アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

502 青雲館

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 「アレク先輩‥‥やっぱりエルフよりもすごいんですね。
 でも‥‥なんでハチはいつも僕の横にいるの?」

 「団長がいいって言ったっす」

 「言ってねぇよ!」

 すっかり幹部連の一員となったコウメが俺を絶賛している。なぜかBL承認をされたと思い込んでいるハチも常にコウメの隣にいる……。

 「お兄ちゃんついにできたね!」

 すっかり幹部連となったアリサも大喜びだ。そういやハチもコウメが幹部連になる前はアリサの横にいつもいたよな。

 「完成ねアレク君!」

 サラさんも喜んでいる。アリサが来る前はサラさんの横にハチがいた。さらにその前はおギンだ。
 欲望に忠実なハチはある意味俺よりもすごいのかもしれない。おれはまだBLもふくめて女子と2人っきりでまともに話すことも無理だもん。


 「「「団長お疲れーっす」」」

 「「「できたぞー!」」」

 「「「俺たち(私たち)の城(アジト)が!」」」

 「「「やったやったーー!!」」」

 「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 狂犬団のみんなも大喜びだ。でも一部海洋諸国民がアジトなんて不穏な言葉を発している。


 本部棟に続き、子どもたちの宿舎となる男子寮棟と女子寮棟も発現してついに全体の建屋が完成したんだ。

 真ん中の本部棟を中心に据えたシンメトリー(左右対称)。
 当初の予定収容人数は男女各80人くらい。大きく発現したからゆくゆくは男女合計で最大250人くらいまではなんとかなると思うよ。

 3階建の男女寮。2段ベッドの4人部屋を中心にしたんだ。4人が各学年の区別なく集団生活をして、お互い切磋琢磨してもらいたいからね。

 男子寮の3階はその大半を2人部屋にした。キース君たち成人団員の2人部屋にしたんだ。
 成人団員にはふだんから何気に子どもたちを見守っていてほしいなって思ってたらキース君たちが寮監みたいなこともやってくれるんだって。これでますます安心だよ。

 でもいずれはキース君たち成人団員が退寮したら年長者が2人部屋に移ればいいかな。
 
 大浴場も作ったよ。男子寮、女子寮のそれぞれに1度に30人くらいは余裕で入れるくらいの大浴場を。もちろん温泉の原泉掛け流しだから24時間入れるしね。

 3階建の屋上には土を入れたんだ。土地を無駄なく活用したいから屋上で菜園をする予定なんだ。冬期以外、野菜は自家栽培で自家消費したいからね。



 各部屋のベッドや布団も入れた。会議室の机に椅子、サラさんの校長室(執務室)の机や椅子も。来客室の机や椅子もすべて新品のものを用意した。

 木の諸製品はヴァンさん(ドワーフのヴァンドルフ)のツテで木工の工房を営むドワーフに頼んだんだ。
 さすがにいい仕事をしてくれるから今後とも木工関係はこのドワーフさんにお願いするつもり。


 「「団長このベッドや椅子、俺ん家のより良いやつですよ」」

 「「「ホントだー」」」

 狂犬団のみんなも羨ましがる出来の良さなんだ。たしかに俺の部屋のより断然良いな。
 そしたら、おギンがぼそっと言ったんだ。

 「私1度泊まってみたかったな」

 「僕もっす」

 「お兄ちゃん私も泊まりたかった」

 「「「おー俺も(私も)泊まりたかったな」」」



 「それいいな。それじゃあまず幹部連中全員が第1陣で泊まろうか。その後の第2陣は幹部連が世話係になって狂犬団員の中から抽選で男女50人ずつ泊まるのはどう?
 先生も助手さんも俺たちも模擬授業ができるし宿舎での生活指導とかもできるし」

 「「「まじっすか団長!?」」」

 「ああ。いいんじゃね?」

 「「「賛成!」」」

 「「「やったー!」」」

 「「「私お母さんに外泊許可もらってくる!」」」

 「「「私も!」」」

 「「「俺も!」」」


 「サラさんこんな案が出てるけどどうかな?」

 「アレク君それすごくいいわね!やろう!」

 サラさんに話をしたら大賛成だったよ。
 子どもたちが入寮する前に模擬宿泊とか模擬授業とかをやれば、なにが足りないとかもわかるからね!
 






 幹部連の会議。ここでお試しお泊まり会のスケジュールも決まったよ。

 「じゃあ確認するぞ」

 ドンが話をまとめていく。

 「まずは幹部連が泊まってそこで問題点を洗い出して改良する。
 それが第1段だ。いいか?」

 「「「意義なし」」」

 「「「了解」」」

 「次に抽選で当たった狂犬団員50人に泊まってもらってアンケートをとって再度の改良する。これで2回の模擬お泊まり会をする。
 その結果を経ていよいよ本稼働だ。いいなみんな?」

 「「「意義なし」」」

 「「「了解」」」



 ▼



 「それじゃあ最後に団長から、学校と宿泊施設の名称を発表してもらう。団長」

 みんなから学校と建屋の名前を一任されてたんだ。
 そこでずーっと俺が考えていたのが青雲館という名前なんだ。青い空の雲のように自由な学校に自由な宿舎をイメージしたんだ。
 実は昔爺ちゃんがこの名前の剣道場を主宰してたんだ。

 「青雲館って付けたんだ」

 「「「青雲館?」」」

 「ああ青雲館なんだ」

 「雨が降ったり嵐が来ても空は必ず青空に戻るだろ。だから何があっても青い空の雲みたいに、いつも晴れ渡った気持ちの学校でありたいって思ってつけたんだ。だから青雲館。みんなどうかな?」


 幹部連に問いかけたんだ。俺‥‥ネーミングセンスないからやっぱ却下されるかな。しかも漢字の音訓読みは理解されないだろうし。















 「青雲館(せいうんかん)。俺は団長が付けた名前に賛成だ」

 ドンが立ち上がって手を上げた。

 「俺もドン兄ちゃんと同じ。団長がつけた青雲館がいいと思う」

 トンも立ち上がって手を上げた。

 「僕も賛成っす!」

 「私もいいと思います!」

 「お兄ちゃん青雲館、とってもいいね!」

 「「賛成!」」

 「「「決まりだ!」」」

 「「「青雲館だ!」」」

 良かったー!幹部連全員が立ち上がって手を上げてくれた。あ~ホッとしたよ!

 「じゃあ門扉と本館前に俺が『青雲館』って名札を書‥」

 「ダメよ!」

 皆まで言う間もなくおギンに制された。
 
 「はぁ?」

 「絶対ダメ!」

 メルル先輩も続いた。

 「なんでだよ?」

 「「「却下!」」」

 あっという間に全員から反対されたんだ。

 「えっ?!」

 「「「ありえない!」」」

 「そんな‥‥」

 「「「絶対ダメ!」」」

 「なんでだよ!?」

 ついにはアリサにまで断固反対されたんだ。

 「お兄ちゃんが書いたらゴブリン屋敷になるから絶対ダメよ!」

 「クッ‥‥」

















 ワハハハハハ
 あははははは
 フフフフフフ
 わははははは

 「ひどいよアリサ。ひどいよりお前ら‥‥」



 ▼


 
 学園内の購買横の掲示板に群がる学園生たち。

 「やったー!」

 「当たったー!」

 「「俺も俺も(私も私よ)!」」

 「「「羨ましい‥‥」」」

 青雲館の模擬宿泊。結局幹部連の宿泊のあと2回の模擬宿泊をすることにしたんだ。
 抽選で受かった男子100人女子100人は大喜びだった。

 「さあ忙しくなるぞ」

 「「「おおー!」」」



ーーーーーーーーーーー



 「だめだな‥‥」

 「ええぜんぜんダメね‥‥」

 
 項垂れる俺たち幹部連。

 「おギン、アンケートの結果は?」

 「最高・けっこう良い・ふつう・イマイチ・ダメの5段階評価の結果を言うわね」

 男女合計100人にアンケートをとったんだ。その結果‥‥

 「朝ごはん、夜ご飯、お風呂は100人全員が最高を付けたわ。宿泊施設もほぼ全員が最高の評価よ。でもね‥‥」

 そこから先はサラさんを含む俺たち幹部連の全員がわかっていたんだ。
 おギンが続けて言った言葉。そこにすべてが集約されていたんだ。


 「模擬授業のアンケート。ダメっていう評価はなかったわ。ほとんどがふつうかイマイチね……。
 それでも‥‥中でも10人くらいの子が書いてくれた言葉がすべてを表してるんじゃないかしら」

 「なんて書いてあったおギン?」

 「どうしたいのか、よくわからないって」















 「そうだよな。最初字が書けない子もいずれは書けるようになって先に進みたい子もいるだろうし、いつまで経っても書けない子もいるだろうしな」

 「あー、お兄ちゃんみたいな子ね」

 「「「そうそう。団長みたいな子‥‥」」」

 なんでそこで俺が出てくるんだよ!

 「まだまだ教える側に問題があるってことよね?」

 「メルル先輩の言うとおりよ」

 「僕よくわかんないんだけどどう言う意味なのおギン先輩?」

 「あのね、同じ教室の中にもできる子もできない子もいるわけ。そんなできる子は先に進みたいでしょ」

 「うん」

 「でもそうしたらできない子は面白くないわよね?」

 「うん。たしかにそうかも‥‥」

 「逆にできない子にかかりっきりになったらできる子は面白くないわ」

 「それとね、教える側もサラ先生や元シスターは別として、助手さんも補助に入る私たちもまだまだ素人なのよ。
 だから子どもたちを見てるようでよく見れてないんだよね」

 「「「たしかに‥‥」」」

 「おギンの言うとおりだ。俺たちの目標が明確に感じられないから『よくわからない』ってアンケートになったんだよな。

 居場所がない子どもたちが青雲館に来て、さらに居場所が見つからなかったらダメだろ」

 「「「‥‥」」」

 「いいかしら?」

 するとここまでずっと黙っていたサラさんが言ったんだ。

 「とにかくまだまだ準備不足ね。とてもじゃないけど今の私たちじゃ回らないわ。
 だから、開始時期はまだ2ヶ月は遅らせて9月からでどう?それと当初は男女10人くらいでいきましょう」

 「そうだね。だんだんと慣れて受け入れられるようになったら増やしていこうよ」

 「「そうだね‥‥」」


 「あとアンケートでこんなのもあったわ」

 「夜間に個人練習をしたいとき。本館の地下に行かずにできないかって?」

 「それは考えてなかったよ。じゃあ男子寮と女子寮の地下に練習場を作ろうか」

 「「「賛成」」」

 「大人を含めた家族の避難民が現れたら短期間だけでも宿泊させてあげられないかって?」

 「じゃあ予備用に家族用の部屋があってもいいな」

 「「「賛成」」」

 「夜1人で集中して勉強したいときや食後に話をしたいときは?」

 「学習室と談話室も作るか」

 「「「賛成」」」



 改良点もどんどんでて、白熱した会議になったんだ。
 反省点も多かったけど結果としてみんなが思ったんだ。

 模擬宿泊会をやってよかったねって。




―――――――――――――――


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