519 / 722
第2章 幼年編
520 共済保険始動
しおりを挟む【 セーラからの手紙 】
アレク元気ですか?
元気に決まってますよね。
領都学校の私たちも、女神様のご加護のおかげでみんな元気にやってますよ。
アレクと交換留学生として帝都学園からやってきたマルコ・ディスパイス先輩は気さくな性格もあって私たちともすぐに打ち解けることができました。
ただ残念ながら5年1組ですから毎日会って話すことはできませんが。
3年1組のみんなも毎日一生懸命修練に励んでますよ。
アレクが帰ってきたとき、びっくりさせるんだってみんなで言い合って努力しています。
マルコ先輩はモーリスの家から通ってることもあって、マルコ先輩と1番剣の稽古をしているのがモーリスです。
モーリスは私からみてもすごく努力してるのがわかります。以前より見違えるほど明るくなったモーリスは、ハンスと一緒に3年1組のみんなをうまくまとめてくれていますから安心してくださいね。
もうすぐ夏休みになりますがアレクはどうするのかな。私とセロはいつもと変わらず教会のお仕事です。
みんなは集まって修練するって言っています。
早く来年の春になるのが待ち遠しいです。ってまだまだ先なのにね。
追伸
帝国でも変な2つ名が広まらないように女神様に祈っててあげますね。
セーラ
なんだよ、変な2つ名って……。
「アレク‥‥あんた見抜かれてるじゃん!」
「そ、そだね‥‥」
―――――――――――――――
「団長、帝都騎士団には初めて来ましたよ」
「そうだねトン。雰囲気はヴィヨルドの領都騎士団も変わらないよ」
「そ、そうなんですね‥‥」
「兄ちゃん、緊張するね‥‥」
「ああ‥‥」
ドンとトンの2人が緊張してるけど、事実、帝都騎士団もその施設内の雰囲気はヴィヨルドのそれと変わらないものだった。護国。武を体現した施設の代表格だ。
共済保険の会議にはドンとトンの2人が参加するようになった。元々2人とも真面目で頭もいいから、学園側(狂犬団)としても安心して任せられるよ。
「うちの学園よりデカくね?」
「「そうっすね‥‥」」
敷地は騎士団ともあって人馬1体の訓練場があるからか、敷地はかなり広大にとられていた。
全体に立派な建屋、立派な施設って感じるのはなぜだろう。やっぱ騎士団は「帝都の戦花」だからかな。
「ううっ‥‥」
「うっ‥‥」
ドンとトンのやつ、けっこう緊張してるな。まぁ無理もないけど。
だって明らかに敵意を持って俺たちを見てくる帝都騎士団養成学校の同年代の子たちがいるから。
ドンとトンの2人は俺が留学した最初のころに見られた誰彼問わずに挑発的に構えることはなくなったんだ。慎重に構えられるのはいいことだよ。
「トン、制服にしてよかったよな」
「はい?」
「だって相手からもぱっと見で俺たちが帝都学園生ってわかるじゃん」
「えーっ?!俺は団長のように戦闘狂じゃないから緊張しますよ!。今もですけど」
「失礼だなトン!誰が変態だよ!?」
「えっ!?俺変態だなんて言ってませんよ!」
「あっ!?」
「「団長‥‥」」
ワハハハハハ
わははははは
あははははは
共済保険の打合せ。持ち回りの会議。
前回の海軍兵学校(海軍省水兵学校)に続いて、今回は騎士団員養成学校(帝都騎士団内)だ。
今後は陸軍兵学校(陸軍省兵学校)、モンク僧養成校、冒険者養成校へと続く。
共済保険は先ず未成年者を優先していくことが正式に決定したためなんだ。どこの組織でも未成年者の数の把握、管理は成人よりもしっかりとできてるからね。
今後は未成年者の保険をたたき台として成人へ、さらには帝都から帝国全体へと拡げていくことに方針が定まったからなんだ。
「そういや団長、こないだメルル先輩の裸みて鼻血だして倒れたそうじゃないですか?」
「あっ、俺も聞いたよ兄ちゃん!」
「えっ!?」
「おギンが腹抱えて笑ってましたよ」
くそーおギンめ!
バラしやがって!
「団長、グランドにも行ってるじゃないですか。なんで素人相手に鼻血なんか出してるんですか?」
「素人言うな!俺はお前たち海洋諸国人みたく、お酒も飲んだこともないし、女の子とけ、け、け、経験どころか付き合ったこともないの!」
「「なんか信じられないんよなぁ」」
「本当に本当なの!俺はまだど、ど、ど、どーていなの!」
「うーん?本当かなぁ~」
「あっ!わかった!本当は逆に遊びすぎたからですか?さすが団長だよなぁー。なぁ兄ちゃん!」
「「だな!(ちげーよ!)」」
ワハハハハハ
わははははは
あははははは‥‥
「おいおい学園生、よく天下の騎士団内で大笑いしてるよなぁ」
「「ずいぶん余裕じゃねぇか」」
「「調子こいてんじゃねぇぞ学園生が!」」
騎士団養成学校の生徒たち4、5人が俺たちを名指しで声を上げたんだ。
「団長‥‥」
2人は冷静に身構えた。
「(相手するな。行くぞドン、トン)」
「「(はい団長)」」
「「「逃げるのか学園生!?」」」
「「「大したことねぇなぁ」」」
「帝都にゃぁ俺たち騎士団生がいることをおぼえとけ!」
わはははは
わはははは
ワハハハハ
ワハハハハ
ドッとウケる騎士団養成校の生徒の声を背中に会議室へ向かう。
「イイよお前ら。安っぽい挑発にも乗らなくなったじゃん」
「だって団長がいますから」
「てかトン。今の奴らみて、闘ったらお前負けるか?」
「嫌だな団長ー。俺まだまだですがアイツらに負けるほと弱くないですよー」
「だよなぁ。というわけで、弱い奴らの挑発には乗らない」
「闘るときは徹底して潰す、ですね団長」
「そういうこと!」
「「(やっぱ戦闘狂だよ団長‥‥)」」
▼
「アレク君、忙しいところ悪いんだけど、騎士団養成校の生徒と稽古をしてやってくれるかい?」
「いいですけどペイズリーさん?」
「未成年者で帝都学園がどこよりも強いのは昔から常識なんだけどね‥‥
これも交流がないからなのか、時代なのか。騎士団養成校の子たちは理解が足りないんだよね」
頭をかきかき苦笑いをしているペイズリーさんだ。
「わかりました。俺たちも頭を使うより身体を動かしてるほうがいいですから」
「(それ団長だけだよね兄ちゃん)」
「(トンしーっ!)」
「聞こえてるぞトン!オラオラオラオラ‥‥」
「痛い痛い、団長痛いっす!」
ワハハハハハ
わははははは
―――――――――
「じゃあ帝都学園3年で1番強いドン君が相手になるね」
「かかってこんかい学園生!」
ダンッッ!
「ゴフッッ!」
「じゃあ帝都学園3年で2番めに強い弟のトンが相手するな」
「なめやがって学園生!」
ダンッッ!
「ガフッッ!」
「「じゃあ最後に帝都学園で1番強い3年の
団長が相手するから‥‥5、6人‥‥全員でもいいんじゃないかな」」
「「「なめるな学園生!」」」
ダンッッ!
「ガフッッ!」
「ギャフッ!」
「グフッッ!」
「ゲフッッ!」
「ゴフッッ!」
「「「ガギグゲゴーーーーッッ!」」」
「「「‥‥」」」
「もっとやる?」
「「「すいませんでした!!!」」」
―――――――――
陸軍兵学校(陸軍省兵学校)でも同じ流れになったんだ。剣術では俺たちはほぼ無双だった。俺の魔法はもちろんね。
ただ、体術はドンとトンは陸軍の学生さんにはほぼ勝てなかった。これは仕方ないけどね。
俺?俺は陸軍の学生との体術は問題なかったよ。でも1番強い奴とは互角だった。久しぶりに楽しい体術ができたんだ。
「お前強いな」
「お前もな」
「なぁ。たまに陸軍に来るから、もっと俺と闘ってくれよ」
「おぉ!楽しみにしてるよアレク」
ガッチリ握手したんだ。よかった。強い奴とこれからも闘れるよ。
―――――――――
「成人のモデルケースは給料の5分を徴収するか。そこに軍やギルドの所属してる団体と、国家の3つを併せていけばどうだろう」
「だな。これなら国庫も永く乾かないんじゃないな」
「先行する帝都学園さんはアレク君が主催するアレク工房さんから学園分を供出するらしいな」
「すごい子だな」
「ああ。なかなかできることじゃないよ」
▼
「団長‥‥共済保険制度は団員のみにしますからね。
これまでは狂犬団に加入する、加入しないは自由だったけど、共済保険に入れるの狂犬団に限ることを明確にしますからね」
「わかったよ」
先行する学園の共済保険の2階部分は狂犬団員に限ることになったんだ。
それは狂犬団の全体会議でも発表されたんだ。
「学園長の許可ももらったからな。2階建は狂犬団員だけの共済だ」
「「「おぉー!」」」
「みんないいな?」
「「「了解!」」」
それは中原発の学園生限定の保険の始まりだった。
この保険は学園生をたたき台にして成人向けにも少しずつ広がることになるんだ。
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる