アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

501 人は変わる?

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 「では今度はさっきとは逆順でお答えください。
 ペギーさん。あなたはどの子を助けますか?」

 「そんなの簡単よ。
 ①の子どもは獣人の子どもでしょ。②と③の子どもは人族よね。だから当然答えは②と③のどちらかよね」

 「なぜ①を除外されましたか?」

 「だって獣人よ。そんなの決まってるじゃない。中原中の人族の決まりごとよ」

 「‥‥そうですか。では続きをお願いします」

 「②の子どもには仲間がいるから問題ないわ。残ったのは③。助けないと死ぬでしょ。それと貧民街とはいえ家族がいるなら助けても死んでも後でお金を貰えばいいだけの話でしょ。だから助けるのは③の子どもよ」

 「はい。ありがとうございました」



 「元学園生シャルルさんはどの子どもを助けますか?」

 「そうねー、人族も獣人族も生命に優劣がないとすれば①②③のどれもが正解よ。でも問題はどの子どもを助けるかでしょ。そうしたら生命の優先順位で③①②の順になるわね。だから私の答えは③よ。こんなの簡単ね」

 「はい。ありがとうございました」



 「最後にメアリさんお願いします」

 「先ほどのお嬢さんの考え方は素晴らしいと思うわ。生命に優劣はない。そのとおりよ。

 生命を助ける。
 だから私の答えは①②③のすべてね。それ以上もそれ以下もないわ」


 メアリさんの堂々とした話っぷりに目を見開いて驚くシャルルさん。そして顔を紅くして下を向いた。ああ、こんな考え方の人がいたんだ。私は間違えていたって思っただろうね。
 でもこれは正しい考え方であり、サラさんも俺も含めて思う人として正しく生きていくための真理だよ。生命に優劣はないし、よほどの事情がない限りすべての人を助けるべきなんだよ。



 「これで面接は終わります。
 合否は後日お伝えします。ありがとうございました」







 「「サラさん(サラ先生)‥‥」」

 「ええ。確定は1人だけね」

 「うん。俺もそう思った。メアリさんには早速今日か明日からでも宿舎に入ってもらったらどうかな」

 「そうね」

 「じゃあ今日の面接は1人合格っていうことで」

 「待ってアレク君。私‥‥シャルルさんもいいんじゃないかって思うのよね」

 「えっ?!どうして?」

 「基本的な考え方は間違ってないのよ。ただ彼女は‥‥これまでの生き方がそのまま考えにも表れてるわね」

 「軽い‥‥」

 「ええ。アレク君の言うとおりよ。だけど彼女はまだまだ若いわ。やり直す機会、人生を見つめ直す機会を彼女にも与えるべきだわ」

 「そうだね。それでダメならそれまでのことだし」

 「ええ」

 「メルル先輩もいい?」

 「ええ私も賛成するわ。
 サラ先生は当然だけど‥‥アレク君もいろんな経験をしてきたのよね?」

 「あはは。俺はただの農民の子どもだよ」

 「フフフ」

 サラさんが笑った。

 「サラ先生、人は‥‥変わりますか?」

 「メルルさん。あなたはどう思う?」

 「私は変わりました。でも‥‥シャルル先輩は無理だと思います‥‥」

 「なぜ?」

 「彼女には真面目さが欠けています‥‥」

 「メルルさん。自分は変わったけどシャルルさんは変わらないと思うのよね」

 「はい。私はそう思います」

 「メルルさん。それは‥‥‥‥あなたの思い上がりね」

 「えっ?!」

 見る間にメルル先輩の顔が紅くなった。

 「そ、そんな私思い上がりなんてしてません!」

 「そうね。まだわずかな期間しかメルルさんを知らないけど、メルルさん、あなたが真面目なことも真摯に努力していることも私は充分に認めているわ」

 「ありがとうございます‥‥」

 「でもねメルルさん。よく覚えておきなさい。自分の尺度だけで相手をみることは思い上がりにつながるわ。それはダメよ。思い上がりに気づかないことは自分自身の成長を止めることになるわ。もちろん私自身もだけどね」

 「はい。サラ先生」






 「こんにちはー」

 「「こんにちはアリサちゃん」」

 最近狂犬団の本部に顔を出すようになったアリサ。アリサはサラさんのそばで何かと手伝いをしてくれる。
 そんなこともあって、必然メルル先輩にもよく懐くようになったんだ。

 メルル先輩の話はアリサにとってとっても勉強になってるみたいだ。




 今回の入社試験?の面接で思ったんだ。この世界って面接の前に持参する履歴書が無いんだよね。
 だから生まれてから死ぬまでにその人が何をやったのか聞かないとわからない。

 「サラさん、これからは面接を受ける人に履歴書を作ってもらおうよ」


 それは学園生もそうなんだ。筆記試験や実技試験はある。でも試験を受けるときに携帯すべき履歴書がないんだ。それは大人も子どもそうなんだ。

 でも中原の中で誰もが「なにか」をして生きてきているはずだよね。だったらそれを人に言えるように、俺はこんなことをやってきたんだって胸張っていえるように履歴書に書きたいよね。
 俺自身もそうありたいって思ったんだ。


 「ドン、今月中に学園生全員に履歴書を書いてもらうぞ。おギン、履歴書の見本を作っておいてくれよ」

 「「はい団長」」


 狂犬団員と帝都学園の生徒、そして新しく始める学校の子どもたちがこれからは履歴書を書くことができるようにしたいな。
 誰もがに履歴書に書くことができるようなことがいっぱいあるように、充実した行動をとれるようにしたいな。



 字を書く書き取り練習のノートや教科書はおギンを中心に製作中だ。

 子どもたちの教科書作りと並行して実技もイラストを含めて理解できるようなガイド本も作り始めたんだ。


 「アレク、あんた相変わらず言うばっかよね」

 「あはははは‥‥」


 


 面接試験の結果、校長のサラさんの下にメアリさんともう1人元シスターを採用して合計2人を専任してもらうことになった。学園生以外にも若手の助手は2人だ。いよいよ本格的になってきた。


 「シルフィ。人は変われるよね?」

 「それはあんたが1番わかってるでしょ」

 「うん!」



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