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第2章 幼年編
515 制服
しおりを挟む間一髪というか不幸中の幸いというか。
俺が鼻血をだして倒れたって話は、尾鰭がついた変な伝説にならなかったんだ。よかった、よかった。
まだ帝国では俺の変態鼻血伝説は誰も知らないはずだよ?たぶん?
でもさ、メルル先輩が男湯に入ってくるのは反則じゃね?
獣人の兄妹と仲良くしたいからなんだろうけどさ、意識が高すぎるっていうか、真面目すぎるっていうか、天然っていうか……。
でもその代わり一糸纏わぬメルル先輩の姿も拝めたし。やっぱ獣人種って早熟だよな。えへへ。ヤバっ。思い出しただけで鼻の奥がツンってしてきたよ。
「アレク、オメー次やったらこっちでも変態認定されっからな。出血多量で死んでも助けねぇぞ!いいな、わかったな?」
「は、は、はい。もちろんですシルフィさん。
でもシルフィさん?」
「なんでい?」
「シルフィさん‥‥どんどん江戸っ子化してますよね?」
「ったりめぇだろ。べらんめぇ!」
いやいや、風の精霊で江戸っ子なんて絶対いないと思うよ……。
【 校内side 】
「なあトン」
「なんですか団長?」
「狂犬団って部活動認可されてるんだよね?」
「そうですよ」
「ちなみに顧問の先生っているの?いたら誰なの?」
「ノーツ学園長っすよ?」
「なんだよそれ!?」
「学園長はとっても良い顧問っすよ。俺たちの最初の部費申請のリストバンド代もすぐに通りましたし」
「お前ね、もっと早く言えよ。そういうことは!」
「ん?」
俺その翌日、最近出来たばかりの焼き菓子の詰め合わせ箱を手土産にノーツ学園長に会いにいったんだ。
ああ、焼き菓子の詰め合わせ箱はクリスマスの時期に各方面にプレゼントする予定だよ。サンタクロースが山ほど背負ったプレゼントのイラストを箱に描いてもらってね。
「学園長お礼が遅くなってすみません」
「ん?なにがだいアレク君?」
「俺まさか狂犬団の部活動の顧問まで学園長が引き受けてくれてたなんてぜんぜん知りませんでした。本当にすみません」
「いやいや、謝ることなんてないよ。楽しい部活動じゃないかい狂犬団は」
「あはははは」
「購買も先生方からは大好評なんだよ。なにせノートや鉛筆が帝都で買う半額で買えるってね」
「あはははは」
ノーツ学園長とはその後もいろいろ話を聞いてもらったんだ。
具体的にはね、有名無実化していた生徒会活動も狂犬団主導でちゃんとやることも決まったよ。学園生には部活動ももっと精力的にやってもらうし、夏の体育祭も秋の文化祭も含めて、学園生活をより充実していこうってね。
「じゃあノーツ学園長、これからもご指導よろしくお願いします」
「ああアレク君、これからも自由に楽しくやりたまえ。
それとね、アレク君」
「なんですか学園長?」
「この秋にね、帝国の未成年者を集める学校機関、そこを取りまとめる文科教育省がね武闘祭を開催することを決めそうなんだよ」
「へぇーそうなんですね」
「おそらく王国のヴィヨルド領での武闘祭の成功が影響したんだろうね」
「ふだん会わない違う国や違う学校の生徒との交流は新鮮でしたからね」
「そうなんだよ。それを帝国の未成年者たちにも体験してもらおうという狙いだね」
「どんな学校があるんですか?」
「帝都学園だろ、海軍省の水兵学校だろ、陸軍省の陸軍兵学校だろ、あと帝都騎士団の騎士団員養成学校だろ、帝都学校、モンク僧養成校、冒険者養成校、あといくつあったかな。まあ帝国の主だった未成年者の学校がすべて参加予定だよ」
「へぇーそれは楽しみですね」
「アレク君にはもちろん帝都学園の代表として出場してもらうよ。なにせ帝都学園は自他共に認める武の最高峰であらねばならんからね」
「はい。学園長のご期待に沿えられるよう頑張ります」
「それと話は変わるんですけど学園長、制服のことなんですけど‥‥」
【 服飾部side 】
服のデザインや縫製
など服飾全般に興味がある学園生が集まって新しくできた部活動が服飾部なんだ。
服飾部の部長は狂犬団の幹部でもある人族5年3組のミチーコ ジュンジュン先輩。
お父さんが服屋さんでもあることから元々服飾関係にも明るくってジュンジュン先輩自身もゆくゆくはそっち方面の仕事に就きたかったみたい。
だから前々から話に
出てた制服作りには人一倍の興味があったんだって。
ジュンジュン先輩や服飾部の先輩たちとハチを交えて何度か打合せもしたんだ。
狂犬団の財布事情を1番知ってるのはハチだからね。
「購買の売上は上々っすよ。利益率は低いけど、売上金額は長くアテにできるっすね」
「今のところ、パン工房はダントツに稼ぎ頭っすね」
「今なら制服を作っても大丈夫っす」
ウオオオォォーーッ!
うおおおおぉぉーーっ!
「ジュンジュン先輩どう?」
「そりゃウチらの制服だもん。早く作りたいわよ。だけど3,000人全員のサイズを測ってたらね‥‥」
「「「そうね、時間がかかり過ぎるわ」」」
「どうするのがいいっすかねぇ?」
「「「うーん‥‥」」」
みんなが1番悩んでることは1年1組から6年10組までの制服を1着1着、寸法を測って作っていくことなんだ。誰も疑いもなくオーダースタイルって思ってるんだよね。
でもさ。
制服なんて既製服が普通じゃない?入学式のかなり前に、学校の体育館で服を着たりして決めてたはずなんだけどなぁ。
こっちの世界じゃオーダースタイルなんだ。
「じゃあさ既製服をS寸から順に大きくしていったらいいんじゃね?」
「きせいふく?」
「そう、みんなのサイズを測るんじゃなくって既に作った服から近いサイズの制服を着てもらうんだよ」
「そんな話‥‥聞いたことないわ」
ジュンジュン先輩たち服飾部のみんなが驚いてたけど、俺にしてみればオーダーにするほうが驚きだよ。
「既製服にしたら問題ないよね」
型取りした服をみんなが着てけば半日あれば問題もないよ。
「団長いくらに設定するんすか?」
「制服?」
「もちろんす」
「制服は狂犬団員はもちろん無料だ」
やったーーー!
わーいわーい!
服飾部の狂犬団員から歓声が上がる。
「ハチ、協賛会員(賛助会員)は狂犬団の活動に参加してくれた割合で値段を決めてくれ」
「どうやるんすか?」
「活動に参加してくれた回数を決めてその回数でな」
そう。協賛会員は狂犬団の活動に参加してくれた回数で値引するシステムにすればいいんだよ。
「じゃあ参加もしないだいたい300人いる学園生は定価販売すればいいんすね?」
「そうだよ」
制服がほしいって人にはもちろん着てもらうことは問題ないからね。
制服は服飾部のジュンジュン先輩たちがデザインしたブレザー仕様のものなんだ。
紺色のブレザーに金ボタン仕様。本当は海軍さんみたいに白色にしたかったんだけどね。俺たち学生、特に男子学生はすぐに汚すだろうからね。だから紺色。
銀色のボタンはもちろん銀じゃないよ。銀色を吹きつけたものだからね。
サイズはS、M、L、2L、3L、4L、5L、6Lの8種。さすがにこれだけサイズを用意したから誰でも着られるはずだよ。
そうそうブレザーの胸元にはエンブレムがあるよ。帝国学園の校旗を絵画部のデザインチームに依頼して
寸法を整えてくれたんだ。
「これはいいね」
「「「ああ。いいな」」」
「「「素晴らしい!」」」
もちろんノーツ学園長以下学園の先生方には正式採用をする前に、改めて何度か見てもらってるよ。
全校集会。
お披露目会もやったんだ。モデルは演劇部の男女。司会は芸術部。これもすべて学園生たちで作ったものだよ。たった数分のステージのために何日も前から練習してくれてたんだ。
ワーワーワーワー
わーわーわーわー
ワーワーわーわー
すごーーーいっ!
早くほしーーい!
「制服はもちろん、狂犬団に加盟するのと同じだ。
着るのも着ないのも自由だからな。詳しくはクラス内の団員から聞いてくれよ」
制服はクオリティの高さと比較的安価な値段は言うまでもないんだ。だって生地自体はヴィヨルド領から送ってもらってるからね。
学園生3,000人ほど。制服を着る生徒はほぼすべてになったよ。
ブレザーにあわせて。男子はパンツ(スラックス)、女子はパンツ又はスカートも用意したんだ。
これもあっという間にほとんどの生徒が着用するようになったよ。
「よかったー。制服はさ、楽でいいよな」
「団長、制服でもおしゃれしなきゃダメですよ!」
「なんだよおギン。俺はおしゃれはいいんだよ。できれば寝るときからこのままでいいくらいだよ」
「団長‥‥」
帝都学園の制服はカッコいいと未成年者の間で評判になったんだ。制服を着たいから学園に入りたいって子どもも増えたんだ。
学園生にとっても自分の学園への愛着も増すし、誇りにもなったんだよね。
「お兄ちゃん、私の制服にはあいろんかけてくれるのに自分のはクタクタだよ!」
「あー俺はいいんだよ」
「ダメよお兄ちゃん!自分の制服もアイロンかけなきゃ」
「えーめんどくさいなぁー」
「お兄ちゃんってなんでもできるのに、歌と服だけは最悪だよね。ゴブリンみたい」
「ゴブリン言うなゴブリン!」
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