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第2章 幼年編
505 恐怖の未成年者
しおりを挟む註) 本編後半、スプラッターな描写となります
危ない人たちと闘る前に。試したいことのおおよそのイメージができたんだ。ここんとこずっと青雲館に行く前に、コウメがいる保健室に行って回復魔法を見学しては手ほどきを受けてるから。
おかげで簡単なヒールはできるようになった。
あとは部位欠損までできたら次の学園ダンジョンにかなりのアドバンテージになるはずなんだ。
「団長あとは実践あるのみですよ」
「ありがとうなコウメ」
コウメの頭を弟や妹を撫でるようにわしゃわしゃとする。
「や、やめてぇぇ団長おぉぉ、もうっフフフ。でも団長のお役に立てたら僕うれしいです」
ちょっぴり上目遣いに俺を見るコウメ。これが女子だったら鼻血
噴射だけどな。俺はBLじゃないからなんとも思わないけど、あの子狸はコウメの笑顔にヤられてるんだろうな。
▼
「ここですアレクさん」
「ありがとうございます草さん」
「いえ」
ガバスの草が案内してくれたのは俺たちの青雲館からも徒歩圏内にある林に囲まれた野球場のダイアモンドくらいの空き地だった。
「団長ここなら誰にも見られませんねヒッヒッヒッヒッ」
あ~子狸の皮算用センサーが作動してるよ。
「ドンは子狸をちゃんと守っててくれよ」
「はい団長。殺されない程度には守ります」
「ドン先輩!それは酷いっす」
「うるさい子狸め!」
「かわいい僕がいじめられてるよー!」
「ドン、かわいくない子狸なんか放っといていいぞ」
「そうですね団長」
「あわわわっ。ドン先輩冗談っす!」
慌ててドンの影に隠れるハチだった。
「じゃあ俺も若と子狸さんのそばにいますぜ」
「草さん、頼みます」
「はい、アレクさん」
「待ってたぞアレク」
離れた先からコジローさんたちが現れた。
「コジローさん!」
「ん?アレク、やっぱお前ちょっと背が伸びたな」
「はい!今毎月1セルテ伸びてます。ようやく伸び出しましたよ。」
「これで背も俺やレベちゃんみたくなったら、いよいよ強くなるぞ!」
「そんなことよりコジローさん‥‥お、俺はナ、ナジ‥」
「聞いてるよアレク。気にすんな、お前のせいじゃない」
「でも俺は‥‥」
俺はコジローさんの大事な弟を殺めたんだ。それは事実だ……。
「アレクよ、それはあとからちゃんと聞くから今は気にすんな。弟の最後の言葉はあるか?」
「はい‥‥預かってます‥‥」
「よし、じゃあやることやって話を聞くからな。早く終わらせようぜ」
「はいコジローさん」
コジローさんの横には高齢の男性がいたんだ。その爺さんは眼力がすごかった。未だ現役のカタギじゃない人の雰囲気がありありだよ。この人たぶん悪者の親玉だな。
コジローさんとボスっぽい男の後ろにも多くの、いかにもカタギじゃない人たちもぞろぞろいたよ。
「もういいのかよコジローの兄貴?」
そして林の中から現れたのは人族の若い男たちだった。
先頭に立つ人族の若い男とその後ろに従う10人の男たち。
「アレク!」
「ああシルフィ。囲まれてるよな」
ドーナツの輪のように囲まれた林の隙間から様子を伺う男たちもいる。その手には弓矢が見えた。
「でもアレクには‥‥」
「うん。ぜんぜん俺らの敵じゃない」
「さあてギッタンギタンにするわよー!」
シュッシュッとシャドーボクシングをしながらシルフィが高らかに吠えた。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ‥
枯れ葉を踏み締めながら、ゆっくりと近づいてくる男たち。
先頭の男は金髪モヒカンの長身痩躯。コッケーの雄のように不思議に髪を立たせている。顔から下は見えないけど、全身に至るまで幾何学模様的な刺青が施されているみたい。
うん、まるでセンスがないよな。
そんな男が肩で長刀を担ぎながらゆっくりと近づいてきた。その距離7メルほど。
「テメーか?コジローの兄貴が言う学園のガキってのは?」
「ああ学園のガキだよ。変な模様のお絵描きおっさん」
「変な模様だと!」
「うん。俺の描く絵より酷いな。それゴブリンに描いてもらったの?」
「「「プッ‥‥ワハハハハ」」」
ドン、ハチ、草さんに続きコジローさんまで笑いだした。
「テメー!俺様は泣く子も黙るゼンジー一家若頭のキュウ様よ!
コジローさんの面子にかけて腕の1本くらいで勘弁してやろうかと思ったが‥‥どうやら死にてぇらしいな」
そう余裕ありありに言いながらも眼だけは油断なく俺を見つめる刺青モヒカン男のキュウ。
仲間と周りに潜んでる弓遣いたちもジリジリとその距離を縮めてくる。ああコイツら確かに闘り慣れてるな。
「あーもううるさい
絵描きだな。弱い奴ほど吠えるって学園で習っただろ?ああ、弱っちいから学園には入れねぇか」
「な、なんだとガキー!」
「(若頭、いつでもいいですぜ)」
準備が整ったのか、後ろの配下が声をかけている。
コクン
「学園のガキ。教会と組んで貧民街のガキども集めてなんかやるらしいな」
「ああ字を教えんだよ。お前もゴブリンの絵は描けても字は書けないだろ?
特別に入れてやろうか?」
「「「プッ‥‥ワハハハハ」」」
「チッ、このガキ!いちいち腹立つ奴だ」
「御託はいいから早くかかってこいよ。
まあコジローさんの手前、殺さないよ。それだけは感謝しろよ」
「ったく!口の減らないガキだぜ。
とりあえずお前を反省させといてから‥‥ああバァムの館跡の建屋にいる学園生の女の中から何人か。
そうそう栗色の髪に青い瞳のべっぴんな小娘もいたな。お前の手足をもいだあと、オメーを特等席に据えてその小娘を‥」
ダンッッ!
ザンッッ!
「えっ?」
ブッシュュュューーーーーッッッ!!
「えっ?お、俺の脚?」
「お、お、お、俺の脚があああぁぁぁぁぁっっっ!」
「土遁、3階建の屋上!」
ズズズーーーーーッッ!
「「「うわああぁぁぁ!」」」
「「「えっ?!なんだこれ?!」」」
「「「高い?!」」」
「「「なんで俺たち浮いてる?!」」」
「「「あわわわわわっっっ!」」」
「からの落下!」
パッッ!
「「「うわあああぁぁぁぁぁっっ!」」」
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
ドスンッ!
「林の中のテメーらも覚悟しろよな」
ダンッッ!
ザンッッ!
「うっっ!」
ザンッッ!
「アァーーッッ!」
ザンッッ!
「ギャアァッッ!」
ザンッッ!
「ゴフッッ!」
落下した10人。まあ骨折はしただろうけど当然死にはしないよ。
林の中に隠れてた奴らもみんな刀の背で撫でただけだし。
でも、若頭の奴には代表して恐怖を味わってもらう。
なにせかわいいアリサに危害を加えるなんて言う奴だからな。
「テメーら、俺のかわいい妹に何するって?」
「痛え痛え痛ええぇぇぇぇぇーーーっ!」
「ん?お絵描き、脚ないの?そりゃテメーは脚あると歩いて妹のとこ行って危害を与えるからな」
「脚があああぁぁぁーーっっ!」
「後ろのテメーらはどうよ?いきなり3階の屋上から落ちたら受け身もとれねぇだろ」
「「「アアァァァァァァッッッ!」」」
ダッッ!
それでも落下した10人から約2名が逃走した。
「逃がすわけねぇだろ!」
「エアカッター!」
ヒュッッッ!
逃げる男たちの背に服を破いて大きな切傷が生まれる。
「「ギャャャァァァーーッッッ!」」
「誰が逃げていいと言ったよ。お前ら全員、次勝手に動いたら連帯責任だ。容赦しねぇぞ」
完全にブラフだけど、悪党のみんながそのばで固まった。
「隠れて矢を放つ奴らもどうよ。まだやれるか?卑怯もんが!」
「「「‥‥」」」
「さてと‥‥お絵描き。もう1回聞くわ」
「お前俺の妹に何するんだって?」
「アアァァァァァァーーッッ!」
「‥‥」
「聞けよガキの話でも」
ドンッッ!
「がはっっ!」
足蹴にして転がす。
「ああ刀持つらこの手がいけないんだな」
ザンッッ!
「ヒッッ?!」
「う、う、腕がああぁぁぁぁぁっっ!」
「だから聞けよ。妹をどうするって?」
「も、も、も、もう許してくださいっっ!許して許して許してくださいっっ!」
ガタガタと震える若頭のキュウ。
「あ~?」
「お、お、俺らが悪かったです。だ、だからもう‥‥」
「ああ、そういやお前、手がもう1本あるもんな。これも要らねぇか」
「や、や、やめ、やめ、やめ、やめてください」
「だってお前、今までやめてって言った人の言うこと聞いた?聞いてないよな。だったら自分もそうなるじゃん」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい‥‥」
「俺はやるって言ったらやるんだよ。
手はな、ゆっくーり離れるとな、けっこう痛いらしいんだぜ。
まあ見てろよ」
グッッッッ‥‥
「痛痛痛痛痛痛痛痛!」
ググッッッッ‥‥
「痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛!」
ググググッッッ‥‥
「痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛!」
グググググググ
ッッッ‥‥
「痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛!」
ザクッッッッ!
「ギャアアアァァァァーーーッッ!」
「もう1回聞くぞ?俺の妹をどうするって?」
「アウアウアウアウッッッ‥‥」
「あ~あ、白眼剥いちゃって。
もうお前ら悪者って最後はいっつも漏らして気絶すんだもんな。つまんねぇの」
「お前ら、俺ならまだこの程度で許すがアリサへの暴言は‥‥絶対許さねぇぞ?」
「(ドン先輩‥‥僕もうアリサ先輩をそういう目で見るのやめるっす‥‥)」
「(ハチ‥‥学習できてよかったな)」
「(ハイっす)」
「さてとコイツ起こして今度は首を切っとこうかな。
あれれ?こいつ髪白かったっけか?金髪じゃなかったかな?
うーんなんか調子狂うよな。
で‥‥
コジローさんの後ろにいるおっさんたち。文句ある奴いる?
ほら。遠慮なくかかってこいよ」
「「「‥‥」」」
「ほらほら」
「「「‥‥」」」
「何だよ?根性なしばっかだな。ああ、ここのボスがいるはずだよな。そいつと遊ぶかな。なぁコジローさんの横にいる爺さん、ここのボス知らね?」
たぶんここらが落とし所かな。
「フッ。まぁそろそろいいんじゃないかアレク」
「まあコジローさんが言うなら。
コジローさん、俺トマスとイシルの兄弟にもっとちゃんとした拷問のやり方教わらなきゃいけないよね。アイツら2人に比べりゃ俺の拷問なんてまだ赤ちゃんレベルだもんな」
「まああの2人は海洋諸国でも有数の拷問名人だからな」
「うん、俺夏休みにでもやり方聞きに行こうかな」
「いやアレク。あの2人には教わらないほうがいいぞ」
「なんで?」
「そこのキュウが『頼むからもう殺してくれ、楽にしてくれ』って言うからな。そりゃいくら悪党でもかわいそうだろうが」
「クックックッそうだね。じゃあコジローさんちょっと待ってて。コイツ治すから」
「治す?」
「うん。そのつもりで斬ったよ」
そう言った俺は離れた脚と手を拾って白眼を剥いて気絶しているキュウの横に車座になった。
(えーっと斬ったばっかりだから新鮮だもんね)
(まずは脚から両方の切断面の汚れをきれいに洗い流してと‥‥)
(次に2つをくっ付けるイメージを明確にする。
磁石と磁石が引っ付くように皮膚、骨、血管、神経‥‥細い管からトンネルが開通イメージ‥‥)
(最後にもう1度回復を強くイメージして‥‥)
「キュア!」
パアアアアァァァンッッッ!
接合部に淡い光が浮かぶ。
「ヨシ!」
(同じことを両手でもやってと‥‥)
「キュア!」
パアアアアァァァンッッッ!
「キュア!」
パアアアアァァァンッッッ!
念のために‥‥
「ハチ」
「へい団長。ガッテンだ!」
阿吽の呼吸でハチがキュウの口にハイポーションを流し込む。
あ~良かった。ハチが口移ししだしたらもうレベちゃん路線確定かと思ったよ!
パアアァァンッ!
ん?身体がごく薄く光ったな。
てことは‥‥まだまだ俺の回復魔法では完全に部位欠損は繋がってなかったんだな。
これはまだまだ練習しなきゃな。
「アレクお前‥‥回復魔法までいけるようになったのか?!」
「まだ練習中だよ。だから今もハイポーション飲ませたら身体が光ったからまだまだだね」
「ハイポーションは高いだろうに。お前って奴は‥‥ワハハハハ。これ帰ってみんなに話すからな。みんな大笑いするぞ!」
「コジロー‥‥」
「おやっさん」
何かを言おうとするコジローさんを手で制しながら悪党の親玉が口を開こうとしたんだ。
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