500 / 722
第2章 幼年編
501 人は変わる?
しおりを挟む「では今度はさっきとは逆順でお答えください。
ペギーさん。あなたはどの子を助けますか?」
「そんなの簡単よ。
①の子どもは獣人の子どもでしょ。②と③の子どもは人族よね。だから当然答えは②と③のどちらかよね」
「なぜ①を除外されましたか?」
「だって獣人よ。そんなの決まってるじゃない。中原中の人族の決まりごとよ」
「‥‥そうですか。では続きをお願いします」
「②の子どもには仲間がいるから問題ないわ。残ったのは③。助けないと死ぬでしょ。それと貧民街とはいえ家族がいるなら助けても死んでも後でお金を貰えばいいだけの話でしょ。だから助けるのは③の子どもよ」
「はい。ありがとうございました」
「元学園生シャルルさんはどの子どもを助けますか?」
「そうねー、人族も獣人族も生命に優劣がないとすれば①②③のどれもが正解よ。でも問題はどの子どもを助けるかでしょ。そうしたら生命の優先順位で③①②の順になるわね。だから私の答えは③よ。こんなの簡単ね」
「はい。ありがとうございました」
「最後にメアリさんお願いします」
「先ほどのお嬢さんの考え方は素晴らしいと思うわ。生命に優劣はない。そのとおりよ。
生命を助ける。
だから私の答えは①②③のすべてね。それ以上もそれ以下もないわ」
メアリさんの堂々とした話っぷりに目を見開いて驚くシャルルさん。そして顔を紅くして下を向いた。ああ、こんな考え方の人がいたんだ。私は間違えていたって思っただろうね。
でもこれは正しい考え方であり、サラさんも俺も含めて思う人として正しく生きていくための真理だよ。生命に優劣はないし、よほどの事情がない限りすべての人を助けるべきなんだよ。
「これで面接は終わります。
合否は後日お伝えします。ありがとうございました」
▼
「「サラさん(サラ先生)‥‥」」
「ええ。確定は1人だけね」
「うん。俺もそう思った。メアリさんには早速今日か明日からでも宿舎に入ってもらったらどうかな」
「そうね」
「じゃあ今日の面接は1人合格っていうことで」
「待ってアレク君。私‥‥シャルルさんもいいんじゃないかって思うのよね」
「えっ?!どうして?」
「基本的な考え方は間違ってないのよ。ただ彼女は‥‥これまでの生き方がそのまま考えにも表れてるわね」
「軽い‥‥」
「ええ。アレク君の言うとおりよ。だけど彼女はまだまだ若いわ。やり直す機会、人生を見つめ直す機会を彼女にも与えるべきだわ」
「そうだね。それでダメならそれまでのことだし」
「ええ」
「メルル先輩もいい?」
「ええ私も賛成するわ。
サラ先生は当然だけど‥‥アレク君もいろんな経験をしてきたのよね?」
「あはは。俺はただの農民の子どもだよ」
「フフフ」
サラさんが笑った。
「サラ先生、人は‥‥変わりますか?」
「メルルさん。あなたはどう思う?」
「私は変わりました。でも‥‥シャルル先輩は無理だと思います‥‥」
「なぜ?」
「彼女には真面目さが欠けています‥‥」
「メルルさん。自分は変わったけどシャルルさんは変わらないと思うのよね」
「はい。私はそう思います」
「メルルさん。それは‥‥‥‥あなたの思い上がりね」
「えっ?!」
見る間にメルル先輩の顔が紅くなった。
「そ、そんな私思い上がりなんてしてません!」
「そうね。まだわずかな期間しかメルルさんを知らないけど、メルルさん、あなたが真面目なことも真摯に努力していることも私は充分に認めているわ」
「ありがとうございます‥‥」
「でもねメルルさん。よく覚えておきなさい。自分の尺度だけで相手をみることは思い上がりにつながるわ。それはダメよ。思い上がりに気づかないことは自分自身の成長を止めることになるわ。もちろん私自身もだけどね」
「はい。サラ先生」
▼
「こんにちはー」
「「こんにちはアリサちゃん」」
最近狂犬団の本部に顔を出すようになったアリサ。アリサはサラさんのそばで何かと手伝いをしてくれる。
そんなこともあって、必然メルル先輩にもよく懐くようになったんだ。
メルル先輩の話はアリサにとってとっても勉強になってるみたいだ。
今回の入社試験?の面接で思ったんだ。この世界って面接の前に持参する履歴書が無いんだよね。
だから生まれてから死ぬまでにその人が何をやったのか聞かないとわからない。
「サラさん、これからは面接を受ける人に履歴書を作ってもらおうよ」
それは学園生もそうなんだ。筆記試験や実技試験はある。でも試験を受けるときに携帯すべき履歴書がないんだ。それは大人も子どもそうなんだ。
でも中原の中で誰もが「なにか」をして生きてきているはずだよね。だったらそれを人に言えるように、俺はこんなことをやってきたんだって胸張っていえるように履歴書に書きたいよね。
俺自身もそうありたいって思ったんだ。
「ドン、今月中に学園生全員に履歴書を書いてもらうぞ。おギン、履歴書の見本を作っておいてくれよ」
「「はい団長」」
狂犬団員と帝都学園の生徒、そして新しく始める学校の子どもたちがこれからは履歴書を書くことができるようにしたいな。
誰もがに履歴書に書くことができるようなことがいっぱいあるように、充実した行動をとれるようにしたいな。
字を書く書き取り練習のノートや教科書はおギンを中心に製作中だ。
子どもたちの教科書作りと並行して実技もイラストを含めて理解できるようなガイド本も作り始めたんだ。
「アレク、あんた相変わらず言うばっかよね」
「あはははは‥‥」
面接試験の結果、校長のサラさんの下にメアリさんともう1人元シスターを採用して合計2人を専任してもらうことになった。学園生以外にも若手の助手は2人だ。いよいよ本格的になってきた。
「シルフィ。人は変われるよね?」
「それはあんたが1番わかってるでしょ」
「うん!」
――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる