんだ」
「はじめまして。ドン・ガバスです」
「はいはい、お子はガバス一族の次代を担う子じゃな」
「いえ、将来もアレク団長の下で頑張っていきたいと思ってます。ドン・ガバスとしては近々アイランド一族の仲間になる、ガバスのドンです」
「ホッホッホ。頭も良い子じゃの」
マル爺とドンがしっかりと握手したんだ。
「ほぉ。なるほどの」
「マル爺、この1ヶ月、ドンを扱いてやってくれないかな?」
「わかったよ狐仮面君。
1ヶ月しかないから厳しいが、良いかなドン君」
「はい。よろしくお願いします師匠!」
よかった。これで夏休み1ヶ月、こいつらの師匠が決まったな。あとは俺も。
「コジローさん、レベちゃん、マル爺。毎日じゃなくていいから俺にも稽古つけてください」
「ああ。いいぜアレク」
「まあ欲張りな狐ちゃんね!」
「ホッホッホ。よきかなよきかな」
俺、マル爺からは契約魔法も習いたいんだよね。来年の秋には使いたいし。
「さぁ何はともあれ歓迎会よ。明日からは3人とも1ヶ月修行になるんだから、今日は楽しむわよー」
「「「おぉ~!」」」
「デーツ君は飲める?」
「チョットダケナラ」
「ドン君は‥‥もちろん」
「飲めます。姉さん」
「あら姉さん?」
「はい。アレク団長の兄貴の奥さんですから俺にとっては姉さんです!」
「あら。かわいいこと言ってくれるわねガバスの若頭も」
「狐ちゃんは‥‥」
「もちろんカウカウのミルクで!」
わははははは
フフフフフフ
ガハハハハハ
はははははは
▼
「姫は本島に行かなかったの?」
「行ってるわよ。グランドと本島を行ったり来たりよ。しばらくはこんな感じね」
「そうなんだ」
「狐ちゃんの帝国での活躍は、カクサーン様からスケサーン様に伝わってるからキムも知ってるわよ。
デーツ君の妹かわいいんだって?」
「うん。アリサっていうんだけどね、めちゃくちゃかわいい妹なんだ。俺の自慢の妹さ」
「そう。よかったわね」
そう言いながら姫が俺の頭を撫でたんだ。
ん?なんで?
「姫、時計持ってきたからさ。明日は
‥‥」
楽しい宴席だったよ。グランドの蟹はやっぱり美味かったし。
「コジローさん」
「なんだアレク」
「明日、ナジローさんの墓に連れてってください」
「‥‥ああ。そんじゃついでに家に寄れ。デグーの家庭料理っていうの、嫁さんが作るから昼飯ご馳走するからな」
「あざーす」
「それと娘も‥‥ああ娘は見るだけな」
えーっ!なんでだよ!コジローさんの娘に会うのも楽しみにしてたんだよ俺は!
「アレク‥‥お前筋金入りの変態だな‥‥」
なんだよ筋金入りの変態って!
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる